表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
320/370

320)ギナル皇国侵略戦-33(真実の姿)

 異端審問官長官ヒドラを、思い切り嘲った黒騎士レナン。



 その事に激高したヒドラは、配下の異端審問官と共に、レナンに向けて攻撃する。



 ヒドラ達が放ったのは、単純なエーテル波だが……大脳に埋め込まれた増幅器によって高められた魔法力で、一人の異端審問官が放つエーテル波の破壊力は正に一騎当千と言えた。



 放たれたエーテル波は、9本の眩い光の矢となり、黒騎士レナンに命中し……爆発を起こす。



  “ガガガン!!”



 爆発音と共に生じた火球に、黒騎士レナンや皇女達は包まれた。

 


 「ひ、ひいい!!」



 玉座の間で生じた爆発に、皇帝ユリオネスは怯えて叫んだ。



 「はぁ、はぁ! こ、皇女ごと……殺してしまいましたが、止むを得ません。神の、敵は全て滅ぼせねば……!」

 


 ヒドラは、そんな皇帝を構う事無く……火球に包まれたレナンを見ながら、肩で粗く息をしながら呟く。



 一人で大軍を圧倒出来る異端審問官の魔法力……。その絶大な力が9人分と為れば、この皇城すら貫けるとヒドラは考えていた。



 従って、如何に黒騎士レナンが強くとも……神が与えた、この力ならば微塵に撃ち滅ぼせると、ヒドラは確認していたが……。



 “キュン!!”



 甲高い音と共に、みるみる火球は集束し……その中から、全く無事な黒騎士レナンが姿を見せる。



 レナンは右手の平を前に向けており、火球は……その右手の平の前にどんどんと集束され……やがて、小さなビー玉位の大きさとなった。



 ビー玉程の大きさになった火球をレナンは、そのまま右手で握り潰す。



 “ボシュウウ!!”



 そんな音と共に、集束された火球は握り潰され……エーテル光となってレナンの鎧に宿る半透明な宝石に吸収された。



 「……雑魚過ぎる……。お前達の信仰とやらは、その程度か?」



 一人の力が、一騎当千とヒドラ長官が豪語した、異端審問官9人分の攻撃を軽々握り潰した黒騎士レナンは、嘲り呟くのだった。



 「も、もう一度です!! 今度こそ!!」



 嘲ったレナンの言葉を受けたヒドラは、配下の異端審問官達に向け叫ぶ。



 長官のヒドラより指示を受けた異端審問官達は、再度レナンに向け攻撃を放った。



 ヒドラを含めて9人分のエーテル波は、先程の攻撃と寸分変わらない凶悪な破壊力を持って、黒騎士レナンに迫る。



 “キュド!!”



 放たれたエーテル波は、レナンに命中し眩い火球を形成したが……あっと言う間に集束され、又も黒騎士レナンの眼前で光球となって留まっている。



 光球となり集束されたエーテル波は、当然の如く……黒騎士レナンが纏う漆黒の鎧に宿る半透明な宝石に吸収された。

 


 「……ば、馬鹿な……!? 白き神より賜りし力が……!」

 

 「お前に教えてやろうか? その御大層な白き偽神より、賜った力が通らない理由……。それは、この俺が……ゼペド共自称白き偽神より、強いからだろう……?」


 「お、おのれぇぇ!! お、お前達!! 神の敵を砕くまで、攻撃の手を止めるな!!」



 ヒドラは、自分が盲信する白き神を、愚弄したレナンの言葉に激高した。



 怒り狂い、冷静さを欠いたヒドラ長官は……懲りずに、配下の者達に指示を下して、共に攻撃を続ける。



 白き神を蔑み馬鹿にする黒騎士の言葉。その言葉に、異端審問官長官のヒドラは、異常な程、過敏に反応する。



 それには、絶対に認めたくない……とある、恐ろしい不安からだった。



 ヒドラは、この玉座の間に黒騎士が来るまでに、彼の者の行動は全て、報告を受けて把握していた。



 敵国ロデリアから現れた……この黒騎士の力は、確かに異常過ぎる。



 

 皇国軍の大軍を殺す事無く蹴散らし、かと言えば異端審問官を超常の力で一撃の元に殺す。

 


 振るう力は、簡単に城壁や城壁塔を破壊し……兵舎を指先一つで軒並み切断して見せた。


 しかも、この黒騎士は巨大な白き船を操り……白い龍を配下に従える。



 その力と技は……正しく、白き神そのものだ。無論、その事はヒドラ自身も……感じて無い訳では無かった。



 だが……異端審問官長官として、断じて認める訳にいかなかった。ロデリアから来訪した……白き神を超える存在を。



 認めてしまえば……今まで白き神に盲信し、全てを尽くして来た自分自身が、根底から壊れてしまう、その様な漠然とした恐れが……ヒドラの中に在ったのだ。



 だからこそ……完膚無くまで黒騎士レナンを滅ぼす必要が有った。



 そんな恐れから、何の策も工夫も無く……何度も放たれる強烈なエーテル波。


 

 一騎当千の力を持つ異端審問官9人分の攻撃は、一撃でも受ければ一個中隊の歩兵でも殲滅出来るだろう。



 皇城の大広間で放つ様な攻撃では無かったが、冷静さを欠いていたヒドラは……神の敵、黒騎士レナンを滅ぼせるなら皇城など、どうでも良かった。



 しかし……。



 “バシュン!!”



