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312)ギナル皇国侵略戦-25(黒騎士降臨)


 地下水路にて……異端審問官トネギが操る水に囚われていた、給仕係のナミ。


 トネギは、ナミの命を盾に皇女エリザベートを脅し、捕えようとする。


 窮地に陥ったエリザベート達だったが、一級冒険者であるフワンの活躍によりナミを奪還した。

 


 気を失ったナミを皇女エリザベートは、地下水路の通路に寝かせて介抱し……フワンはそんな皇女を守るべく、傍に立つ。



 ガストン達配下の者達は、介抱する皇女エリザベートを背にして、異端審問官のトネギに向かい武器を構え対峙した。

 


 ガストン達に武器を向けられた異端審問官のトネギは……。



 「……ああ! せーっかく、スマートに済まそうと計画してたのに! ナミちゃんかキリアちゃんを使って、皇女殿下を捕え! その上で、白き神の背信者達を纏めて皆殺しする心算が! 全部台無しだよ!」



 人質であるナミを奪還されたトネギは、頭を抱えて盛大に悔しがる。



 「お前は、もう終わりだ! 皇女殿下を陥れようとした不敬! 死んで報いて貰う! 皆の者、異端審問官を倒すのだ!」



 ガストンは、悔しがるトネギに向かい叫ぶと、剣で斬り掛かる。ガストン以外の配下も、彼に従い一斉にトネギに襲い掛かった。



 「スマートじゃ無いけど……力技で押し切ろうかぁ!!」



 ガストン達が斬り掛かって来るのを見た、異端審問官のトネギは両手を広げて叫ぶ。すると…。

 

 “ズアァ!”



 トネギの背後で地下水路の水が持ち上がり、大きな塊りとなった。そして、膨らんだかと思うと、風船の様に弾け散る。


 “ザザザン!”



 飛び散った水は、鋭い刃となって……トネギに迫っていたガストン達に襲い掛かった!


 「ギャア!」「ウギャア!」



 水の刃を受けたガストン以下配下の者達は、悲鳴を上げて倒れてしまう。体中に深い切り傷を受けたガストン達は重症を負った。


 先行したバリー達を倒したのも、トネギが放った水の刃だろう。



 「ガ、ガストン!? 皆!!」

 「ジル姉! 近付いたらダメだよ!」


 倒れたガストン達を見て、皇女エリザベートは悲痛な声を上げて彼等に駆け寄ろうとしたが、横に居たフワンに制止された。


 トネギに近付けば、エリザベートを攫われると判断した為だ。



 「……あっと言う間に形勢逆転しましたねー。この俺はねぇ……偉大な白き神への信仰によって、水を操れるんですよ。だから、皇女殿下……貴女が俺の策通りに地下水路に来た時点で、最初から貴女に勝ち目は無いんですね。

 貴女達の敗因は、白き神への背信です……。皇女とは言え、下等な貴女が……神に逆らう等、所詮は無駄な事……。

 ヒヒヒ! 貴女が素直に俺の所に来れば……ナミちゃんやフワンさんを殺さないと約束しましょう……」



 ガストン達を倒した異端審問官のトネギは、勝ち誇った顔でエリザベートに話す。



 しかし……皇女エリザベートが答える前に、フワンがトネギの前に立ち言い放った。



 「お断りだよ。貴方にジル姉は渡さない」

 


 エリザベートを庇う様に、フワンは彼女の前に立ち……短杖を構える。


 絶対的に不利な状況の中、フワンはエリザベートを守る為、戦う覚悟の様だ。



 「フ、フワン! 無茶は止めて!」


 そんなフワンにエリザベートが悲痛な声を上げ制止する。



 「おやおや、洗い場の小娘如きが……随分と威勢がいい。どうやら、身の程が分っていない様ですね。軽く捻り潰して……。俺自身の手で優しく、じっくりと異端審問を受けて貰いましょう。そこに居るナミちゃんと一緒にね! キヒヒ!!」


 「それも、お断りだよ! この身は全てキース君のモノなんだから! 貴方は何も知らない様だから教えてあげる。この世に、悪の栄えた試しは無いんだよ!」



  毅然と言い放ったフワンに対し、異端審問官トネギが嫌らしい顏を浮かべて叫ぶが……彼女は折れなかった。

 

 フワンは力強い笑みを浮かべ答えたが、異端審問官のトネギは彼女を見下し叫ぶ。



 「何を馬鹿な事を……。己が無力を思い知りなさい!」



 トネギの叫びと共に、またも地下水路の水が生き物の様に、独りでに動いて大きな鞭となり……立ち塞がるフワンを薙ぎ飛ばした。


 “ズバン!”


