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330)ギナル皇国侵略戦-43(宣戦布告)

 異形化した異端審問官長官ヒドラを皇城の屋根ごと消滅させたレナン。


 その上で、魔獣が居た隔離棟を、白き戦艦ラダ・マリーのレーザー砲で焼き払う。


 次いでレナンは、残る異端審問官達をヴリトとして命じて、自滅させた。



 それにより、ゼペド等白き偽神が支配の時が、完全に終わったのだ。


 

 長く辛い時代が終わった……。そんな想いを抱いて、皇女エリザベートは玉座の間から見える青空を見ながら、静かに涙を溢す。



 そんな皇女を漆黒の鎧を纏い黒騎士へと姿を変えたレナンが、黙って見ていたが……彼の視線に気が付いたエリザベートがレナンに向かい頭を下げ、語り掛ける。



 「……レ、レナン様……貴方は、この皇国を救って頂いた……。本当に、本当に有難う御座います。この御恩、何とお返しすれば……」


 「この戦いは、俺自身が望み始めた事……。それに、ユリオネスの様なゼペド等の犬共は、けじめとして皆殺しにすると決めていた。だから貴女が気にする必要は無い。

 そんな事より、奴らの支配が無くなった後……本当の意味で、この皇国が救われるか否かは、皇女殿下……貴女達に掛かっていると思うが?」



 頭を下げて礼を言ったエリザベートに対し、レナンは低く威厳のある声のままで答える。



 「は、はい……肝に命じます」


 「とは言え……混乱の最中、指揮を執るのは骨が折れるだろう。オニル……人の姿を取り、これからも皇女殿下を御守りし、傍に控えろ」


 「マスターの御命令と有れば」



  "ビュン!"



 レナンの指示を受けたオニルが答えた瞬間、丸っこいドローンの一体が、音を立てて光り輝く。

 

 光が収まった後、ドローンの一体が姿を変え……白いボディスーツを着た美女が立っていた。



 「「「「!?」」」」

 

 「気にする事は無い、皇女殿下の傍に仕えさせる為……分身体の姿を変えさせただけだ。皇女殿下……何か有れば、そこのオニルに言えば良い。こいつを通じて俺も助力が出来よう」


 「はい、レナン様。それと……これから宜しくお願いします、オニル様」


 「はい、皇女殿下。他でも無いマスターの御指示です。マスターが御認めになる範囲で、ご協力させて頂きましょう」



 驚く皆と皇女エリザベートに、レナンは説明した後、エリザベートは女性の姿を取ったオニルに挨拶した。



 AIのオニルがエリザベートに素っ気無く答える中……。



 レナンは、玉座の間に転がっている“ある物”の元に近付き、それを無造作に掴んだ。



 彼が掴んだのは……異形化したヒドラに切り落とされた、傀儡皇帝ユリオネスの首だった。



 「……!? く、黒騎士……! そなた、“それ”を如何するのだ!?」


 「少し借りるだけだ……。挨拶は大事だからな」



 ユリオネスの首を掴んだレナンに対し、ラザレ将軍は驚き叫ぶが……対するレナンは、何でも無い事の様に呟く。



 今のレナンは、あの凶悪な漆黒の鎧を纏っており声も威圧感の有る低い声だ。



 呟いたレナンは玉座の間の壁を背にして、掴んだユリオネスの首を掴んだまま、オニルに声を掛ける。



 「……オニル……今から話す事を、各国首都に映し出せ……。ベルゥ達に気付かれんよう偽装しながらな」


 「はい、マスター」


 「それでは、始めるぞ……」




 ◇   ◇   ◇




 ギナル皇国の侵略を終えた黒騎士レナンが、オニルに声を掛けた直後……。



 ギナル皇国より遥か南に下った、亜人の国アメントス。このアメントスの首都にて、突如、恐ろしい漆黒の鎧を纏った黒騎士が姿を見せた。



 但し、現れた黒騎士は高さが50m程も有る巨大さだ。よく見れば、透けており背後が見通せる。どうやら投影された映像の様だった。



 「な、何だ!? こいつは!?」

 「巨人!! 何て大きさだ!」

 


