27)黒騎士との戦い-3(告白)
ブロードソードを失い無手となったレナンに鬼と化し赤い光を纏って迫るマリアベル。
迫るマリアベルを見ながらレナンは冷静に分析をしていた。
(……まさか剣が折れるとはね……バルドの剣を借りたとしても、あの大剣と鬼の膂力の前では一時しか持たないだろう……なら、魔法と体術で攻めるべきだな……。
あの鬼降ろし、とか言う技……強化魔法と同じと考えるなら……必ず時間制限が有る筈……ならば!)
レナンの中ではマリアベルが鬼化しようが、剣が折れようが、負ける要因は全く見当たらなかった。
だから、レナンにとって戦いを如何に素早くスマートに終わらせる為だけの分析を行っていたのだ。
分析を終えた彼は早速行動を開始する。
迫り来るマリアベルに対し、レナンは右手に持っていたブロードソードの柄をマリアベルの顔面目掛けて思いっ切り投付ける。
対してマリアベルは焦る事無く、眼前に迫ったその残骸を手にした大剣で難なく弾いた。
“キン!”
しかし彼女が投げられた柄を弾いた事で一瞬の隙が出来た。
その隙を作り出したレナンは強化された脚力で、迫り来るマリアベルの背後を取るべく舞い上がった。
その際レナンは呪文を詠唱していた。
「静かなる大地よ 我が意に従い 爪牙と成りて切り刻め! 地狼牙!!」
マリアベルの頭上を飛んだレナンは中級地属性魔法を唱えた。
レナンが放った地属性魔法は、地形を操作し槍の様に鋭い石状の牙を、意識した範囲の地盤から生成し、敵を貫き切り刻む魔法だった。
マリアベルが居る地面から長さ1m以上の鋭く頑強な石槍が一斉に彼女を襲う。
“ズキュ!!”
「ぬぅぅ!?」
突如、地面から生じた石槍に戸惑ったマリアベルだったが、手にする大剣で石槍を一掃した。
“キキキン!!”
甲高い音を立てて、マリアベルは大剣で石槍を粉砕し事なきを得た。
だが、その所為で又も隙が生じた。
彼女が石槍を粉砕し終わった時、マリアベルの背後で呪文を詠唱する声が聞こえた。
「天の光降立ち 閃光となりて 敵を打ち砕け 雷衝!!」
レナンはマリアベルが地属性魔法による石槍を砕いている隙に中級雷撃魔法を放った。
“ギュガガガン!!”
「ググゥ!!」
放たれた魔法は石槍を破壊するのに一瞬間を取られたマリアベルを直撃した。
強力な魔法に鬼と化したマリアベルは膝を付いた
この魔法は対象の範囲に雷光を幾条もの雨の様に浴びせる魔法で、下級電撃魔法の雷刃より遥かに強力な魔法だ。
文献で鬼の力を使ったオーガ族の頑強さを知っていたレナンは雷刃では効果が弱いと判断し、躊躇無く使用した。
そしてレナンの読み通り、普通の人間なら絶命するこの中級雷撃魔法を喰らっても、一瞬膝を付いただけで直ぐに立ち上がった。
「……凄いね……これで終わりと思ったんだけど……」
「うぐっ……流石に効いたよ……ハァ、ハァ……まだ、付き合ってくれるんだろう?」
素直に感嘆するレナンに対し、マリアベルは息荒く答える。中級雷撃魔法を喰らった為か、肩で息をして辛そうだ。
その様子を見たレナンがマリアベルを気遣って尋ねた。
「……もう、止めませんか? 貴方がとても強いのは認めます。勝負は貴方の勝ちで良いですから終わりにしましょう」
「ククク…気を使われるとはな……馬鹿にされたモノだ……今の私の望みは唯一つ!! アルテリア伯爵家次男がレナン! 貴殿を我が物とする事だ!! この勝負! 私が勝てば我が物と為ると誓え!!」
「「「…………」」」
気を使ってマリアベルに穏やかに話したが、対して彼女の叫んだ事はとんでもない事だった。
レナンを始めとする3人は固まった。微妙な沈黙が続いた後、レナンが動揺しながら尋ねる。
「……えーっと……な、何言ってるんです……黒い鎧のオジサン……? そ、それに僕の名前……何で……知ってるんですか!?」
「おい……レナン……多分アレだぞ……そういう性癖の……お前、目立つから……」
「うん……そうか……レナン君……可愛いから目を付けられて……大変だね!」
マリアベルが男だと決め付けているレナンは激しく動揺し、バルドはレナンに同情しミミリはエールを送った。
対してマリアベルは3人のやり取りが聞こえない為、苛ついて大声で問う。
「何をゴチャゴチャと! レナン! 返答は如何に!?」
「全力で! お断りします!!」
マリアベルの問いに、性的(しかも男色)な意味でヤバいと勘違いしたレナンは本気で断る。
対して彼女は拒絶(告白が)されたと激高した。
「おのれぇ!! この私に恥を!! 唯では済まさん!」
そう叫んだマリアベルは気合いを入れた。すると彼女の体から赤い光が吹き出し、マリアベルを更に纏わり付く。
「オオオオ!! 私は! 黒騎士マリアベル! レナン フォン アルテリア! いざ、尋常に勝負!!」
その様子を見たレナンは長く溜息を付いて呟く。
「ハァァ……仕方ない……貞操(自分の)を守る為、倒すしか無いか……黒い鎧のオジサン……僕が勝ったら、この件諦めてね?」
「私はオジサン等では無い! 貴殿こそ、私が勝ったら我が物と為ると誓え!!」
長い溜息を付いて問うたレナンに対し、マリアベルは激高しながら強く彼に迫る。レナンは諦め顔で覚悟を決めて呟いた。
「……分った……約束するから、そっちも守ってね?」
「うるさい、さっさと仕合え!!」
レナンの問いにマリアベルは怒り心頭で答える。そんな二人の後ろでバルトとミミリが無責任にレナンにエールを送る。
「頑張れ! レナン! 道を間違うな!」
「レナン君! この事はティアちゃんにきっちり伝えるから! 負けないで!」
二人のエールにレナンは軽く苛立ちながら構える。
もはや武器は無かったがレナンには負ける気は全く無かった。
マリアベルは無手のレナンに大剣を振りかぶる。しかし彼女の動きはレナンの魔法の為かキレが無い。
「オオオ! 覚悟!」
マリアベルは大声を上げながら大剣を振り降ろす。
レナンは彼女のキレの無い動きに隙を見出して、刹那に横に移動しマリアベルの膝関節に横蹴りを入れる。
“ドガァ!”
「ウグゥ!」
レナンの強化された蹴り技により、マリアベルは苦渋の声を上げバランスを崩した。
鬼降ろしにより強化されたマリアベルの体に、肉弾戦では効果が無いと予想したレナンは関節を狙ったのだ。
次いでレナンはバランスを崩したマリアベルに対し飛び上がって、彼女の頭部に鋭い上段蹴りを放った。
“ガイン!”
「ぬぅ!」
しかしマリアベルは何とか籠手でレナンの蹴りを防いだが体勢は大きく崩れた。
その様子を見たレナンはすかさず、彼女を真後ろに押し倒そうとしたが咄嗟に掴まれマリアベルにマウントを取った様に彼女のお腹に乗ってしまった。
「キャァ!」
すると厳めしい黒騎士の姿から想像も付かない可愛い声が響いた……。
いつも読んで頂き有難う御座います!
追)サブタイトル見直しました!
追)一部見直しました!
追)矛盾が有ったので見直しました。




