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338)動乱の終結

 「な、何だ!? この……皇都の様は!? ま、魔境では無いか……!!」



 4時間の時間を掛け、ブラン辺境伯領から皇都カナートに宙づり飛行をさせられたストフスは……皇都カナートの様子を見て第一声に叫んだ。



 領主ストフスは何度も気を失って、意識を取り戻す事を繰り返しながら……皇都カナートに宙づり飛行をさせられた。



 皇都に到着したリベリオンは、飛行速度を落としてゆっくりと皇城に向け飛行する。



 ようやく着いた皇都カナートの様相を見てストフスは、先ず驚愕したのだった。



 ストフスが驚愕するのも無理はない。




 何故なら……皇都上空には、巨大な白い船ラダ・マリーが浮かび、皇城は中央に聳え立っていた塔が消滅し、代わりに真黒い卵状の自動生産プラントが設置させていた。



 その周りに、沢山の白き龍リベリオンが旋回しているのだ。



 領主ストフスは、皇帝ユリオネス統治時代に何度も皇都カナートを訪れている。


 今まで訪れた皇都は、皇城の上空に異形の船エゼケルが浮かぶ事は見られたが……此処までの異常な光景は目にした事は無かった。




 「い、一体……何が有ったのだ……。まさか、新たな神が……」




 すっかり変わってしまった皇都カナートを見て、ストフスは宙づりにされている事も忘れ、只々驚愕しながら呟く。 



 領主ストフスはギナル皇国が、3人の白き神に支配されていた事は知っている。そして前皇帝ユリオネスが、その白き神の加護を受けていた事も。



 しかし、その加護を受けていた筈の傀儡皇帝ユリオネスが倒され、新たに皇女エリザベートが即位した事や皇都の変わり様を見れば……先の白き神とは別な存在が降臨したと、ストフスは予想したのだ。



 もし、新たな神なる存在が皇女エリザベートを加護しているのならば……皇女の支配は揺るぎない事になる。



 そうであれば……自分が起こした反乱など、全くの徒労だったと領主ストフスは自覚させられた。



 絶望と恐怖を味わいながら……ストフスは呆然と激変した皇都カナートを見つめる。




 そんな中……領主ストフスを掴んで飛びリベリオンは、屋根が無くなった皇城にゆっくりと入り、玉座の間にてストフスを降ろした。



 長時間の飛行を味わったストフスは、腰が抜けて立ち上る事が出来なかった。



 「ぜぇ……ぜぇ……や、やっと……」



 床に降ろされたストフスは、四つん這いになって肩で息をしながら脱力する。

 


 「ブラン辺境伯領領主ストフス……! 神妙にしろ!」


 「…………」



 四つん這いのストフスを見た、ラザレ将軍が部下のネビルと共に剣を向け叫ぶが……彼は何も答えられない。



 降ろされた玉座の間には、ラザレとネビル以外に皇女エリザベート達も居たが、ストフスには相手をする余裕が残されていなかった。



 突然連れて来られた領主ストフスを警戒し、ガストンとフワン並び近衛騎士達がエリザベートを守り物々しい空気が玉座の間に張り詰める。



 しかし……玉座の間に連れて来られた時点で、謀反を起こした領主ストフスは、もはや反攻する気も無くしていた。



 それも、その筈……。続け様に起こった出来事が、ストフスの野心を微塵に砕いたからだ。



 挙兵した3万の大軍は蹴散らされ、伯爵領城下町はリベリオンに蹂躙された。


 その上で自分は4時間にもわたる決死の飛行体験をさせられ、魔境となった皇都カナートをその目で見た。



 それらの異常な出来事の全ては……新たな神の加護によるものだと確信させられたストフスは、何をしても無駄だと理解したのだ。



 何をどうやっても抗う気持ちは、もはや領主ストフスの中には欠片も無かった。そこへ……。




 「……お前が、謀反を起こしたブラン辺境伯領の領主か……」



 すっかり怯え、心が折れたストフスに何処までも冷たく低い声が掛けられる。


 四つん這いになっていた領主ストフスは、頭上から突然掛けられた声に、顔を見上げると……そこには凶悪な恐ろしい漆黒の鎧を纏った黒騎士が、自分を見下ろしていた。



 「!? う、うわ!?」


 

