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321)ギナル皇国侵略戦-34(白き神)

 凶悪な漆黒の鎧を外して見せた黒騎士レナン。その容姿は……眉目秀麗な偉丈夫だったが……。

 


 真に驚くべきは、輝く様な銀髪と、抜ける様に白い肌……そして瞳は茜色を持っていた事だ。



 レナンが見せた素顔こそが……異端審問官長官ヒドラが声高く語った、白き神の姿だったからだ。



 白き神……つまりは、超絶的な力を持った種族ヴリトとしての、素顔を見せたレナン。


 


 彼は見た事が無い素材と形状の、黒いボディスーツを着ていたが……そのスーツは、筋骨隆々としたレナンのボディラインを明確に現わしていた。


 スーツの表面には線状の光りが、絶えず走る不思議な形状で……肩と腰に金属性のパーツが嵌め込まれている


 その特徴的なボディスーツを着るレナンの首には、真黒い首輪が巻かれていた。




 白き神としてのレナンの姿を一目見た、皇帝ユリオネスと配下の者達、そして異端審問官等は一斉に跪いている。


 異端審問官長官ヒドラは……真っ青な顔を浮かべ、絶望的な表情で立ち尽くしていた。



 「「「「「「…………」」」」」



 玉座の間に、恐ろしい程の沈黙が支配する中……素顔を現したレナンが、皇女エリザベートの方を向き直る。




 白き神として崇められていた、ヴリトとしての素顔を見せた黒騎士レナンに対して……皇女エリザベートは、迷いなく跪く。



 エリザベートが跪くと……以下、ガストンやラザレ将軍、ネビルや、その場に居た近衛騎士達も跪いた。


 なお、フワンはキラキラした目でレナンの顔を見ていたが、冒険者だからか、立ったままだった。



 対するエリザベートは跪いたまま、頭を垂れ……大いに緊張してレナンに声を掛ける。



 「……黒騎士様……。や、やはり貴方様は……ロデリアで、白き勇者と呼ばれていた御方ですね……。し、しかし……その真実の姿は、我らの予想通り白き神……! どうか、我らを守り、御導き下さいませ……!」



 レナンの本当の姿を概ね、予想していたエリザベートは、震えながら声を絞り出す。



 皇女エリザベートは、定期的に間者を送り込んで……ロデリア王国に、黒騎士マリアベルと言う英雄騎士と……一年程前に彗星の如く突如して現れた、白き勇者の存在を把握していた。


 その白き勇者に関して、エリザベートが調べれば調べる程……その姿と圧倒的な力が……ギナル皇国を支配する白き神と、非常に似通っている事を知る。



 だからこそ、今回……来襲した黒騎士の正体は……白き勇者にして、ロデリアの白き神と予想していたのだ。


 

 そして、遂に真の姿を見せた黒騎士レナン。その姿は、エリザベートの予想通り……白き神そのものだった。


 

 相手は超越した存在の神……そう思い、畏まって跪く皇女エリザベート。



 そんな皇女に、レナンは……膝を付いて、静かに話し掛ける。



 「……エリザベート・メアリー・ド・ギナル皇女殿下……。どうか、御立ち下さい。これからのギナルの為にも……皇国の要である貴女が、俺を見て跪くのは正しいとは思えません。

 貴女は、皇国の強く逞しいジル姉として……俺に、啖呵を切って突っ掛る位が丁度良いと思います」



 レナンは笑顔で言いながら、皇女の手を取り……そっと立ち上らせる。



 「……く、黒騎士様……」


 

 レナンに手を取られ立たされた皇女エリザベートは……戸惑いながら呟く。



 戸惑うエリザベートは、今だ表情は硬く、緊張は解けていない。皇女だけでは無く……ラザレ以下、皇女の配下達も跪いたまま固まっていた。



 そんな中……間延びした声が響く。



 「うわうわ~凄いイケメン君ね。私のキース君に負けないくらいよ~」


 

 緊張した場をブチ壊す様な、底抜けに間の抜けたフワンの声が響いた。



 「……貴女はフワンと言われたか。冒険者として長く皇女殿下を守られた、貴女の働き……実に見事。貴女が想われるキース殿とは、本当に果報者だ」


 「やっぱり、黒ちゃんてば私の予想通り心の方も凄い良い子~! 呪いの鎧とのギャップがとても素敵~」



 レナンは、場違いなフワンの言葉に怒る事も無く、彼女を労うと……フワンは、彼の手を取り大喜びした。


 

 空気を読まないフワンの言動により、若干軽くなった場の中……レナンは、今だ跪いたままのラザレ将軍とガストン達に向け……悪戯っぽく話し掛けた。



 「どうした、ラザレ将軍殿……。俺に噛み付いてでも倒す、と言ったのは嘘か? それと料理長のガストン殿、孫娘のジル姉が困っているぞ? そなた等が皇女殿下を守らずして、どうするのだ?」


