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280)黒騎士として


 レナンとAIオニルから伝えられた……ベルゥ達新生軍の侵略に対抗する、ロデリア王国を含むアステア全土の防衛作戦……。



 その概要を聞かされた、アルフレド王子は……何も返答する事が出来なかった。



 自国のロデリア王国に、そのベルゥ達との戦いに参戦出来る力が、全く無かったからだ。


 空を飛ぶ巨大な船と……無数の黒い龍レギオン。そればかりか、それらを操るリネトアの兵自体が恐るべき力を持つ。


 そんなベルゥ達新生軍の侵略に、剣や魔法と言った前時代的な戦いしか出来ない、ロデリア王国軍では……全く太刀打ち出来ない。



 レナンが挑もうとする過酷な防衛戦に、アルフレドは自分達に出来る事が全く無い事実に対し、絶望と無力感を感じていた。



 レナンはまだ泣きやまないソーニャを、ルディナとラニ達で慰めながら……困窮するアルフレドを見て口を開く。



 「……アルフレド殿下……この戦いについては、この俺に任せて下さい。奴らと戦えるのは、俺しかいない……」


 「し、しかし……貴方一人に……この国の命運を押し付ける訳には……!」



 レナンの言葉にアルフレド王子は戸惑う。ゼペド達の襲撃を受け崩壊した王都……。


 それにより疲弊した……このロデリアに、強大なベルゥの侵攻を防ぐ力は無いのは明白だ。


 だからと言ってレナン一人に、この戦いを押し付ける訳にはいかない。



 そんな思いに挟まれ……アルフレドはそれ以上の言葉が出なかった。



 何も言えず悔しそうな彼を見たレナンは、微笑みながら……そっとソーニャから離れ、小さく呟く。



「……着装……」


“ヴオン!”



 レナンが呟いた後……低い音と共に彼の体を真黒い粒子が包む。



 そして瞬く間に凶悪な漆黒の鎧を、その身に纏ったレナンが現われた。



 その鎧は……兜に天を突く様な一本の角が、そびえ立つものの…… マリアベルが纏っていた鎧に良く似ていた。



 レナンの纏う、その鎧を見たソーニャは……口を手で押えて、滂沱の涙を流しながら呟く。



 「……そ、その鎧……マリアベル……お姉様の……」


 「レナン……お前……!」

 「レ、レナン……君……」

 「…………」



 呆然と呟くソーニャに次いで……白騎士のレニータやルディナも、感極った様に涙を湛え呟く。


 感情を表に出さない、ベリンダですら……涙で目を真っ赤にしながら、下を向いて震えていた。



 ソーニャ達が、感情を抑え切れず、感極まったのは……レナンのマリアベルへの強い想いと……彼の覚悟が明確に伝わったからだ。



 対するレナンは、そんなソーニャ達の姿を見て……恐ろしげな、兜だけを消し去って素顔を現した。



 “ヴン!”



 そしてレナンは、ソーニャやレニータ達に向け微笑んで見せた後……。




 これが答えとばかり……アルフレド王子に向け、力強く言い放つ。



 「……俺は一人では在りません、アルフレド殿下……。俺は我が妻……マリアベルと共に……彼女の心と共に戦う」



 "ヴン!"



 そう話したレナンは、凶悪な兜を一瞬で装着する。



 「……レ……レナン……様……」



 そんなレナンにアルフレド王子は、ただ一言……彼の名を呟くだけだった。




 「……俺は先ず……奴らの息が掛かったギナルを落とし……次にロデリア周辺諸国、最後は亜人の国に侵攻する。その間……この国を守る為……手を打っておこう。オニル……」



 兜を装着したレナンは、口調も……そして、兜自体にボイスチェンジャーの様な機能があるのか、声すら変わっている。


 兜を被ったレナンの口調は無感情で、変わってしまった声は低く凄みがあり、完全に誰か分らない。



 そんなレナンの言葉にオニルは応える。



 「はい、マスター。無人となったエリアに、自動生産プラントを一基設置し……リべリオンを100体程配置します。

 その上で王都全体にバリアーを展開し、上空からの攻撃に備えます。同時に、ジャミングと偽映像で王都の状況を偽装しますが……取り敢えずその方向で宜しいですか?」


 「ああ、構わない。この船自体の、ステルスとジャミングも常に忘れるな。それと……設置するプラントから定期的に緊急支援を行え。

 プラントから生産された支援物資は、リベリオンを通じて分配し……同時にリベリオンには王都の警戒任務と復旧作業に当たらせろ」


 「はい、マスター。今すぐ手配します」



  "ヴオオオオン!!"



 レナンの指示をオニルが答えると、大きな音と共に……上空に居た3000体のリベリオンが一瞬で姿を消した。



 そして……入れ替わる様に巨大な自動生産プラントが一基、白く美しい船の横に現われ……ゆっくりと降下する。



 降下する自動生産プラントの周囲には、100体程のリベリオンが……プラントを守る様に空を舞う。



 「な、何だアレは!?」


 「……アレは、この国を守り……食糧や薬を生産する工場だ。それ以外に、王都の民達の活力を生むエネルギー波を放つ。同時に……この王都を守る強固な盾を作り出す。

 いずれも、このロデリアに必要な機能だろう。オニル……このロデリアの国章をプラントとリベリオンに刻め。それと……船にも……」



 驚くデューイに、レナンは静かに答えオニルに指示する。



 「はい、マスター」


 オニルが答えたと同時に、広間に立っていた10体のリベリオンのボディアーマーへ、口デリアの国章が刻まれる。



 "ジジジ……"



 ロデリア王国の国章は、盾を中心に剣を咥えた獅子が、向かい合っている意匠だ。



 その国章は空に舞うリベリオンのボディアーマーにも同様に刻まれた。


 そればかりか、巨大な自動生産プラントや空に浮かぶ美しい船にも、大きな国章が描かれる。




 「……これで、王都の民も安心する筈だ……。そして、これから侵略されるギナルの者共も……二度と口デリアに刃向わんだろう……」



 そう呟いたレナンは恐ろしげな黒い鎧を纏った姿で、ソーニャやアルフレド達に背を向け、立ち去ろうとするが……。



 「ま、待って! レナン! ど、どうか私も……! 連れて行って!!」



 そんな彼に、ソーニャが大声で叫ぶのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は9/29(水)投稿予定です、宜しくお願いします!


追)一部見直しました

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