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294)ギナル皇国侵略戦-7(神殺しの騎士)

 低空をゆっくりと進む黒騎士レナン。彼の足元には意識を失って倒れたギナル兵達が転がっている為、近付く事が出来ない。


 

 「……これ程の兵を一度に倒せるなんて……や、やはり、あの黒騎士が言った通り……白き神は、殺されたの……? そんな存在に……私達が戦っても……」


 「たとえ……白き神を殺せる存在だとしても……この皇都に攻め入る敵である事は間違いない。ネビル、我々は軍人として、奴を止めないと……!」


 「は、はい! 閣下!」



 一瞬で300名程のギナル兵を倒したレナンに、部下のネビルは怯んだが……上官のラザレ将軍は士気高く指示し、彼女も気を取り直して応える。



 「……閣下、空を飛ぶ黒騎士に近接戦は不可能です。再度魔法での攻撃を行いますか?」


 「いや……奴は受けた魔法を吸い込んで、反撃してくる……。恐らく魔法は奴には効かない……。だから、弓を持って一斉に矢を放つのだ」


 「はい、閣下! 弓術隊、全方位より黒騎士を攻撃して下さい!」



 ラサレの指示に、部下のネビルは即座に応え叫んだ。



 ネビルの声を受け、弓で攻撃する弓術隊が一斉に構える。



 発動に時間の掛かる魔法に対し、弓は速射性に優れている為、多くの国が採用している武器だった。



 「放て!」



 攻撃準備が整った弓術隊を見て、ネビルが号令すると、黒騎士レナンに向け全方位より矢が放たれた。



 弓術隊が放った100程の矢は地上より 1m程の高さで浮く黒騎士レナンに集中する。



 避けようともしないレナンに迫る矢は、そのまま彼を串刺しにする筈だったが……。



 “ヴン!!”


 

 そんな低い音と共に黒騎士レナンの周りに白い障壁が展開され、放たれた矢は全で防がれる。


 そればかりか 100本程の矢は白い障壁に阻まれたまま、空中でピタリと静止していた。



 「そ、そんな……バカな……!?」



 弓術隊の矢が全て防がれた事に、ネビルは驚愕して叫ぶ。驚く彼女に応えず、黒騎士レナンは低い声で呟いた。



 「……左足だ……」



 彼が呟いた途端、空中で静止していた矢はクルリと方向を変え……矢が放たれた方向に向け、超高速で飛び去る。そう、矢を放った弓術士の方に……。



 “キュキュン!!”



 レナンが ヴリトとしての能力を発揮して、送り返した100程の矢は恐るべき速さで飛び、彼が呟いた通りに、矢を放った弓術士達の左足に突き刺った。



 「ウギヤァ!」「あぎい!」「ぐう!」



 途端に響き渡たる弓術士達の悲鳴。左足を自らが放った筈の矢に、貫ぬかれた弓術士達はレナン激痛でその場に倒れ込み、うめき声を上げて動けなくなった。



 「……弓術隊が全滅……!? ま、まさか……こんな事が……! あんな敵に、どうやって戦えば……」



 矢を反射させて、言葉通りに弓術隊の左足を貫いた、黒騎士レナン……。左足を貫かれて動けなくなった弓術隊の数は100人程も居る。



 その現状を見て、ラザレ将軍の部下ネビルは……驚愕して慄き、言葉を失った。この様子では、ラザレが鼓舞してもネビルは無駄だろう。



 女性騎士ネビルが、心折れるのも無理の無い事だった。



 最初に倒された50人と、全体範囲魔法で倒された300人程の兵士に、弓術隊の100人を合わせると……450人程が、この短時間で黒騎士レナンによって無力化された。



 立っている自軍は、100人にも満たない。黒騎士レナンが、再度全体魔法を放てば一瞬で全滅するだろう。



 対して黒騎士レナンにギナル兵達の攻撃は全く効かず、魔法は吸収され、矢を放っては反射される……こんな敵に、ネビルは戦う術が思い付かなかったのだ。

 


 “戦っても無駄……”そう理解した途端、ネビルは戦う気力が失せてしまった。



 ネビルの戦闘意欲が失われたのを見て、彼女を叱咤する事は無かった。残存する僅かな自軍を見れば、ネビル以外にも恐れと困惑を抱いている兵ばかりだ。



 ラザレ将軍は……自ら先陣を切って活路を生むべく、心を決め小さく呟く。



 「こうなれば……私自ら出るしかない様だな……」



 対して、黒騎士レナンは……弓術士達を全員、無力化した後……何事も無かったかの様に浮かびながら……ゆっくりと皇城へと向かう。



 そんな黒騎士を自ら討つべく、決意を決めたラザレは腰の剣に手を掛けたが、背後から大男が出て制止する。



 「ラザレ将軍は御下がりを……。この者は我々が仕止めます」

 「オゼ!」



 ラザレにオゼと呼ばれた男は、短かい黒髪で背高は2mは有る巨漢だ。


 筋骨隆々としたオゼは幅広い両手剣を持ち、黒騎士レナンの前に立ち塞がる。



 「怪しげな術を使う様だが……お前が持った剣は飾りか? 黒騎士を名乗るなら、剣で戦え!」



 巨漢の男オゼは剣を黒騎士レナンに向け挑発する。彼はラザレの忠実な部下の一人であり、大隊長を任されている。


 オゼは剣術に優れており、剣で戦えばレナンを活路を見出せると考えたのだった。



 オゼの挑発に、レナンは大剣マフティルを無言で構える。


 それを見たオゼは自らの剣を天に向け、背後に居る100名程の残存ギナル兵達に叫ぶ。



 「者共! ギナル皇国正規兵の意地を賊に見せてやるぞ! かかれ!!」



 オゼ大隊長の叫びと共に、残った100名程のギナル兵達は一斉にレナンに向け切り掛かる。しかし……。


 “キキキン!!”


 黒騎士レナンの体がブレたと同時に、その姿は搔き消え……恐るべき速さでギナル兵を迎え撃つ。


 甲高い音が響いたと同時に、襲って来たギナル兵達が倒れた。



 「恐れるな! 俺に続け!!」



 最初の一陣が倒されたのを見て、オゼは両手剣を振り上げレナンに襲い掛かる。大隊長の切り込みに勇気付けられた、他のギナル兵達も迷わず彼に続いた。


 「おおお!!」



 オゼは勇ましく声を上げ黒騎士レナンに斬り掛かるが……。


 “ギイン!”


 レナンの右手が残像を見せて電光の様に動いたかと思うと、金属音と共にオゼの両手剣が叩き斬られた。


 「け、剣が!?」


 両手剣を大剣で叩き斬られて驚くオゼは驚き叫ぶ。そんな彼にレナンは構わず追撃を行う。



 但し、オゼを両断しない様に大剣マフティルの刀身を立てて、バットの如く峰打ちでオゼを薙いだ。


 “ドゴウ!!”


 峰打ちと言え、質量100kgを超える大剣マフティルに殴られたオゼは、後方に吹き飛ばされ、背後のギナル兵も纏めて倒れたのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は12/1(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、御作を読みました。  ラザレさん、不平不満でいっぱいの割に、めっちゃ頑張ってますね。部下のネビルさん達が心折れても、覚悟決めて前へ出ようとするし、それを庇うオゼさん達のような部…
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