表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
318/370

318)ギナル皇国侵略戦-31(玉座の間にて)

 現皇帝ユリオネスが居る玉座の間の門を、蹴破って破壊した黒騎士レナン。



 「ぶ、ぶぶぶ無礼者!! こ、ここに居られるは皇帝陛下なるぞ!?」

 「……ああ、知ってる。今から、そいつを殺す心算だから」



 門を蹴破って玉座の間に入った黒騎士レナンに向け、皇帝ユリオネスの臣下が大声で叫ぶが……レナンはさも当然の様に言い放つ。


 レナンの後ろには、皇女エリザベートが続き、彼女を守る様にラザレ達が囲む。リベリオンやオニルの操るドローンは一行の背後に控えていた。



 踏み込んだ玉座の間は、贅を凝らした絢爛豪華けんらんごうかな造りで、最奥の王座にでっぷりと太った、ちょび髭の皇帝ユリオネスが怯えた様子で座る。



 ユリオネスの周りには、烏合の如き臣下達が集まり……彼等の前には近衛騎士が護衛の為10人程立っていた。


 皇帝ユリオネスと臣下達は、突入した黒騎士レナン達に酷く恐れている様だ。



 黒騎士レナンは、静かに玉座の間を歩みながら……皇帝ユリオネス達に向け告げる。



 「……皇帝ユリオネス……それと、配下のお前達……。ゼペド等白き偽神に付き従い、無数の罪無き者達を、虐げ殺した罪……余りに重い。今、この場で……纏めて引導を渡してくれる」


 「こ、皇帝たる余に! 何たる……ふ、ふふ不遜! 余は、余は白き神の加護を受けし帝王! 這い蹲って、こ、頭を垂れよ!!」



 ユリオネス達に言い放ったレナンに、皇帝ユリオネスは上ずった声を上げる。




 そんな皇帝に、黙って居られない者が……黒騎士の前に歩み出た。



 「……御久し振りです、叔父上……。我が父を追いやって、手にした皇帝の座……随分と座り心地が良い様ですね?」



 そう言ってレナンの前に立ち、皇帝ユリオネスを痛烈に皮肉ったのは、皇女エリザベートだ。



 皇女がレナンの前に立つと……彼女を守る様に指示を受けている、白き龍リベリオンが並び立つ。


 前に出て皇女の横に立つ、白き龍リベリオンを見た……皇帝の臣下達は恐怖で叫んだ。



 「ひぃぃ!! 此処に、あの龍が!」

 「な、何と恐ろしい!!」



 騒ぐ臣下達に混じり、皇帝ユリオネスも黒騎士とリベリオンに怯えながら、エリザベートに向かい叫ぶ。



 「な、何だ、お前は!? 町娘如きが、余に意見するとは烏滸がましい! し、しかも……恐ろしげな龍を引き連れるとは面妖な! さ、さては……その黒い騎士の手下か!? 者共、この者達を討ち滅ぼせ!」



 ユリオネスは恐怖で上ずった声を上げ、自分の周りに居る近衛騎士達に向かい命ずる。


 命令を受けた近衛騎士達は、極度に緊張した面持ちで黒騎士レナンと、皇女エリザベートの前に武器を構えて並ぶ。



 「お、お前達! 控えよ! 此処に居られるのは、先代皇帝アドニア陛下の御息女! 皇女エリザベート殿下なるぞ!!」



 近衛騎士達がエリザベートの前に、武器を構えて並び立ったのを見て、ラザレ将軍が躍り出て声を上げる。



 「あ、貴方はラザレ将軍!? 何故、黒い騎士と共に!?」

 「それに、エリザベート皇女殿下!? 一体、どう言う事だ!?」

 「あの娘がそうだと言うのか……!? だが、あの娘は確か、厨房で働く……」



 ギナル皇国の将軍であるラザレの言葉に、近衛騎士だけでは無く、その場に居た臣下達も大いに混乱する。



 そんな中……。



 「おやおや……これはラザレ将軍では有りませんか……。攻め込んで来た黒騎士を倒す所か……寝返るとは、とんでもない裏切者ですね? しかも、厨房の娘を皇女と担ぐとは……救い様が無い」



