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342)夜空からの侵入

 深夜に黒騎士との面会に挑んだクマリは、素顔を見せる様に迫る。


 しかし、黒騎士は明確に拒否して、面会は一方的に終了した。



 貴賓室をAIのオニルから追い出されたクマリは、廊下を歩きながら呟く。



 「……レナン君の名を出したら……黒騎士は急に態度を変えた。やはり何か有る……」


 「その様子じゃ、やっぱり面会は失敗だった様ですね~」



 暗闇の廊下で呟いたクマリに、物陰からフワンが現れ声を掛ける。



 「……お前……わざわざ、待っていたのか?」


 「何となく、こうなるって思ってたんで~。だから言ったでしょ、ダメ元って。でも、黒ちゃんはやっぱり男の子だな~。先輩も、ジル姉と同じで男の子の気持ちを考えなきゃ~」


 「男の子……黒騎士が? フワン、お前……アイツの素顔を見たのか!?」

 

 「はい~ばっちりと~。皇女のジル姉も知ってますよ? だって黒ちゃん、自分の姿を見せる事で……ギナル皇国を混乱させたんだから~」


 「何だって!? 自分の姿を見せて皇国を混乱……どう言う事だ? そ、そうか! ギナル皇国は白き神に支配されていた! そこに別な神が現れたら……! な、成程……。

 それじゃ……黒騎士の正体はレナン君って事になる……! フワン、知ってたら最初から教えろよ!」


 「ご免なさい~。私もジル姉も黒ちゃん本人から、口止めされてるから言えなくて~」



 黒騎士の正体がレナンと分り驚きつつも、知っていたフワンに怒ると、彼女は軽々しい態度で謝った。



 「……何故、レナン君は正体を隠す? あんな精巧な死体まで用意し……皇女やお子様王子を巻き込んで、国を挙げて……。あの巨大な船や白い龍はどこから? そして、何でマリちゃんと同じ黒騎士をやってる?」


 「その辺りは、本人に直接聞いた方が良いでしょうね~。さぁ、先輩どうします? 黒ちゃんの正体は……先輩の予想通りだった。でも彼の真実と本心はひた隠されたまま……。それを知りたいと先輩は願うのですか?」


 「当たり前だ……。此処には居ない馬鹿弟子の為にも……真実を知る為に私は来た」



 ブツブツと呟き思索するクマリに、フワンは口調を変えて真剣に尋ねると……クマリは迷いなく答えた。



 「……だったら黒ちゃんの所に行かなくちゃ、ですね~。ちょっと危険ですが一案が有ります~。先輩、挑戦しますか?」


 「フワン……お前は得体が知れん奴だが、此処は乗っておく。黒騎士の元へ行く方法が有るなら教えろ」


 「フフフ……流石、大先輩です~。それじゃレッツゴ~!」

 


 問うたフワンに、クマリはきっぱりと答えると、彼女は満面の笑みを浮かべて掛け声を上げたのだった。

 



  ◇  ◇  ◇




 フワンから“空に浮かぶ白い船へと運ぶ者が居る”と言われ……その者に会う為、クマリはフワンに連れられて崩れた王城のテラスに来た。



 そこで立っていた者を一目見て、急に胡散臭くなったクマリはフワンを問い詰める。



 「……本当に、こんな策で上手く行くのか? そもそも、コイツが言う事を聞くとは……」


 「大丈夫です、先輩~。こうして、ちゃんとワイロを用意したんで~。意外に、この子らは話が分るんです~」


 「アギャ!」



 クマリの問いにフワンが軽く答えると……テラスに立っていた一体のリベリオンが愛想良く鳴いた。



 このリベリオンは王城警護の為にテラスに立っている様だ。



 此処に来る前、フワンは“ワイロが要るんで~”と言って厨房に立ち寄り、良く焼かれた肉の塊を入手した。



 テラスに立つリベリオンは、フワンが持って来た肉の塊が気になる様で、最初からガン見している。



 「ほれほれ~リべちゃん、この立派な焼肉が欲しいですか~」


 「ア、アギャ!」



 フワンが大きな焼肉を見せびらかしてリベリオンを煽ると、そのリベリオンは大きな犬の様に鳴いて肉を欲しがる。



 「欲しいなら、私と先輩を乗せて飛んで下さい~。夜空の空中散歩を楽しみたいんで~。あの白い船の近くまで飛んで下さいね~、じっくり見学したいから~」


 「アギャ!」



 肉をワイロにフワンが頼むと、リベリオンはあっさりと快諾した。



 「交渉成立~! どうぞ、差し上げます~。また、お願い聞いてくれたら持ってきますよ~」


 「……アギュ!」



 フワンは大きな肉を差し出しながら囁くと、リベリオンは肉を食べながら返事した。


 肉を喜びながら食べるリベリオンを見ながら、フワンはクマリに声を掛ける。



 「さぁ先輩、空の旅へ出発しますよ~! 準備は良いですか~?」


 「ちっ! 随分と適当な策だが……乗るしかないね!」



 どこまでも軽く言うフワンに、クマリは半ばヤケクソに答えるのだった。


 こうして、クマリはフワンと共にリベリオンの背に乗って……空中に浮かぶラダ・マリーの元へ向う事になった。




  ◇   ◇   ◇




 深夜の王城上空にて……クマリとフワンはリベリオンの背に乗って、空を飛ぶ。


 亜人として長く生きたクマリも、伝説の存在と言われた龍の背に乗って飛ぶ事など予想も付かず、感嘆して叫ぶ。



 「……ま、まさか……この私が、龍の背に乗って空を飛ぶとはな……!」


 「ですよね~。でも私はお蔭様で5回目です~。ギナル皇国に居た時、こうしてリベちゃんに頼んで載せて貰ったんで~。ねぇ~リベちゃん?」


 「アギャ!」



 クマリの叫びにフワンも同調して答える。彼女に呼び掛けられたリベリオンは二人を乗せながら、元気よく答えた。



 「……うん? フワン、お前を乗せた白き龍はギナル皇国に居るんだろ? 何で、コイツに声を掛けた?」


 「あ~、私も黒ちゃんから聞いた話なんですけど~、全部のリべちゃんやオニルちゃんと……黒ちゃんは心で繋がってるらしくて~。

 黒ちゃん曰く、リべちゃんは個々の個性を持ちながら全体の意識を共有してるとか、何とか~。だから、ギナル皇国に居るリべちゃんはロデリアのリベちゃんと通じ合ってるらしいです~。それと~黒ちゃんとリベちゃんは血の繋がった兄弟らしいですよ~」


 「アギャ!」



 疑問に感じたクマリはフワンに問うと……彼女は衝撃の事実を伝える。フワンの言葉が正しいとばかりに、空を飛ぶリベリオンも愛想良く鳴く。



 「心で繋がってる!? 血の繋がった兄弟!? どう言う事だ!?」


 「さぁ、黒ちゃんの話は難し過ぎて良く分んなくて~。後は本人に直接聞いて下さいよ~」



 フワンから衝撃の事実を伝えられたクマリは驚き大声で問うが、彼女は困った様に返した。

 


 「……お、おい!? この龍と、レナン君の心が繋がってるなら……私らがこうして、浮いてる船に向かってる事も……レナン君は把握してるんじゃないか?」


 「はい~それは、全部筒抜けです~。でも、全ては作戦通りです~」



 こちらの情報がレナンに把握されていると知ったクマリは、慌てるが……フワンは最初から分っていた様で軽く答えるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/18(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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