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329)ギナル皇国侵略戦-42(終わる支配)

 白き戦艦ラダ・マリーが、魔獣が居る隔離棟をレーザー砲で焼き払う、少し前……。



 民家の屋根の上を駆ける黒頭巾の男達が居た。彼等は異端審問官だ。



 この者達は、任務を受け皇都各所に潜伏していたが……突然起こった皇城の異常を見て、一斉に皇城へ向かっていた。




 「おい、急げ! 一刻も早く皇城へ戻るぞ!!」


 「ああ、皇城の屋根が丸ごと消し飛ぶなど……尋常では無い事だ」

 

 「それに、ユリオネス陛下の姿が空に、映し出されていたのも奇怪よ」


 「一体、何が起っている!?」



 彼等は、声を掛けあい……屋根から屋根へと飛んで矢の様に駆ける。




 しかし、その最中に彼等は……。




 “ビュイン!!”



 皇城上空に浮かぶ、巨大な白い船の船首部より……甲高い音と共に、一条の真白い光が弧を描いて、地上に突き刺さる光景を見た。



 「「「「…………」」」」



 上空の白い船から、放たれた白い光の柱……。突然の出来事に異端審問官達が足を止め、見入ってしまった直後。



 “キュドドン!!”



 大音響と共に、光が突き刺さった地上の建屋が大爆発し、脇に立つ皇城を豪炎で染める。



 「あ、あれは……! あの爆発して炎上しているのは……魔獣の隔離棟か……?」


 「……その様だ……。そして隔離棟を破壊したのは、上空に浮かぶ白い船……。やはり、あれは降臨した神の船か……」


 「恐らくはな……。だが、一年以上前に去った白き神の御船とは……形がまるで違うぞ」


 「ああ、そして何故……ロデリアの国章が刻まれている?」


 「よもや……新しい神が、ロデリアから降臨した!? その神が、皇国を攻撃しているのか……?」



 爆発して燃える魔獣の隔離棟を遠目に見ながら、異端審問官達は口々に疑問を口にする。



 

 「……とにかく、皇城へ向かうぞ。ヒドラ長官と合流すれば、状況が分るだろう」


 「ああ……そうし……ぎ!? ひぎぃいい!!」



 異端審問官の一人が、仲間に声を掛けている最中の事だった。その中の一人が返事をしている途中で、もがき苦しみ……そのまま倒れて絶命した。



 異常事態は、その仲間だけでは無かった。他の異端審問官達も次々に悲鳴を上げ苦しみ出す。



 「ぐぎゃあああ!!」

 「うぐああ!」



 続々と仲間達が絶叫したかと思うと……頭から血を流して、屋根から転がり落ちていく。



 「な、何だ!? 一体どうした!?」

 「わ、分らん! ……ぐ!? いぎぃいい!!」

 「あああがぁぁ!!」



 突然倒れていく仲間に、残った異端審問官達は、状況を確認しようとするが……その最中に、横に居た異端審問官達も絶叫しながら倒れていく。




 「ど、どう言う事だ!? まさか、攻撃を受けたのか!?」



 最後に残った異端審問官が、周りを見渡すが……周囲には誰も居ない。


 

 そんな中……。



 “ヴリトとして命ずる。死ね”



 突如、そんな声が脳裏に響く。


 

 すると……。



 “ズギイン!!”


 「あぎぃ!!」

 


 声が脳裏に響いた瞬間……在り得ない程の頭痛に襲われ、その異端審問官は悲鳴を上げて膝を付く。



 頭から血が大量に滴り落ちるのが分り、彼は立っている事が叶わず……その場に倒れる。



 倒れた異端審問官は、響いた声を聞いて確信した。



 その声の主は……間違いなく、白い神のものだと。先程、仲間が言っていた通り……あの白き船に乗って現れた、新しい神に違いない。



 そして、死にゆく異端審問官は分ってしまった。


 ロデリアから来た新しい神は……去った古い神を崇めていた自分達を滅ぼそうとしている事に。

 


 そう理解した異端審問官は……自分達が滅ぼされる理由を、考えようとして……そのまま黄泉路へ旅立った。




 こうして、長きに渡り……ゼペド等白き偽神を盲信し、ギナル皇国を裏から支配していた異端審問官達は一人残らず、滅んだのだった……。

 



 

  ◇   ◇   ◇


 



 異形と化したヒドラを……広大な皇城の屋根ごと消滅させたレナン。



 レナンはそれだけに留まらず、上空に浮かぶ白き船ラダ・マリーよりレーザー砲撃させ……魔獣の隔離棟を消滅させたのだ。



 爆発して炎上した隔離棟から、炎が立ち上り……皇城を赤く染める。




 そんな異常な状況の中……エリザベートやラザレ達は、一言も発せず固まっていた。



 “ゴゴゴゴ……”