 「あぐぅ!」


 薙ぎ飛ばされたフワンは、地下水路の壁に激突し通路に転がる。



 「フワン!!」


 通路に転がったフワンに、皇女エリザベートは叫びながら駆け寄り、彼女を抱きかかえた。



 「……これで残るは貴女一人……。さっさと此方に来て貰えれば、無駄な犠牲を出さずに済んだものを……。今なら、お仲間も助かるでしょう。諦めて……さっさと此方に来て下さい。逆らえば……皆さんがどうなるか、分るでしょう?」



 異端審問官トネギは勝ち誇った表情で、皇女エリザベートに語る。トネギの背後には操られた水が塊となって攻撃準備を整えていた。



 そんな中……皇女エリザベートに抱かかえられたフワンは、意識朦朧としながら彼女に訴える。

 


 「……ジ、ジル姉……大丈夫……。愛と正義は……最後は必ず勝つんだから……」

 「フワン……」



 フワンの言葉を聞いた皇女エリザベートは……彼女の想いを受け、立ち上って言い放つ。



 「異端審問官トネギ……。私を守る為に戦ってくれた者達の為にも……皇女エリザベート・メアリー・ド・ギナルとして……貴方の脅しに屈しません。皇女として、貴方に命じます。即刻武装解除して……降伏しやがれ、クソ野郎!!」



 「……ヒヒ、ヒヒヒ!! 馬鹿か、この皇女様は! お前は、とんだ大馬鹿女だよ、ジル、いいや! エリザベート!! 仕方無い、お前自身の手足をぶち抜いて、半殺して連れてくしかねぇよな!!」

 


 エリザベートが皇女として決意を込め、ジルの口調で叫ぶ。


 その叫びを聞いた、異端審問官トネギは大声で吠えると……地下水路の水が、刃となって放たれ彼女に襲い掛かる。


 ”ザザァ!”



 その時――。



 “アギャ!”



 どこからか、先程も聞こえた動物の鳴き声が響く。そして……。


 “ドドドン!”


 水の刃が命中する音が響き、水しぶきが飛び散った。



 しかし、水の刃が命中したのはエリザベートでは無い。エリザベートの前に突然立ち塞がった、大きな白い龍だ。

 


 「!? し、白い龍……!? これが……バリー報告に有った……」


 「アギャ!」



 皇女エリザベートは、自分を守った白き龍リベリオンを見て驚き声を上げると、リベリオンは彼女の方を振り返って返事をする様に一声鳴いた。


 白き龍リベリオンの横には、丸っこい機体をしたドロイドが一体浮かんでいる。AIのオニルが操るドロイドだろう。


 リベリオンはトネギが放った水の刃が直撃した筈だが、傷一つ負っていない。



 「な、何だ!? コイツら、一体! ど、何処から現れた!?」

 


 自分の攻撃が防がれた異端審問官のトネギは、狼狽して叫ぶ。



 「無知な貴方にお答えしましょう……。私とリベリオンは、マスターの指示を受け……貴方達、ゼペド達自称白き偽神の配下から皇女殿下を守る為に、彼女に付き守護していました。

 厨房で皇女が演じていたジル・リードに、貴方が追い出される時にも……既に我々は皇女の近くに居ましたよ。

 もっとも……事情を把握していない皇女を、混乱させない様に……今迄は空間を歪曲して姿を消していましたが」


 「何を訳の分らない事を! 増援が来たのなら、今一度倒すまで!!」


 狼狽しながら叫んだトネギに、AIのオニルは淡々と事実を告げる。



 どうやらリベリオンとAIのオニルは……皇女エリザベートが厨房に居た時から、彼女を守る為に傍に居た様だ。


 対するトネギは、混乱しながら大声を上げ叫ぶ。すると地下水路の水が集まり、大きな塊となった。


 

 しかし、AIのオニルは抑揚の無い人工音声でトネギに告げた。



 「もう一つ、無知な貴方に教えましょう。異端審問官トネギ……残念ながら、貴方の無価値な生涯は間も無く終焉となります。

 何故なら……最強にして至高の存在である、我らがマスターが、此処に降臨されるからです」



 オニルが異端審問官トネギに向け、静かに答えた直後だった。



 “ズビュン!”



 異端審問官トネギの頭上でおかしな音が響く。トネギや皇女エリザベートが音の方を見ると、地下水路の天井に光の刃が突き出ている。



 次の瞬間、光の刃は眩い光を放った!



 “キュキュン!!”



 光の刃が眩い光と共に甲高い音を立てて炸裂したと同時に、天井に大穴が生じる。



 そして……突然開いた大穴より、凶悪な漆黒な鎧を纏った黒騎士が、ゆっくりと降りて来たのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は2/2(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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