表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
306/370

306)ギナル皇国侵略戦-19(時代遅れの兵器)

 皇城に入った途端、毒ガスを操る異端審問官モズに襲われた黒騎士レナン。


 モズが放った毒ガスは、能力によって操られ輪となってレナン達を囲む。



 輪状にレナン達を取り囲んでいた緑黄色の毒ガスは、あっと言う間にレナンとラザレ達を包んだ後、半球体となってその場に留り続けている。



 「口程にも無い奴よ! だが、念には念を入れ……更に追加をくれてやろう! 喜ぶが良い!!」



  半球体となった毒ガスの塊に包まれたレナン達を見て、異端審問官のモズは嬉しそうに叫び、持っていた容器から更に毒ガスを放出する。


 ”ボシュウ!”


 放出された毒ガスは広がらず、不定形の生き物の様に動き、留まっている毒ガスの塊りと合わさった。



 集められた毒ガスは更に濃い緑黄色となり、包まれたレナン達の様子は外部から見えない。


 毒ガスが留まる床は白い煙を上げ腐食している事より、内部に居る者達は無事とは思えなかった。


 

 異端審問官のモズは、毒ガスに包まれたレナン達を見て、絶命したと確信し呟く。


 「神の敵は始末した……。後は、皇女拘束の支援に向か……」


 「……もう終わりか?」


 モズが呟いている途中で、黒騎士レナンの声が響く。


 濃い緑黄色の毒ガスが留まり、不透明な気体の塊の中よりレナンの声は聞こえた。



 「何だと!? 全てを侵す聖なるかすみに晒され、生きている筈が……!」


 「……本当に、バカらしい……」



 驚愕した小柄な男の叫びに、黒騎士レナンは心底呆れた様子で呟く。


  "キュン!!"


 直後……甲高い音と共に、レナン達をすっぽりと包んでいた緑黄色の毒ガスが、急激に集束され始めた。



 濃い毒ガスの所為で、様子が見えなかった黒騎士レナンが姿を見せる。



 強力な腐食性と猛毒の毒ガスに、すっぽりと包まれていたにも関わらず……レナンは何の損傷も受けず、全くの無傷だ。



 レナンだけでなく、横で浮かんでいたAIのオニルや、後ろに居たラザレとネビル、そして彼らを守るリベリオンも無事だった。


 良く見れば、黒騎士レナンやオニルとリベリオンは薄い光が、その体を覆っている。


 どうやら、体表面に張られた薄い光が毒ガスを無効化した様だ。ラザレとネビルは最初に展開されていた障壁に守られていた。



 そんな中、レナンは右手の平を上に向けて差し出していた。その手の平に彼を包んでいた毒ガスが集束され続け、小さな立方体へと形作られる。


 散布された毒ガスを全て、手の平の立方体に集束させた黒騎士レナンは小さく呟く。



 「凍り付け……」



 すると……毒ガスを集束させて出来た立方体は、一瞬で凍り付き固体となった。



 「……これで良い。オニル……これを回収し、この場一体を中和しろ」

 「はい、マスター」



 レナンの指示を受けたオニルは、手の上の立方体を亜空間へと送った後……自らが操るドロイドの体より、光を照射して毒ガスで侵された場を浄化する。



 「な、何をした!? 聖なるかすみはどこへ!? そ、それより何故無事でいられる!?」


 「オニル」



 散布した毒ガスが全て消え、しかもレナン達が何事も無かった事に驚き、異端審問官のモズは叫ぶ。


 問われたレナンは、自らが答える気にならずAIのオニルに促す。



 「はい、マスター・マスターに代わり無知な貴方に設明致しましょう。散布された化学兵器の毒ガスはマスターの精神感応力、いえ貴方達に合わせて魔法と言い換えた方が良いでしょうか……。

 貴方が散布した、毒ガスはマスターの魔法によって、集められ高圧と冷熱を与えられて……気体から液体、そして氷結し固体へと状態変化されましたので……その上で、私が亜空間へと転送させて頂きました。

 また……貴方が散布した毒ガスですが、自動展開された障壁により、無効果されました。もっとも……仮にマスターやリベリオンが毒ガスを直接浴びたとしても、マスター達の体内に存在するナノマシンによって、直ちに毒性を中和すると共に肉体の修復を行うので、元より大した効果はありません。

 そんな時代遅れの兵器で被害を受けるのは、貴方達アステアの原住民位でしょう。だからこそ、ゼペド達はその兵器を貴方達に与えたのだと考えられます」


 「な、何を訳の分からない事を言っている!? 背信者が戯言を抜かすな!! 白き神より賜った、聖なるかすみは神の敵を倒す為の聖物! 背信者を滅ぼすまで、何度でも浴びせよう!!」


 レナンに促されたAIのオニルは淡々と事実を伝えたが、異端審問官のモズは混乱し、激高する。


 モズはオニルの設明を理解しようともせず、持っていた容器から毒ガスを再度散布した。



 散布された毒ガスは、モズに操られて、意志を持った生き物の様にレナン達を包もうとする。



 それを見た黒騎士レナンは小さく呟く。



 「……させん」



 レナンが呟くと同時に、異端審問官モズの周りに光の輪が囲む。


 ”キィン!”


 前後、左右として頭上、全部で5つの光の輪が一瞬でモズの周りに現われたのだ。



 そして、次の瞬間……。



 “ズキュ!!”"


 光の輪は集束し、刃となって5方向からモズを貫いた!



 「ひぎぃ!!」



 脳天と、体の4方向から光の刃で貫かれたモズは、断末魔の叫びを上げ絶命し倒れる。



 "ブシュー!"


 モズを貫いた光の刃は、彼が持っていた毒ガスの容器も同時に貫いた様で、毒ガスが吹き出した。



 その様子にレナンは静かに右手を差し出すと……吹き出した毒ガスと共に、モズが先程放散した毒ガスが、意志を持った様に動き出す。


 そしてレナンに依って操られた毒ガスは、倒れたモズを中心に半球状に集められた。



 集められた為か、緑黄色の毒ガスは濃度が高く、包まれたモズの死体の様子は全く見えない。



 しかし……毒ガスが触れている床から白い煙が上がっている事より、死んだモズは原形を留めていないだろう。



 自らが操っていた毒ガスに包まれているモズの様子を見て、ラザレとネビルは青い顏を浮かべ固まっていた。


 しかし黒騎士レナンは、そんなモズの死に様を一切構う事なく、オニルに指示を出す。



 「オニル、奴の死体ごと毒ガスを亜空間に放り込み、ここを浄化しておけ」

 「はい、マスター」



 レナンの指示を受けたオニルは、半球体に集められた毒ガスと、その中にあったモズの死体を亜空間に転移させた。


 その上でドロイドのボディより、再度光を照射して広く腐食した床を中和する。



 そんな中、レナンは異端審問官のモズが言った事を懸念して……ラザレとネビルに声を掛けた。


 「……先に皇帝を始末してから、皇女の元へ向かう予定だったが……そうもいかない様だ。先に皇女を助けに行くぞ」


 「無論だ。 当然私も共に行く!」

 「も、もちろん、私も です!」



 レナンの言葉に、ラザレとネビルは力強く答えた。


 「……なら急ぐぞ」



 そう言った黒騎士レナンは早足で歩き出すのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