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336)ブラン辺境伯領にて①


 ブラン辺境伯領から挙兵された3万の大軍が、リベリオンによって蹴散らさせた同時刻……。



 皇都カナートの皇城、玉座の間にて、皇女エリザベート達は黒騎士レナンの指示で映し出された巨大スクリーンによりブラン辺境伯領の兵達が逃げ惑う様を見ていた。




 「「「「…………」」」」




 一方的に、しかも呆気なく壊滅したブラン辺境伯領の大軍の映像に……エリザベート達は、またも絶句するしか無かった。



 「……防衛システムは、問題無く作動したな。反省点としてリベリオン10体は大袈裟過ぎたか……」


 「はい、マスター。都市殲滅用の巨大生物兵器ゴリアテをリベリオン一体で片手間に圧倒出来る戦闘力ですので。

 殺さず無力化と言うハンデを与えても、一体で10万人規模の歩兵戦力にも十二分に対応出来るでしょう。

 今回の事例では……後から転送させた10体のリベリオンとは別に、複写した映像を3000体程を戦域上空に放映しましたが、兵達を混乱させるのに効果が有りました。次回からはリベリオン派遣は一体だけで、後は映像だけで十分でしょう」



 エリザベート達が固まる中、レナンは何でも無い事の様に呟くと、横に居たオニルは補足説明する。




 「……黒騎士……状況を説明してくれないか? 何が何だか……」


 「見ての通りだ……。謀反を起こした領地から派兵された部隊を、防衛システムが無力化した。とは言え、捕捉が必要だろう。オニル、説明してくれ」


 「はい、マスター」



 困惑するエリザベートの気持ちを代弁して、ラザレ将軍が問うと、レナンはオニルに説明を指示する。




 レナンに指示されたAIのオニルはエリザベート達に防衛システムについて説明した。



 今後、このギナル皇国で謀反や他国からの侵攻が起こった場合……自動的に防衛システムが働く事。


 そのシステムは、進軍してきた部隊が皇都カナートまで30km地点まで近づいた時点で、自動生産プラントの砲台からの高出力レーザーで威嚇射撃する事。


 威嚇射撃で、動けなくなった部隊の前に……事前に録画された50mを超える巨大な黒騎士の映像が映し出され警告を発する。


 警告を無視して、進軍を開始した場合……皇都の自動生産プラントから、リベリオンが転移され、部隊を壊滅させる事。



 それらの事をAIオニルは、皇女エリザベートやラザレ将軍達に説明した。



 「……派兵されるリベリオンは、基本一体の予定ですが、戦力的には全く問題有りません。何故なら偉大なるマスターの御力を与えられたリベリオンには……剣と魔法でしか戦う術を持たないアステア原住民の兵達では、何をどうやっても絶対に勝てません。

 相対する歩兵部隊が例え十万規模でも、短時間で無力化されるでしょう。不足が有れば、直ちに別なリベリオンを派遣します。

 なお、マスターの指示で……進軍してきた兵達を殺さない様に厳命されています。高出力レーザーで焼き払うか、リベリオンの力で薙ぎ払えば……一瞬で殲滅出来るのですが、後の統治に影響が出るとの御考えによるものです。

 その為、皇都に向け進軍する兵達は、剣や槍と言った武器や、体を守る盾等を、優先的に破壊する様に派兵するリベリオンには、マスターより指示されています。

 前時代的な剣と魔法でしか戦う術を持たない兵達では……長距離から放たれる高出力レーザーと、絶大な戦闘力を持つリベリオンの前に、進軍する事は叶わないでしょう。

 正に、ブラン辺境伯領から挙兵された3万の部隊が示した通りに。……以上で説明を終わらせて頂きます」


 「「「「「…………」」」」」



 説明を終えたオニルに、エリザベート達は理解が追い付かず固まったままだった。そんな皇女達を見てレナンが説明を続ける。


 

 「……この防衛システムは、本来はゼペド等の様な外敵から都市を守る為に作ったものだ。だが、自国の反乱鎮圧や他国からの侵略防衛にも、見て貰った様に自動的に対応する。同じシステムをロデリアにも設置済みだ。これから侵略する亜人の国にも設置する。

