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346)詰め寄るクマリ

 ロデリア王都上空に浮かぶ空中戦艦ラダ・マリーに飛び乗った特級冒険者クマリ。



 甲板で、量産型ドロイドや白き龍リベリオンとの大立ち回りの後、黒騎士によって艦内にクマリは招かれる。



 そして、奇怪なドロイドを操るAIオニルに促されて、無数のシリンダーが並ぶ自動生産プラントの奥に進むと……。




 一際巨大なシリンダーの前に立つ、黒騎士の姿を見つける。




 黒騎士の前には背景が透けるスクリーンが幾つも浮いて並び、彼は手元に浮かぶ半透明のキーボードに忙しく手を動かして操作していた。




 クマリは漸く会えた黒騎士に、皮肉を込めて声を掛ける。




 「……随分と忙しそうだね、黒騎士殿? 私と会う時間よりも、此処で引き篭もってる方が大事ってか?」


 「俺にはどうしても、やらなくてはならない事がある……」



 声を掛けたクマリが皮肉を言うと、黒騎士は振り返りもせず手元の作業に集中にしながら答える。



 適当な扱いを受けて苛立ったクマリは、黒騎士が何をしているか見ようと彼の背後に立った際……眼前の巨大なシリンダーの中身を見て驚いた。



 「!? こ、これは!? デカい龍なのか……!」



 彼女が驚いたのも無理はない。シリンダーの内部に入っていたのは……巨大な龍らしき生物の頭部だ。



 白き龍リベリオンと何処となく似てはいるが、半分開いた咢からは牙が生え揃い、顔つきも愛嬌のあるリベリオンとは違い、鋭利な角が幾重にも生え凶暴そうな顏だ。



 凶悪な龍の頭部は、巨大なシリンダー内部で薄水色の液体に満たされ浮かんでいる。



 龍の頭部には上下に太いチューブが刺さり、シリンダーの内部には複雑な形状のドロイドが何体も投入され、忙しそうに頭部に向け何やら作業していた。




 「龍を作っている……!?」


 「……これは、戦力増強の為の試作品だ。今夜中に頭部だけでも仕上げないと……」



 呟いたクマリに、黒騎士は答えつつも手を止めず、作業に没頭する。



 黒騎士は肝心な事を説明は何もする心算が無い様だ。そんな彼に、クマリは遂に我慢出来無くなり……。



 「おい!! いい加減にしなよ!! お前はレナン君なんだろう!? 何でこんな事をしてる!? 何が一体どうなったんだ!! 全部、全部説明しろ!!」


 「……白き勇者レナンは死亡した、と聞かされただろう?」


 「茶番は沢山だ! 君の正体はフワンから聞いたよ。成程……黒騎士の正体がレナン君なら、妹ちゃん達白騎士隊やお子様王子が従う筈だ……。ギナル皇国が数日の内に陥落したのも納得だよ。だが……何で死体まで作って、正体を隠す?」


 「……フワン殿にも困ったものだ。だが、真実は変わらない。ロデリア王都が崩壊した、あの日……。英雄マリアベルと共に……レナン フォン アルテリアと言う男は死んだ。それが事実だ」



 興奮して詰め寄るクマリに、黒騎士は仕方なく作業の手を止め、彼女の方を見て……あくまでレナンは死んだと言い張る。



 「どうして、そこまで……? そして、何で黒騎士を名乗る? この浮かぶ船や白い龍はどうやって? レナン君……君がそうなった理由を、教えてくれないか……?」


 「……話す必要は無い」


 「君が其処まで言うなら……私にも考えが有る。君の正体をロデリア王国中に言い広めてやるぞ? 黒騎士の中身は、死んだ筈の白き勇者様ってな! 無論、ティアにも……。

 君が自分の正体を隠す理由は……それが困るからだろう? さぁ、どうする! この私を殺して口封じでもするか!?」

 


 真実を話す気が全く無い黒騎士に、クマリは覚悟を決めて脅迫する。



 恐るべき力を持つ黒騎士レナンに脅しなど効かない事は分っていたが、敢えてティアの名を出して強く迫った。


 

 「……ふぅ……仕方、無いか……。“アーマー解除”」


 “ヴオン!”



 溜息を付いた黒騎士が呟くと……低い音と共に、真黒い粒子が彼の体を包み一瞬で漆黒の鎧が消え去った。



 そして、そこに居たのは、背が高く筋骨隆々とした黒いボディスーツを着たレナンだった。その姿を見たクマリは……。



 「……な、何だよ……やっぱりレナン君じゃないか……! ぐすっ、心配掛けさせやがって……!」


 「御心配をお掛けしました……。申し訳ありません」


 「……で、でも、その身体と声は? どう見ても、大人にしか見えないぞ?」



 凶悪な黒騎士から、本当の姿を見せたレナンに、クマリは思わず涙ぐみながら怒る。



 そんなクマリに、レナンは素直に侘びた。しかし、クマリは大人の肉体と声となったレナンの姿が気になり、彼に尋ねる。




 「……先程も言った通りです。マリアベルの死と共に……白き勇者等と持て囃されたレナン フォン アルテリアは死んだのです。ギナル皇国を支配していた、ゼぺド達白き偽神の来襲によって。

 ティアの師匠である貴女には、伏せて置きたかったのですが……此処まで来たら、真実を語りましょう。俺の正体と、これから迫る危機について……」





 真実を強く求めるクマリに対し、レナンは静かに語り出した。


 

 ロデリア王都が崩壊した日……黒き異形の船エゼケルに体当たりして、エリワ湖に沈んだレナンが知った真実を。



 彼は、クマリに……沈没したエゼケルの中で、出会ったAIのオニルから知識を得て……王都を崩壊させたゼペド達白き偽神の正体と、来襲の目的を語った。



 レナンは続いてAIオニルに指示して、クマリに映像を見せながら、世界の真実とレナン自身の出自に関して語り……ゼペド等が唯の先兵である事を伝え、この世界の危機が迫っている事を教える。



 侵攻して来る強大なベルゥ達、新生軍に備える為に統一した国々を拠点とする事や……ベルゥ達新生軍からの侵攻を個別撃破し戦力を削ぎつつ、力を蓄える事も説明する。



 それらの行動や王位継承者であるレナンの存在を、偽装情報や映像でベルゥ達に秘匿する事。



 そして、レナンはマリアベルの遺志を継ぎ、迫る世界の危機に対し……黒騎士として一人で戦う所存である事も伝えた。



 レナンは、以前アルフレド王子達に伝えた全ての情報を、クマリに包み隠さず教えた。




 彼から全ての情報を明かされたクマリはと言うと……。




 「……それで、マリちゃんの為に……黒騎士になって戦うって? 片方の月に住んでるって言う馬鹿強い偽神共に、たった一人で?」


 「そう……ベルゥ達、新生軍は強大……奴らとまともに戦えるのは俺だけです。マリアベルが愛したロデリアを奴らの好きにはさせない」



 全てを聞いたクマリは、心底呆れ果てた様子でレナンに問うと、彼は揺るがず言い切る。



 「しかも、自らを痛め付ける呪いの鎧を纏い……死体を作って、自分の存在を消してまで? ハッ! マジで馬鹿げている……!!」


 「……全ては必要な事……貴女に何と言われようと、止める気も変える気も無い」


 「そうじゃ無いだろう!! マリちゃんは! 君にそんな事! そんな苦しみを背負えとは言う訳無い!!」



 全く揺るがないレナンに、クマリは我慢出来なくなり叫ぶのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は6/1(水)投稿予定です。宜しくお願いします!

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