 突然現れた巨大な黒騎士の映像は、亜人の国アメントスの住民達を大いに動揺させた。



 亜人達は、皆……長い耳を持つ者や子供の様な背丈の者、獣の様な毛深く巨体を持つ者など、一目で亜人と思わせる風貌を持っていた。



 そのアメントスの亜人達は、黒騎士レナンの姿を見て、口々に大声を上げ騒ぐのだった。



 しかし、次の瞬間……巨大な黒騎士レナンの映像を見ていたアメントスの亜人達は、更に驚愕し、悲鳴を上げる事となった。


 何故なら……投影された黒騎士は、何と……切り取られた生首を掲げたのだ。



 「きゃあああ!!」「うわぁぁぁ!!」



 血が滴る生首を掲げた、黒騎士レナン。その首を見たアメントスの亜人達は、堪らず絶叫する。



 拡大投影された映像の中の生首の大きさは、見掛けで7m位はある巨大さだ。



 黒騎士レナンが掲げた首は、ギナル皇国前皇帝ユリオネスのものだった。


 ユリオネスの首を掲げたレナンは……低い威厳ある声で、宣言する。



 「……我の姿を見ている、全ての者達へ告げる……。我が名は黒騎士……我はこの度、白き偽神に従い……他国へ繰り返し侵略行為を行っていたギナル皇国、前皇帝ユリオネスを討ち果たした。この首が、その証だ……。

 ギナル皇国を支配していた、忌まわしい白き偽神も既に滅んだ……。しかし奴らの仲間は幾らでもやって来よう。

 故に我は……奴らより、この世界を守る為に各国を統一する。既にギナル皇国とロデリアは我と同盟に至った……。次はそなた等の国へと参ろう。その時……そなた等が我が意に賛同頂く事を期待する……」


 

 血に塗れた前皇帝ユリオネスの生首を掲げ、拡大投影された巨大な黒騎士レナンは宣言した後……唐突に姿を消す。



 「「「「…………」」」」



 映像を食い入る様に見ていたアメントスの亜人達は……衝撃的な状況に、ただ絶句して固まっていた。



 この黒騎士レナンの映像は……このアストア世界における、主要な国家の都市に放映されていた。



 ありとあらゆる国々の人々が、ユリオネスの生首を掲げた黒騎士の恐ろしい姿を、見た事だろう。



 そして、その黒騎士が告げた……突然の宣言。しかもギナル皇国とロデリアと同盟したと言う。



 だが、ギナル皇国皇帝ユリオネスの首を掲げて見せた事より……平和的な同盟とは、映像を見た全ての者達は到底思えないだろう。



 特に、国家の中枢に居る者達からすれば……レナンの宣言は、明らかな宣戦布告と受け取った筈だ。



 ここ、亜人の国アメントスの王族も、レナンの映像を見て……そう感じていた。



 「……来ると言うのか……ロデリアの黒騎士が。忌まわしい因縁と共に……」



 アメントス首都中央に設けられた、巨大な石造りの城のテラスにて、映し出された巨大な黒騎士を見て、精悍な顔つきをした筋骨隆々とした男が呟く。



 この男は、燃える様な赤毛の巨漢で伸びた特徴的な耳を持っている事より、マリアベルと同じオーガ族の様だ。



 「……ええ、ミゼニス王……。間違いなく、彼の黒騎士は此処アメントスへと来るでしょう」



 “ミゼニス王”と呼ばれたオーガ族の男が呟くと……背後に居た少年が答えた。



 この少年は黒髪を束ねた長身で、非常に整った顔立ちをしている。


 

 「そなたもそう思うか、キース殿……。だが、良いのか? そなたの大事な者がギナル皇国に居るのでは?」


 「……彼女は、フワンは、そんな柔な女ではありません。逆に何かやらかしてないか、そちらの方が心配ですが……。今この場は、アメントスに来襲する黒騎士を何とかせねば」                                                                                                                                      

 


 ミゼニス王に問われた、黒髪を束ねた少年キースは力強く言い切る。


 どうやら、このキースはギナル皇国に居るフワンと恋仲の様だ。



 「済まぬ、キース殿……。なれば、特級としての力……充てにさせて貰おう」


 「……心得ました、ミゼニス王」



 亜人の国アメントスの王ミゼニスに請われた、キースは静かに応えた。



 このキースと呼ばれた特級冒険者と、黒騎士レナンが出会った時……彼の戦いは新たな局面を迎える事になるのだった。



いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は4/6(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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