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281)妹


 「ま、待って! レナン! ど、どうか私も……! 連れて行って下さい!!」


 「私も共に戦うぞ!!」

 「ああ、私もだ!」



 立ち去ろうとするレナンに向け、叫んだソーニャに続き、レニータやベリンダも声を上げるが……。



 「……お前達、分っているのか……? 奴らから、この星を守る為とは言え……俺がやろうとしているのは……結局は侵略戦争だ。

 この国を守る筈の、白騎士が望んでやるべき事では無い。この場に……マリアベルが居れば……絶対にそう言うだろう……」


 「「「「…………」」」」



 声を上げたソーニャ達に、レナンは低く威圧感のある声で静かに諭す。



 ソーニャ達も彼に、マリアベルの名を出された事で、押し黙った。


 レナンの言う通り、ここにマルアベルが居れば……間違いなく同じ事を言うと分ったからだ。



 そんな彼女達に、レナンは更に続ける。



 「……今より歩むは……修羅の道……。 立ち塞がる敵は、全て叩き潰す……。そんな道をお前達に、歩せる事など……マリアベルは許さない。

 ソーニャ、お前は……お前達は……マリアベルが愛した白騎士隊として、この国を守る事に、どうか尽力してくれ」


 「レ、レナン……」

 「……レナン君……」

 「「…………」」



 マリアベルの名を出して、ソーニャ達を諭したレナン。 そんな彼にソーニャ達は……それ以上、反論する事は出来無かった。


 ソーニャ達が、レナンの言葉に異を唱える事が出来なかったのには、理由が在る。


 マリアベルが死の直前……レナンを助ける為にゼペド達の元へ向かう際……勝てる見込みの無い戦いを前に、ソーニャ達白騎士隊は……マリアベルに強く制止された。


 あの時のマリアベルの姿と……今のレナンが重なったソーニャ達、白騎士隊は思わず胸が熱くなり……返す言葉が出なかったのだ。



 兜を被ったレナンの声は、低く威圧感が在ったが……その言葉の意図は、どこまでも優しい。



 彼は、マリアベルが愛し育ててきた白騎士隊が……血塗れの侵略戦で、汚れる事など考えたくも無かった。



 ましてや、マリアベルが守ってきたソーニャを、巻き込む等……絶対に論外だ。



 レナンは、マリアベル共にソーニャと一年以上も王都で暮らす内……ソーニャの事は……もはや、他人とは思えなかった。



 ソーニャと出会った最初の頃……レナンは、ティアを陥れ、自分を罠に掛けた彼女を恨む気持ちが強かった。


 しかし、ソーニャの本意は、マリアベルを想うが為である事を知り……自然に、そんな暗い感情は薄れて消え去った。



 マリアベルと仲の良い姉妹として過ごした、ソーニャの本当の姿は……賢くて真面目だが……とても寂しがり屋で弱い少女だ。



 ソーニャが実の両親に、人買いへ売られたと言う、酷く最悪な過去に関して……レナンはマリアベルから聞いていた。


 そしてマリアベル自身が、ソーニャを救い……妹として育ててきた事も。



 その為、ソーニャに取ってマリアベルは……何者にも代えがたい太陽の様な存在となった事も、レナンは良く分っている。



 レナンはマリアベルの事を……自分が気付かぬ内に、誰より深く愛する様になっていた。


 それと同様に……マリアベルが妹として慈しんだソーニャの事を、レナン自身も……いつしか家族として大事な存在となった。



 そのソーニャが、何より大切に想ってきたマリアベルを……自分の弱さ故に、死なせてしまった……。

 


 そう想うと、レナンはソーニャを……自分の戦いに何が有っても、巻き込ませる訳にいかなかったのだ。



 そして……それはソーニャだけでなく、マリアベルが家族同然に想っていた……白騎士隊の彼女達も同じだ。



 だからこそ、レナンはソーニャや白騎士隊の名乗りを、拒否したのだった。




 ソーニャ達を諭したレナンは、ラニやアルフレド王子の方へ向き直り……自分自身の事について伝える。



 「……ラニ殿……そなたには、追って声を伝えるが……白き勇者のレナンは……死んだと皆に話してくれ……。オニルが説明した通り……王家の力を持つ、俺の生存を……奴らに知られる訳にはいかない……。

 今、ここに居る俺は……先代黒騎士マリアベルの魂と、白き勇者の力を貪り喰らった……忌まわしい魔の黒騎士、とでも伝えてくれ。それらしい"証拠"も後で渡す……。

 アルフレド王子も、この国を本当に守りたいと思うなら……俺の考えに従って欲しい。どうか……頼む……」


 「はい、白き……いえ……黒騎士様」

 「……レ……レナン様……」


 

 新たな黒騎士となったレナンは、ラニとアルフレド王子に……自分が死んだ事にする様、強く念を押す。



 レナンの依頼にラニは素直に従ったが、アルフレドは戸惑い……それ以上の言葉が続かなかった。



 レナンは唯一人で王都を滅亡から救い……更に惜しげの無い支援を尽くした上で……孤独で過酷過ぎる戦いに挑もうとする。



 そんなレナンに頼まれた以上、アルフレドはもはや……断わる事など出来ないと強く思った。


 そう理解したアルフレドは……無力な自分に悔し涙を流しながら、レナンに応える。



 「……レナン……ジメイラ……グリアノス殿下……。殿下の御恩に……この国の王子として……最大の感謝を……。そして、全ては殿下の御要望の通りに、致します……」


 「……ご協力感謝する、アルフレド殿下……。そして我が従弟として……殿下の事を、我が妻マリアベルと共に想い続ける……。

 何卒……ソーニャと白騎士隊と……我が故郷アルテリアの者達の事を、宜しく頼みます」



 アルフレドの誓いを聞いたレナンは、彼に感謝しながら……ソーニャとティア達の事を頼んだ。



 そしてレナンは宙に浮かんで、白い船に向かおうとする。そんなレナンに……。



 「い、行かないで! レナン!」



 手の届かない高さまで、浮き上がったレナンに……ソーニャは広間から大声で叫んで制止する。


 そんなソーニャにしナンは……。



 "ヴン!"


 

 レナンは恐しげな兜を消し去って、語り掛ける。



 「……すまない、ソーニャ……お前やティア達……この世界の為……必要な戦いなんだ……。どうか分ってくれ……。

 だけど……ソーニャが大好きだった、マリアベルの心と共に……俺はいつだって戦うから! だから……ソーニャ! お前は俺の大切の妹だ!

 レニータさん、ルディナさん、ベリンダさん……どうか、ソーニャの事を頼む!」



 レナンは素顔のまま……ソーニャに笑顔を向けて、自分の気持ちを伝えた。



 そしてレニータ達に、ソーニャの事を託した後……自身の体を白く光らせて、巨大な美しい船へと、凄い速度で飛び去った。


 レナンを受け入れた白き船は、ゆっくりと上空へ浮き上がり……。



 "ビュン!!"



 一瞬光り輝いた後、大きな音と共に忽然と消え去ってしまった。



 後に残されたソーニャは、ルディナやレニータ達に支えられながら……ハラハラと涙を流してい消え去った白い船が居た青い空を、いつまでも見つめるのだった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は10/3(日)投稿予定です、宜しくお願いします!


追)一部見直しました

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