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339)クマリの疑問


 黒騎士レナンが、ギナル皇国を救った初陣より20日が経過した。



 今、そのレナンはロデリア王都に戻っていた。そしてレナンと皇女エリザベートもギナル皇国から王都に来ている。



 エリザベートの護衛として、元近衛騎士長ガストンやガリー、女性騎士ネビルと一級冒険者フワン、それに近衛騎士達が共に付いてきた。



 レナンと共にエリザベートがロデリア王都に来たのには沢山の理由が在る。



 まず一つは、ゼペド達白き偽神に破壊されたロデリア王都の慰問だ。



 そして、ギナル皇国とロデリア王国の不可侵条約の締結に、前皇帝のユリオネスが起こした侵略行為の謝罪と賠償……。



 皇女エリザベートが、このロデリア王都ですべき事は余りに多かった。



 しかし、エリザベート自身も長らく、ジルと言う別人に成りすましながら逃亡生活をしていた事より、皇女としての経験は皆無だった。



 しかも、ロデリアの国王カリウスは死亡しており、新しく国王の座に就いたのは……まだ12歳の少年アルフレド王子だ。



 そんな訳で、レナンはオニルと共にエリザベートとアルフレドの間を取り持ち、行動を共にしていた。


 そんなレナンの横には当然の如く、ソーニャがサポートとして張り付き彼を支えている。

 


 破壊された王都の様子を、映像では無く実際の目で見た、皇女エリザベートは……まだ若いアルフレド王子の手を取り、涙ながらに哀悼の意を表した。


 

 彼女等が居るのは、崩れた王城の広間だ。白き龍リベリオンによって崩壊した王都の復興は急ピッチで進んではいるが……王都民の住居修復を優先していた為、王城の修復は後回しとなっていた。




 「……黒騎士様より、伝えられておりましたが……まさか、此処までとは……。この度の事は誠にお悔やみ申し上げます。それと同時に、我が叔父ユリオネスが先導になって我が国が、このロデリアに侵した数多くの侵略行為……。これに関しても皇女として深くお詫びします」


 「あ、頭を上げて下さい……皇女殿下……。貴女の哀悼の意に感謝し、謝罪を受け入れます。聞けば、貴女の国も黒騎士殿の手により大鉈が振るわれ、他国を脅かし続けた旧体制は一掃されたとか……。自国が混乱の最中にも関わらず、我が国を慰問頂き深く感謝します」



 互いに涙を浮かべ、手を取り合って言葉を掛けあう皇女エリザベートとアルフレド王子。



 その姿は、長らく敵国として憎しみ合ったギナル皇国とロデリア王国の明るい未来を感じさせた。



 その様子を、この場に同席したギナル皇国のラザレ将軍達や、ロデリア王国の護衛騎士デューイやソーニャ達白騎士隊も涙ながらに喜び見つめていた。



 余りに多くの犠牲を出したロデリア王都の崩壊を経て……両国の戦いは終わったのだ。



 なお、王城の広間には、3体のオニルが居た。このオニルはレナンとエリザベート、そしてアルフレド王子をサポートする為に、各々の傍に控えている。


 それとエリザベートとソーニャの傍には、其々リベリオンが彼女達を守る為に立つ。


 女性型の姿とは言え、同じ顔のオニル3体と白き龍リベリオンが立つ様子は、異様な光景だったが……その場に居る者達は慣れていた為、誰も気に掛けなかった。



 ……唯一人を除いて。



 王城の広間に居た者達が、ロデリアとギナル皇国の長い争いが終わった事に、喜びを噛み締める中……彼女だけは、素直に喜ぶ事が出来なかった。それはクマリだった。



 「……チッ……」



 舌打ちをして、崩れた王城の広間を後にするクマリ。特級冒険者の彼女は護衛として、あの場に居たが……色々馬鹿らしくなって立ち去ったのだ。



 クマリは素顔を隠した仮面とローブを羽織っているが、明らかに苛立っている様だ。



 そんな彼女を追い掛けて、呼び止める者が居た。



 「はぁ、はぁ……! ま、待って下さい、クマリ!」

 