 いずれにせよ、自国だろうが他国だろうが……攻めて来る兵達に、エリザベート殿下が居られる皇都が侵略される事は在り得ない。元より殿下にはオニルとリベリオンが付いているからな……何が有っても大丈夫だろう。……少しは安心したか、将軍殿?」


 「正直……半分も理解が及ばんが……そなたが、皇女殿下と皇国の為に手を尽くしてくれた事だけは分った。感謝する」

 

 「黒騎士様、本当に有難う御座います……!」



 説明したレナンにラザレ将軍は頭を下げて礼を言うと、横に居たネビルも彼に従い、頭を下げる。



 「……礼には及ばん。元よりゼペド等の仲間から、この世界を守る為に始めた事……。だから、これはついでの様なものだ。それより……まだ、仕上げは終わっていない」


 「レナン様、仕上げとは……?」



 答えたレナンに対し、エリザベートは尋ねる。



 「皇女殿下、先の戦いは迫り来た先兵を追い散らしたのみ。根源を叩かねばなりませぬ」


 「……成程……首謀者のブラン辺境伯領主ストフスの始末と言う訳か……」

 


 レナンの言葉を聞いたガストンは、深く頷いて呟く。



 「ええ、ガストン殿。奴を放置すれば再び調子付く。一刻も早く始末を付けるべきだ。とは言え、何でも殺してしまうのは……皇女殿下の歩みに傷が付く。此処は俺に任せて貰おう」

 


 ガストンの呟きに、黒騎士レナンは低い声で答えるのだった。




  ◇  ◇  ◇




 「……何が……どうなっている!? これは現実の事なのか……!?」




 皇都目前で、ブラン辺境伯領の兵達がリベリオンに蹴散らされた少し後……。



 ブラン辺境伯領主ストフスは、領主館の窓から見える様子に驚愕しながら叫ぶ。




 彼が驚き叫ぶのも仕方が無いだろう。窓から見える風景は、それだけ異常だった。



 領主館の外に見えていたのは、上空一杯に広がった巨大なスクリーン映像だ。




 そんなものが映っている事自体も異常な出来事だが、領主ストフスが驚愕していたのは、そこに映し出されている映像だ。



 その映像は、自らが送り出した3万の兵達が、平原でリベリオンに呆気なく蹴散らされている様子が映し出されていたのだ。



 送り出した兵の中には、領主ストフスが知る者達が何人も居たが……その者達が、必死な形相を浮かべ逃げ回っている。



 その中には……。


 

 “うわあああ! だ、駄目だぁ!”



 部隊を率いていた大隊長の姿も有った。その大隊長も槍をリベリオンに握り潰され、情けない悲鳴を上げて逃げ出している姿が映っていた。




 巨大スクリーンからの映像は、平原でブラン辺境伯領の大軍が戦意を喪失し、部隊が崩壊していく様が、音声付で繰り返し映し出される。



 その映像を、領主ストフスだけでは無く……領主館外に住まう城下の者達も、守りを固める兵達も食い入る様に見つめていた。



 それもそうだろう……。皇都カナートに向け進軍して行った部隊は、ここブラン辺境伯領に住まう者達だ。

 


 映像の中で逃げ出した兵達を、見ている者達は皆、家族や友人と言った間柄で良く知っている。


 兵達の必死な形相で命からがら逃げている姿が、見ている者達は気になって仕方が無い様だ。



 映像で、挙兵した自軍が壊滅していく様を見せられた領主ストフスは、我を取り戻して叫んだ。



 「ええぃ!! 誰か、あの忌まわしい様を消して来い!!」


 「で、ですが閣下……一体、どうやって……」



 叫ぶ領主ストフスに対し、背後に居た配下が大いに戸惑いながら答える。


 

 「何とかするのがお前の仕事だろう!! この能無しが!」



 配下の言葉を聞いて更に激高した領主ストフスが大声を張り上げた時……彼の背後で凛とした声が響く。



 「……そう言うならば、先ずは貴方がやって見せれば如何ですか? 能無し領主殿?」


 「「!?」」



 突然背後から響いた声に、仰天した領主ストフスと配下の者が振り返ると……。



 そこには……白を基調としたボディスーツを着る美女が立っていた。それは、女性型アバターを投影したAIのオニルだった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は4/27(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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