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299)ギナル皇国侵略戦-12(リベリオン)


 “ゴゴオオン!!”



 黒騎士レナンが指先から放った光の斬撃で、斜めにカットされた兵舎は広範囲で音を響かせ崩壊する。


 その崩壊により無事だった周りの兵舎も、激しく揺り動かされた。



 兵舎の屋根に居た異端審問官のヤマチも揺れる兵舎に、姿勢を崩し落ちそうになり屋根にしがみ付く。


 崩れ落ちた兵舎の上に居たゴウライヒヒは、何体かそのまま落ちて崩壊した兵舎に埋もれてしまった様だ。



 そんな中……指を軽く動かしただけで、これだけの破壊を引き起こした黒騎士レナンは、彼に近付いて来た、AIのオニルに向かい恐ろしげな兜に手をやり、困った様子で小さく呟く。



 「……猿だけ切って捨てるつもりが……加減してコレでは、リミッターの解除は出来ないな……」


 「マスターのリミッター解放率は2割程度でしたが……対象の魔獣が脆弱過ぎた様です。現状の解放率でも都市ごと魔獣を一掃出来ますが、試されますか?」



 秘めたる恐るべき力を、僅かに開放した黒騎士レナン。


 彼は軽く指先を振っただけで、ゴウライヒヒ三体を背後の兵舎と共に切り裂いてしまった。



 レナンは魔獣だけを切り裂くつもりが、後ろに建ち並んでいた兵舎を、軒並み切り崩してしまった事を悔やむが……AIのオニルには空気を読まず更なる破壊を勧める。




 「……か、軽く……指を振っただけで……この破壊……。武器すら要らないのか……。こ、この者ならば……白き神を……本当に……」


 「…………」



 AIのオニルによって張られた障壁の中でラザレは……驚きの中、確信を持って呟く。


 だが、横にいる部下のネビルは、目の前の出来事が今だ信じられないと言った様子で、口に手を当て青い顏を浮かべて呆然としていた。



 「バカな、バカな!! こんな事が在っていい筈がない!! お、お前達!! や、奴を、奴を! 黒騎士を殺せ!!」



 異端審問官のヤマチは広く切り崩された兵舎と、あっと言う間に難なく殺されたゴウライヒヒの無残な死体を見て、激しく狼狽して叫ぶ。


 揺れが収まって立ち上がれた事で……改めて現状を目の当たりにし、困乱と怒りの感情が収え切れなくなり呼んだ様だった。



 ヤマチの叫びを聞いた黒騎士レナンは面倒臭そうに呟く。



 「……雑魚を相手にやり過ぎてもバカらしい。……オニル、この場は兄弟達に任せる。二体程出してくれ」


 「はい、マスター」


 ”ヴヴン!”


 黒騎士レナンの指示にオニルが答えると、レナンの前に光の円が2つ生じて、その中より全高3m程の白い龍が二体現われる。


 それは……レナンのDNAを与えられて生み出された、白き龍リベリオンだった。



 現れたリベリオンは龍の顔に人懐っこい目を持つが、長い尾と筋肉質の頑強な身体つきをしていた。


 二体の白き龍リベリオンは、その体に金属製の鎧を纏っている。



 リベリオンは黒騎士レナンを見ると、2体共静かに彼の前で跪いた。



 そんな中、ヤマチの指示を受け、レナンに向け襲い掛かって来たゴウライヒヒが迫る。


 10体のゴウライヒヒが群れとなってレナンに肉薄しようとしたが……。



 “ゴゴオン!!”