 皇帝ユリオネスの背後から、陰湿な声を掛けたのは……細長い体に、嫌らしい目を持つ異端審問官の長官ヒドラだ。



 「ヒドラ……!」


 「ヒドラ長官! 貴方は将軍であるラザレ閣下に、異端審問官ヤマチを急襲させ、魔獣を皇都に放つ等の非道! 許せる事では有りません! しかも……皇女殿下にも異端審問官に襲わせるなど……言語道断!! 恥を知りなさい!」



 ユリオネスの前に立ったヒドラ長官を見て、ラザレは忌々しそうに名を吐き捨てる。


 女性騎士ネビルは、度重なるヒドラの非道に黙って居られず、大声で叫ぶ。


 

 「貴女は、確かネビルとか言う騎士ですね? ラザレ将軍に引っ付いて廻る、金魚のフンらしく……将軍の妄言を広めるのは止めて下さい。

 一体何処に、皇女殿下が居られると言うのですか? 貴女達が、この玉座の間に連れて来たのは……薄汚い厨房の小娘。そうでしょう、ユリオネス陛下?」


 「う、うむ……白き神が不敬の罪で我が兄、先代皇帝アドニアを始末した際、余以外の皇族を殺したのは……他でも無い、白き神の命を受けし……お前達では無いか。

 アドニアが娘……エリザベートは輝く様なプラチナブロンドの美しい娘だった……。生きておれば、麗しい公妾となったろうに……。

 その赤毛の娘とでは、エリザベートと比べ物にならぬが、余の妾になるならば……不敬の大罪見逃してやらんでも良いぞ? フヒヒ!」



 ヒドラは叫んだネビルに小馬鹿にした後、後ろを向き皇帝ユリオネスに問う。問われたユリオネスは嫌らしい顔を浮かべながら答えた。

 


 「おぞましい……! 叔父上、貴方が我が父アドニアに成り代わり、皇帝である事が……皇国の恥です!」



 嫌らしい顏で、舐め回す様に自分を見る皇帝ユリオネスに向け……皇女エリザベートは唾棄する様に吐き捨てる。



 そんな状況を見ていた、黒騎士レナンは……傍らのオニルに向け呟く。



 「オニル、皇女殿下の偽装を解いて差し上げろ」


 「はい、マスター」



 レナンの指示を受けたオニルが答えた瞬間、エリザベートが光に包まれる。



 “カッ!”


 「え!? ちょっと……!」

 「皇女殿下!?」



 光に包まれたエリザベートは驚きの声を上げ、傍らに居たガストンも叫ぶ。しかし……光は一瞬で止み……光に包まれていた皇女エリザベートが姿を現す。



 そこに現れたのは……染められた赤毛が、元の美しいプラチナブロンドとなった皇女の姿だった。



 しかも、何処からか転送させたのか……煌びやかなドレスに皇女は身を包んでいた。


 特徴的なプラチナブロンドは短くなっていたが……その場に居たのは、間違いなく成長した姿の皇女エリザベートだった。



 「おお! な、何と美しい!」

 「ふわ~ 皇女様って感じ~」

 「正に、在りし日の御姿です!」



 偽装を解かれた美しい髪と、見事なドレスに身を包んだ皇女エリザベートを見て、ラザレやフワン、ガストン達は喜びの声を上げる。



 対する皇女は、自分の許可なく勝手に着替えさせられ、髪の偽装を解かれた事に……レナンへ向け恨めしい目を向けていたが、当の彼は一向に気にしていない様子だ。



 目の前の少女が、紛う方なく皇女エリザベートであると理解した、近衛騎士達は……一斉に跪く。



 そして、流石に……この男も厨房の小娘と思って蔑んでいた者が、本物の皇女で在る事を理解した様だ。



 「!? お、おお前は!! エ、エリザベート!! い、生きていたのか……!?」


 「……叔父上……白き神の威を借りて、暴政を敷く貴方は皇帝に相応しく在りません……! 即刻帝位を退きなさい!!」



 死んだと思っていた皇女エリザベートの出現に、皇帝ユリオネスは狼狽え叫ぶと、エリザベートは毅然と退陣を言い放つのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は2/23(水)投稿予定です、次話も宜しくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