 「……誰かと思えば、妹ちゃんか。元気になって良かったね」



 クマリを追い掛けて来たのはソーニャだ。息を粗くしながら呼び止めた彼女にクマリは、淡々と答える。



 「あ、貴女にはアルフレド殿下の護衛をお願いしていた筈……! それなのに、一体何処に!?」


 「あー、色々と気持ち悪くてさ、怠いから抜ける」


 「……な、何故……?」



 問い詰めるソーニャに、クマリは面倒臭そうに答える。そんな彼女にソーニャは驚きながら聞き返した。



 「……分んねぇの? そんな“お友達”連れててさ?」


 「アギャ!」

 


 驚くソーニャに、クマリは……彼女の背後に立つ白き龍リベリオンを、指差しながら問う。



 クマリに指差されたのは、ソーニャを守る為に付いてきたリベリオンだ。リベリオンはクマリに指差されたので短く鳴いて答えた。



 「……この子は、私を守る為に……。そ、それよりもクマリ……貴女は王都復興の為、大変尽力して頂きました。それが一体どうして急に!?」


 「それはコッチが聞きたいよ、妹ちゃん? 妹ちゃんの傍に居る白い龍も、あの黒騎士が遣わしたんだろう?

 マリちゃんに次いで、レナン君まで死んじゃったのに……。何で、アンタは……あんな得体の知れない黒騎士に従ってんだ……?

 アンタだけじゃ無い。他の白騎士達も、お子様王子も……あの黒騎士の言い成りだ。マリちゃんとそっくりな鎧を纏う黒騎士……。マリちゃんでもレナン君でも無いのに、そんな恰好させて……アンタ達は良く我慢出来るよな? そんな訳が分らない奴を受け入れている、アンタ達が気持ち悪いよ」


 「!? そ、それは……」



 問われたクマリは怒りを込めてソーニャに詰め寄ったが……彼女は目を伏せて答えようとしない。


 クマリがソーニャに向け、怒るのは理由が在った。それは……白き勇者レナンの死だ。

 



 破壊された王都が……自動生産プラントや白き龍リベリオンにより復旧され、少し落ち着きを取り戻しつつ有る中で……アルフレド王子から、衝撃的な事実が公表された。



 アルフレドは、白き勇者レナンが王都を守る為に……異形の船エゼケルに体当たりした結果、死亡したと説明した。


 誰もが信じられ無い思いを抱く中、アレフレド王子はレナンの遺体を公開したのだ。


 その遺体は、紛れも無いレナン本人だった。それを見た王都民達は悲嘆に暮れ絶望する。



 レナンの死を知ったクマリは……深い悲しみに陥ったが、とある事情で次第に強烈な違和感を感じる様になった。



 それは黒騎士の存在だ。ギナル皇国を攻め落とした黒騎士の正体はレナンが怪しいと踏んでいたクマリ。そんな中、唐突に発表されたレナンの死。



 悲しみに暮れる王都民を余所に……レナンと特に親交が深かったソーニャ達白騎士隊は、悲しむ素振りは見せるものの、クマリからすれば随分と軽々しい態度だった。



 そんな中、ギナル皇国から戻り姿を見せた黒騎士に、アレフレド王子やソーニャ達白騎士隊は付き従っている。



 マリアベルの魂と、レナンの心臓を奪って力を得たと噂される黒騎士……。



 そんな黒騎士に従うソーニャ達。どう考えてもおかしい現状に、クマリは我慢出来なくなって王城の広間から立ち去ったのだ。

 



 「その白い龍を使役してる事から、只者じゃないだろうが……黒騎士はマリちゃんの魂と、レナン君の心臓を奪って力を得たって噂だ。そんな奴に、アンタ達が従ってんのか全く理解出来ないよ。……アンタ達は揃いも揃って何を隠してる?」


 「……な、何も隠してなど……」


 「フン、何も言えないって事だね。だったら……アンタ達とは付き合えない。私は抜けさせて貰う」


 「ま、待って! 待って下さい……!」



 問い詰めるクマリに、ソーニャは目を逸らして何も語ろうとしない。そんな彼女の態度に気分を害したクマリは決別を宣言した後、踵を返して立ち去ったのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/8(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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