 ニ体の内、一体のリベリオンが電光の様に素早く動き、迫っていたゴウライヒヒ目掛けて長い尾を振り、纏めて薙ぎ倒した。


 もう一体のリベリオンは、じっと主であるレナンの前で跪いている。



 襲って来たゴウライヒヒなど、彼等圧倒的な力を持つリベリオン達にとって、二体揃って構う必要のない雑魚でしか無かった様だ。



 何故ならば、ヴリト王族として超越した戦闘力を持つレナンのDNAが与えられた白き龍リベリオンは……たった一体でも、ロデリア王都を滅ぼした黒き龍レギオンを遥かに凌ぐ強さを持つ。


 例えゴウライヒヒを数万体を相手にしても、リベリオン一体で簡単に殲滅出来るだろう。



 尾を一振りして10体のゴウライヒヒを吹き飛ばしたリベリオンが、黒騎士レナンの前に戻ると、跪いていたリベリオンもスッと立ち上がった。


 そして黒騎士レナンを守る様に、2体のリベリオンは並び立つ。




 「し、白い魔獣……あ、あの姿……まさか……お伽噺の……龍!?」


 「……白き神は、黒い龍を使役すると聞いた事がある……。黒騎士は白い龍を使役するのか……。やはり……この黒騎士は……!」



 白き龍リベリオンを見て、女性騎士ネビルは慌てふためいて驚き、ラザレは白い神の噂を思い出して呟く。


 そんな二人を余所に黒騎士レナンは、二体のりべリオンに指示を出す。




 「……お前達の力……奴らに見せてやれ、但し街を壊さん様にな」

 「「アギャ!」」



 二体のリベリオンにレナンが声を掛けると、彼らは頷いて短く鳴いて答えた。


 そして矢の様に駆け、薙ぎ倒したゴウライヒヒに襲い掛かる。



 恐るべき速さで突進したリベリオン達は、今だ倒れたままのゴウライヒヒに一瞬で詰め寄ると、筋肉の塊の様な魔獣を蹂躙していく。



 二体の内、片方のリベリオンは、自分と同じ大きさのゴウライヒヒの頭を片手で掴んだかと思うと、軽々と持上げ……そのまま魔獣の頭を果実の様に握り潰して絶命させた。



 次いで、そのリベリオンが、両手を広げると途端に鋭い爪が真白く輝く。


 白く輝いた爪で持って他のゴウライヒヒを薙ぐと……魔獣は生々しい肉の断面を見せて斬り裂かれて死んだ。


 その爪はリベリオンがレナンによって与えられた能力の1つで、エーテルを込めると真白く輝き、分厚い鋼鉄すら難なく切断出来る様になる。


 切断能力は両手だけでなく、鋭い牙や両足と尾にも付与されており、全身に鋭すぎる刃が装備されているのを意味していたのだった。



 ゴウライヒヒを握り潰し、斬り裂いたリベリオンは次なる攻撃を繰り出す。



 「アギュ!!」



 瞬く間に仲間が惨殺されて戸惑う、他のゴウライヒヒに向けてリベリオンの一体が、短く鳴くと……。



 “ズキュ!!”



 いきなり地面から尖った棘が生成されて、4体のゴウライヒヒを串刺しにして絶命させる。



 4体のゴウライヒヒを貫いたのは、土系中級魔法の地狼牙だ。この魔法は地面より刃の様な棘を生み出して対象を貫き滅ぼす魔法だった。



 リベリオンは、無詠唱かつ極めて短い時間で魔法現象を起こして、ゴウライヒヒを纏めて殺して見せた。


 黒騎士レナンのヴリト王族としての血を分け与えられたリベリオンは、強大な戦闘力と、再生力を持つが、それ以外に高い知能と圧倒的なエーテル発動力を有している。



 それにより、龍の身で在りながら人間と同じく、否……人間よりも強力な魔法現象を無詠唱で発動出来るのだ。



 高い知能を持つリベリオンは、魔法現象を無詠唱で発動出来るだけでは無く、各個体がテレパシーで主であるレナンと、AIのオニルと繋がっている。


 従って言葉を介せず、距離も時間も関係無く指示とサポートを受ける事が出来た。


 各個体がテレパシーで繋がっている事で、戦況の変化と俯瞰的な情報を共有する事を可能にしている。



 だが、リベリオンのもっとも恐ろしい点は、ゴウライヒヒを圧倒出来る膂力でも、鋼鉄を斬り裂く刃でも、無詠唱の魔法でも無かった。


 それは彼等リベリオンが、黒騎士レナンより与えられた破滅の力だった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は12/19日 投稿予定です、宜しくお願いします!

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