 エリザベート達が驚き固まる中、今だ皇城の揺れは止らず続いていた。




 皇城の揺れが続く中、レナンが困った様に呟く。



 「……何もしていないのに、城が揺れるとは……。この形態では力の制御が難しい……。やはり、今は鎧で抑え付けないとダメだな」


 「ご説明させて頂きます、マスター。皇城の振動は……マスターの第二形態発現により、自然放出されている“ヴリル”に依るものです。いわゆるアイドリング状態とイメージ頂ければ宜しいと思います。

 尚、ご存じとは思いますが……“ヴリル”とは、マスター達ヴリトが戦闘時等に使用する高濃度のエーテル波エネルギーの事です。

 ちなみに……マスターは初めて第二形態に覚醒時点より、強制強化の影響で保有“ヴリル”総量が4割程UPしておられます。その上、常日頃……ボディアーマーに寄る強制強化を続けている事より、更にその総量は増え続けておられます。

 その結果、現時点の第二形態を発現したマスターであれば……ほんの僅かでも力を発動すれば、その余波で皇城どころか……皇都そのものが粉砕されるでしょう」

 


 呟いたレナンに、AIのオニルが解説したが……それを聞いたラザレが、動揺から我に返り声を上げる。



 「!? じょ、冗談じゃ無いぞ!! 黒騎士! 今すぐ、それを止めろ!!」


 「……案ずるな、オニルに言われずとも……自分が危険な爆弾と言う自覚はある。……着装……」


 

 叫んだラザレに、レナンは落ち着いた声で答えた直後……。レナンの体を黒い粒子を包み、一瞬の内に彼は漆黒の鎧を纏う。



 元の凶悪で恐ろしい鎧を纏い、黒騎士の姿に戻ったレナン。



 それと同時に皇城の揺れはピタリと止まった。



 「……これで安心だな……」


 「はい、マスター。マスターの御力が制限された事より、振動源は無くなり皇城の揺れは収まりました。これならば皇城が倒壊する可能性は低いと言えるでしょう」

 


 揺れが収まった皇城を見渡し、黒騎士となったレナンが呟くと、AIのオニルも相槌を打つ。




 そんな中、一番重要な問題が放置されている事に……ラザレ将軍がキレて、消滅した天井を指差しながらレナンに詰め寄る。



 「お、お、おいぃ!! どうするんだ、この惨状!?」


 「……威力を十分に弱めたが、少しばかり穴が広がり過ぎたか……」



 詰め寄るラザレに対し、レナンは屋根が消え去り青空が広がる玉座の間の天井を見上げながら、何でも無い事の様に呟く。



 「す、す、少しばかりじゃ無いだろう!?」 



 何でも無い事の様に呟いたレナンに、ラザレが更にキレて大声を張り上げる。



 「……お前だってヒドラを楽にしてやれ、と俺に頼んだではないか。だから仕方ない」


 「それだけじゃない! 何で皇城の横を、変な光で焼き払った!?」

 

 「変な光じゃ無い、レーザー砲な。魔獣が一杯居た隔離棟を砲撃した。これも仕方ない」


 「何度も! 何度でも言うが!! や・り・か・た! が有るだろう!?」



 ラザレに続けて怒られたレナンは開き直ったが、余計に彼を怒らせる。




 屋根が丸ごと無くなった皇城を見て……“どうするんだコレ……”とラザレが頭を抱えて座り込み、それを部下のネビルが励ましていた。



 そんなラザレ達を見て、皇女エリザベートは……何だか可笑しくなって、楽しそうに笑ってラザレに声を掛ける。



 「フフフ……アハハハ! ラザレ将軍、こんな綺麗な青空がいつでも見られると思えば、青天井も素敵ですよ」

 

 「こ、皇女殿下!? 笑い事では御座いませんぞ!」



 楽しそうに声を上げて笑うエリザベートに、横に居たガストンが困り顔で諌めた。



 「良いのです、ガストン。こんな、こんな明るく笑える明日が来るなら! 皇国に素晴らしい未来が始まるのなら! 古臭い城の屋根なんて、安いものです! そうでしょう、レナン様?」


 「……ああ、そんな未来なら……何事にも代えがたいな」



 皇女エリザベートは、美しい笑顔に薄っすらと嬉し涙を浮かべて、黒騎士レナンに笑い掛けた。


 レナンは……そんなエリザベートの笑顔を眩しいと感じながら、大きく頷いて応える。




 今日と言うこの日……長くギナル皇国を覆っていた暗闇が……消え去った日となった。



 ゼペド等白き偽神が敷いた……闇の支配が完全に終わったのだ。



 ロデリアから来た……恐るべき黒騎士が吹き飛ばした、紅い皇城の屋根と共に――。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は4/3(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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