 何度攻撃しても、黒騎士の通る事は無かった。


 何故ならば、放たれた光の矢は……全てレナンが纏う鎧に吸収されてしまうからだ。



 「ぜぇ、ぜぇ……何故だ、何故……殺せない……」



 持てる力を振り絞って攻撃するも、全く意味が無い事に絶望しヒドラはうわ言のように呟くと……レナンは世間話をする様に話し掛ける。



 「異端審問官長官ヒドラ……。お前は俺に言ったな……白き神とやらの姿を。そして、圧倒的な力に、人知を超えた技を持ち……伝説の龍に近しい姿に変化出来ると……」


 「そ、そうです! それが……どうしたのです!? ロデリアの黒騎士め! 醜い鎧を纏った、お前とは比べ物に成らない至高の存在! だからこそ、私は神の敵である、お前を討たねば!」


 

 静かな声で語る黒騎士レナンに、ヒドラ長官は……聞く耳を持たないと言った様子で叫ぶ。



 「ヒドラ長官、そして皇帝ユリオネス……。お前達は、考えるべきだったのだ。……自分達が崇めていた奴らが、どんな存在だったかを。

 多くの者を犠牲にしてまで……信じるに値するかどうかを……。お前達は深く考え様ともせず……守るべき価値ある者達を、多く殺してしまった」


 「……黒騎士様……」


 

 穏やかで、諭す様な口調で話す、黒騎士レナン。その声は偽装された低い声では無く、若い元の声だ。


 レナンの言葉を聞いた皇女エリザベートは、彼の秘めた想いを感じて呟く。


 

 「……長きに渡り……ゼペド達、白き偽神を盲信し……自国だけに留まらず、他国の罪無き者達を無数に殺した……お前達はもはや、許されない。そんな愚かなお前達に、真実を教えてやる。

 お前達が信じていた……ゼペド達、白き偽神は……本当に救い様の無いカスだったぞ?」


 「な、何を!! 何をほざくか! 白き神の敵めが!!」



 静かに語りながら、最後にヒドラと皇帝ユリオネス達を煽ったレナン。


 その彼の言葉を聞いたヒドラは、到底受け止める事が出来ず、血管が切れそうな勢いで叫ぶ。



 そんな、異端審問官長官ヒドラに……黒騎士レナンは囁く様に話す。



 「異端審問官長官ヒドラ殿……。自らの信仰が試される時だぞ? 括目して……自らが神の敵と、散々罵った者を見るが良い。……アーマー解除」


 

 ヒドラに向け、囁く様に問うた黒騎士レナン。



 彼は、語った最後に……自らを縛る戒めにして誓いの漆黒の鎧を解除する。


 “ヴオン!”


 黒騎士レナンが呟いた後……低い音と共に彼の体を真黒い粒子が包む。



 そして瞬く間に凶悪な漆黒の鎧が消え去り……黒いボディスーツを着たレナンが姿を現す。


 その場に現れた……呪われた恐ろしい鎧を外した、レナン。


  

 「「「「「…………」」」」」



 本来の素顔と姿を、皇女エリザベート達やヒドラ等に現した黒騎士レナン。その姿を見た誰もが、絶句して固まっていた。



 漆黒の鎧を外して見せた、黒騎士レナンの姿は……。

 


 強制強化の影響により、背が高く筋骨隆々とした身体付きと……二重瞼に大きな瞳を持った、幼さが残るが非常に整った顔立ちをしていた。



 凶悪な鎧から、かけ離れた眉目秀麗なレナンの素顔に……皆が驚き一瞬、心を奪われたが……。



 ヒドラや皇帝ユリオネスを含むその場に居た、全員が……驚愕の余り、絶句して固まっていたのは、別な理由が在った。



 何故なら……そこに居たレナンは――。



 素顔を見せた彼……。その髪は輝く美しい銀髪で……抜ける様に白い肌を持ち……その瞳は夕暮れ時の空の様な茜色をしていたのだ。


 


 まさに、レナンの本当の姿は……異端審問官長官ヒドラが、得意げに語った……白き神、そのものだった。



 その白き神と全く同じレナンの素顔を見た……異端審問官、そして皇帝ユリオネスと配下の者達は……一斉に跪く。



 “ザッ!”



 対して異端審問官長官ヒドラは……この世の終わりの様な顔を見せ、狼狽して、冷や汗を大量に流しながら……立ち尽くすばかりだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は3/2(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