 恐ろしい黒騎士の姿を一目見たストフスは……心砕けていた事も有り、腰を抜かし叫び声を上げる。



 この黒騎士の姿は、ブラン辺境伯領領主館の上空に映された映像で目にしていた。



 その際は、取るに足らないまやかしと嘲っていた領主ストフスだったが……その後に起きたブラン辺境伯領での襲撃より、この黒騎士がまやかし等で無い事は嫌でも理解した。



 まやかしと侮っていた黒騎士を、実際に目にすると……圧倒的な存在感にストフスは押し潰されそうになる。



 上空に映された映像で、光の槍や白き龍を使役しているのが、目の前の黒騎士である事は疑い様は無かった。


 そればかりか、皇都に浮かぶ白い船や、巨大な卵状の建造物も黒騎士の手に寄るものである事は間違いないだろう。

 


 圧倒的な存在感と、奇跡の技を使役する存在……。ストフスは明確に理解させられた。



 目の前の恐ろしい黒騎士が……先の白き神と代わり降臨した存在だと。



 この黒騎士こそが、この異常な状態の中心であると思い知ったストフスは、得体の知れない存在に恐怖し、激しく混乱した。




 混乱と恐怖で動揺したストフスは、殆ど反射的に黒騎士に向かい叫ぶ。



 「こ、皇帝ユリオネス陛下は……!? そ、それと3人の白き神は何処に!?」


 「……ゼペド等白き偽神は俺が殺した。それに、奴らを崇めていた異端審問官共も、傀儡皇帝ユリオネスもな……」


 「い、いひぃ!?」


 

 黒騎士の低い声で、知りたくも無かった事実を聞かされたストフスは、腰を抜かしたまま後ずさりして悲鳴を上げる。




 黒騎士レナンは、そんな領主ストフスに構わず、その胸倉を掴んだ。


 人外の力を持つレナンは、常識外れの膂力で……難なくストフスの胸倉を掴んだまま、片手で持ち上げる。



 「お前は……傀儡皇帝ユリオネスに従い……長らくロデリアを喜喜として攻めていた男だな……。お前には是非、礼を言いたいと思っていたぞ?」


 「ひ、ひひぃ!!」



 凶悪な黒騎士に持ち上げられ、低い声で恫喝された領主ストフスは……我慢の限界を超え、悲鳴を上げて失禁し……そのまま気を失ったのだった。



 気絶した領主ストフスは、皇城地下の独房に放り込まれた。



 心を大きく乱された領主ストフスは……独房内で暫く錯乱した後、意気消沈し死んだ様に蹲っていたが、後から現れた美しい皇女エリザベートに救われる。



 別人の様にやつれ、消耗していたストフスを哀れに思ったのだろう、皇女エリザベートに優しい声を掛けられた彼は、すっかり心を入れ替え、皇女へ忠誠を誓う。



 皇女への忠誠を改めて誓った領主ストフスは、己が罪を自覚し裁きを素直に受ける事となった。



 皇女エリザベートは、そんなストフスの改心を認め、極刑を加える事は免除したのだ。



 こうして、ブラン辺境伯領領主ストフスの謀反は、人的被害も無く難なく解決した。




 だが……その後も、ギナル皇国の混乱は続く事になる。



 ブラン辺境伯領領主ストフスの謀反後……皇女エリザベートの皇帝即位を認めない派閥貴族や、他国に唆された地方貴族が尽きる事無く、皇都に向け続々と挙兵したのだった。

 



 その度に、レナンが設置した自動防衛システムが作動し……同じ事が繰り返された。



 ブラン辺境伯領の反乱時と同じく、牽制の為に進軍して来る大軍に対し、その鼻先に自動生産プラントの砲台から超長距離の高出力レーザーが放たれ……皇都に進もうとすれば、その眼前でレーザーが着弾し、大地が炸裂した。



 そうして、動けなくなった数万の兵達の前に……事前に録画された50mを超える巨大な黒騎士の映像が映し出され警告を発する。



 事態が呑み込めない兵達が、進軍を開始した場合……皇都の自動生産プラントから、リベリオンが転移され、大軍を蹴散らすのだ。



 リベリオンに蹴散らされた兵達は、撤退するしか無く、拠点である領地に這う様に戻る事となるが……その領地にもレナンは放置しなかった。



 ブラン辺境伯領の事例と同様に、リベリオンを派兵して拠点を無力化し……その上で首謀者である領主なり、貴族なりをリベリオンに寄る空の旅へ招待した。



 そんな事を何度も繰り返す内に……皇女エリザベートの新体制に異を唱える愚か者達は駆逐された。



 そして……漸くギナル皇国の動乱は、完全に終結したのであった。

いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/4(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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