 「くっ! 言ってくれる! ええい、分った! 黒騎士であろうが、何者だろうが……そなたは、そなただ! ネビル……この黒騎士は、君も知ってる通り無茶苦茶な奴だ。

 この男を好きにさせては、皇女殿下は振り回されるぞ! 我らが御守りせねば……!」


 「は、はい! ラザレ閣下!」


 「……漸く、皇女殿下へ素顔を見せたかと思えば……新たな白き神とは……! どこまでも、殿下を悩ませてくれる! ならばこそ、私が御守りするしか有るまい……!」



 レナンに問われたラザレとガストンは、立ち上って力強く答えネビルも続いた。


 

 「フフフ……。その調子で宜しく頼む。さて、種明かしが終わった所で……」



 レナンは、跪いていたラザレ達が立ち上り、皇女を守るべく守りを固めたのを見ると……改めて皇女の方を向き直り、声を掛ける。



 「皇女殿下……。まだ、ゴミ掃除は終わっていない。今から見るは、凄惨な修羅場。出来れば……貴女は、フワン殿とネビルと共に、此処を離れて貰えれば……」


 「……お気遣い有難う御座います、黒騎士様……。ですが、私は皇女として……最後まで事の結末を見届けねばなりません」


 「分りました……。辛い時は目を伏せて下さい。……オニル、リベリオン、改めて皇女殿下達を御守りしろ」

 「はい、マスター」

 「アギャ!」



 気遣うレナンに、エリザベートは気丈に答えた。レナンはそんな彼女と配下の者達を守る様にオニルとリベリオンに其々指示を出す。


 


 皇女殿下達への守りが固められたのを見たレナンは……始末を付ける為に、ヒドラの方に向き直り、声を掛けた。



 「……さて……異端審問官長官ヒドラ。貴様に問おう……。何故、貴様は跪かない?」


 「あ……あぅ……」



 ヴリトとして真の姿を現したレナンは、脂汗を流して固まっていた異端審問官長官ヒドラに、静かな声で問う。


 問われたヒドラは、言葉に成らずおかしな声を漏らして、挙動不審となる。



 ちなみに、ヒドラ以外の異端審問官達や皇帝ユリオネスと配下の者達は、ずっと跪いたままだった。



 挙動不審だったヒドラは、ハッとして突然騒ぎ出す。



 「!? そそ、そうだ! お、おおお前は! 白き神を騙る! に、偽者だ! そうでなければ、皇女如き下等な者に膝を付く訳が無い! し、真の白き神は……あのいと高き御三方だ!!」



 ヒドラ長官は先程、レナンが皇女エリザベートに、膝を付いて話し掛けた事を思い出し、白き神が皇女とは言え、下等な存在と対等に接した事を批判する。



 ギナル皇国を支配していたゼペド達は、この世界に住む全ての者達を下等生物として、徹底的に卑下して扱った。



 そんな自称白き神のゼペド達の尊大な態度こそが、真の神として相応しいと……敬い続けてきたヒドラは信じ切っている様だ。




 そんな哀れなヒドラに、レナンは冷たい声で話し掛けた。



 「……ヒドラ……お前が言う“御三方”とはこいつらの事か? オニル、見せてやれ」

 「はい、マスター」



 “ヴン!”



 レナンがオニルに指示すると……或る映像が玉座の間に映し出される。


 

 それは……“元”白き神だった、ゼペド達がレナンに殺された時の映像だった。



 映像は玉座の間に広く映し出され、ゼペドやアニグ、メラフ3人の末路を其々表す。




 “ば……ばで……ま、まま……待つのだ……ぎ! ぎいいいあぁ! あぎいいぃ!!”


 ゼペドの末路映像は、必死に命乞いしながら……最後は風船の様に膨らんで爆散し絶命する様だった。



 “ぼ、僕達は……君の味方……! そ、そそう! 同族だよ!? そんな僕達を……オゴオ!!”


 アニグの末路映像は、同族を強調してみっともなく懇願するも、レナンの長く生やした尾で、一瞬で体をバラバラに切り刻まれる様だった。



 “……ヒュー……ヒュー……た、たすけ……げぶっ!!”


 メラフの末路映像は、体内から光の刃を幾重も貫かれ、微塵となって絶命する様だった。



 映像は、ギナル皇国を支配していたゼペドやアニグ、メラフが……みっともなく命乞いしながらも、レナンに容赦なく惨殺される様を映した。


 

 そして……何度も同じシーンが繰り返し映し出されるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は3/6(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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