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295)ギナル皇国侵略戦-8(一騎打ち)

 大隊長オゼを含め、纏めて数十人が倒れて動かなくなったのを尻目に、レナンは残っているギナル兵に向け追撃する。



 凶悪な黒い鎧は金属の塊のような重厚感が在ったが、其れを纏う黒騎士レナンの動きは、風よりも素早かった。



 瞬間的に姿を現したかと思うと、大剣を振るい峰打ちでギナル兵達を倒すレナン。


 彼が一振りすると、纏めて十数人のギナル兵が倒されていく。倒した瞬間、その姿は搔き消え、別の場所に突如現れて次の標的を叩きのめす。



 一分も掛からない内に、オゼが鼓舞した100名程の残存ギナル兵達は……地に伏して動かなくなった。



 気が付けば……残るは大隊を率いたラザレ将軍と、その部下で女性騎士ネビルの二人だけになっていた。



 ラザレはギナル皇国の将軍として、黒騎士レナンを皇城へ行かせる訳にいかなかった。



 従って、たった一人でも黒騎士レナンを討つ心算だった。ラザレ将軍は、腰のブロードソードを抜くと、盾と共に構え……皇城を背にレナンに向かい立つ。


 「か、閣下! ここは撤退致しましょう! き、危険です!」

 「……ネビル、お前は皇城へと向かい、賊の侵入に備えよ」



 あくまで黒騎士と戦おうとするラザレに対し、部下のネビルは逃げる様に進言するが、彼は断り、ネビルだけ下がるよう指示した。


 そんな二人のやり取りを無言で見つめながら……黒騎士レナンは、皇城への進路を守るラザレの前に立つ。



 黒騎士レナンは、全てのギナル兵を無力化したにも関わらず、全く疲れた様子も無く……散歩する様な気軽さでラザレに問う。



 「……どいてくれないか……? この国を滅ぼす為に、殺したい奴が居るんだ……」


 「この皇国を滅ぼすと言われて黙って退くと思うか!? 断わる!!」



 落ち着いた声で呟いたレナンに、ラザレが大声で言い切った。ラザレは続いて叫ぶ。



 「我が名はラザレ! 前皇より、紅獅子の名を預かりし将だ!! 黒騎士、お前に一騎打ちを望む!!」

 

 「……良い気迫だ……、それに紅……残して来た者を思い出す……」



 レナンは、将軍にも関わらず一騎打ちを申し出たラザレの気概に感心しつつ、彼が名乗った紅獅子の名に、“紅き豪炎”と呼ばれていたティアの事を思い呟く。



 ラザレ将軍はブロードソードをレナンに向けると、、改めて黒騎士レナンは大剣を構える。



 対するラザレは大剣を構えた黒騎士レナンを見て……自分に全く勝機が無い事を理解した。



 ラザレは紅獅子の名を授かる程の将であり、その剣技も非常に優れている。



 黒騎士レナンが、人外の存在で……不可解な魔法や恐るべき膂力を持つ事は、これまでの戦いで理解した。


 剣技においても、たった一人でオゼを含む100人程のギナル兵を倒す程で、圧倒的な強さを有している。



 だが、どんな強者であってもギナル皇国の敵で有れば討たねばならない。



 “例え刺し違えても倒す”、そんな覚悟で一騎打ちを申し出たラザレ。



 しかし、剣を構える黒騎士レナンを見て、全く見込み違いであった事を思い知らされる。



 黒騎士レナンの強さは、ラザレが命を賭けても釣り合う次元では無い事を、肌で実感したのだ。


 差し違える事など絶対に出来ない事を、思い知らされたラザレ。彼は相対する黒騎士を見つめる。



 黒騎士レナンは、巨大な大剣を羽を持つが如く軽々と持ち、気だるげに構えてはいるが、全く隙が無い。



 敵地にたった一人立つレナンには、緊張や気負いは全く感じられず、本気でギナル皇国を単身で勝つ事を確信している様だ。



 余程、自分に自信と力量が無いと出来る事では無い。少なくとも、ラザレには敵国であるロデリア王国に、一人で戦いを挑むなんて事は絶対に出来ない。



 (……この男は、唯の馬鹿では無い……。本気で国落しをやる気だ……。それが出来る強さと覚悟を持っている。此奴には、私では全く届かんか……。だが……!)



 自らの敗北が明確に見えてしまったラザレだったが、自分を信じてくれる部下達の為にも、引く訳にいかなかった。



 「……参る……!!」



 ラザレは叫び黒騎士レナンに向かい剣を突き出す。



 対するレナンは瞬時に身をひるがえして、ラザレの鋭い突きを躱すと同時に、そのまま体を回転させ大剣で薙ぎに掛かった。



 流れる様な身のこなしで、ラザレの剣を避ける動作と同時に大剣で薙ぐレナン。



 そんなレナンの薙ぎに対してラザレは、ブロードソードを突き出した姿勢から体を戻しきれていない。



 「く!!」



 慌てたラザレは盾で黒騎士レナンの大剣を防ぐが……。



 “ガイン!!”



 質量100kgを超える大剣マフティルの斬撃に、ラザレは耐れず……真横に吹き飛ばされる。


 

 飛ばされたラザレは、兵舎の壁にぶつかった。大剣を何とか防いだ盾は……一撃で拉げ、もはや使い物にならなくなった。



 レンガで造られた壁に寄り掛かるラザレは、自らに受けた衝撃で満足に立てない。



 だが……黒騎士レナンは、そんなラザレを待つ筈も無く、一瞬で間合いに入り大剣で斬り掛かった。


 レナンは軽々と大剣を扱うが、質量100kgを超える大剣を、彼の人外な膂力で振るう斬撃は破滅的な破壊力を持つ。



 黒騎士レナンの追撃にラザレは、盾を放り捨て這う様に避ける。



 “ガゴオン!!”



  瞬間、大音響と共に、兵舎の壁は破壊された。黒騎士レナンの大剣が直撃した為だ。



 破壊された兵舎の壁を見て……這って避けたラザレが呟く。



 「……化け物め……」

 「……俺との戦いを望んだのは、そちらだ……。それに、この程度の事で驚かれてもな……。俺は全然本気じゃない」



 呟いたラザレに対し、レナンは静かに話す。彼の言う通り……黒騎士レナンは全く本気では無かった。



 今、こうしてラザレと戦いながらも……彼が纏う黒き鎧は、強制強化状態を続けていた。



 レナンに強い痛みと共に、エーテルを奪いつつ、激しい負荷を彼に与え続けているのだ。



 いつでもレナンが念じれば黒き鎧の強制強化を停止して、戦闘状態へ移行する事が出来るが……黒騎士レナンにとってラザレを含むギナル兵は余りに弱過ぎて、強制強化を切るまでも無いと感じている様だ。



 「……お前がはったりを言っていない事は、流石に分る。これ程の力を持ちながら、お前は全然本気を出していない……。いや、押え付けているのか……。実に恐ろしい怪物だが、皇国の為、私は引かぬ……!」


 「かっ 閣下! ど、どうかお下がりを!」



 ラザレは、ブロードソードを支えにゆっくりと立ち上がりながら、力強く叫ぶと、彼の身を案ずるネビルが制止する。



 ラザレはネビルの制止を聞かず、ブロードソードで黒騎士レナンに斬り掛かるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は12/5(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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