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26)黒騎士との戦い-2(鬼の力)

 レナンの恐るべき強さを肌で感じたマリアベルは、迷わず本気を出す事にした。


 彼女は自身に与えられた血の力を開放する事としたのだ。


 「オオオォ!!」


 マリアベルは雄叫びを上げ、力を解き放つ。すると彼女の周りに生じていた赤いモヤの様な光が激しく輝き、彼女を包んだ。赤い光は帯状にマリアベルに(まと)わり付く。


 “ドグン!!”


 周囲の大気が一瞬脈打ったように感じた。



 その様子を見たバルド達は驚きの声を上げる。


 「な、何だ……何が起こってる!?」


 「体に光が……!」



 驚くバルド達を余所にレナンは静かにマリアベルの様子を観察していた。


 「……アイツの周りにエーテルが凝縮している……生命力を向上させているのか? 身体強化魔法とは異なる系統の技だ……。」


 観察を続けるレナンに関わらず、マリアベルの体に赤い光が纏わり続け完全に体を覆う。


 やがて赤い光の奔流(ほんりゅう)は収まり、赤き光が彼女の体に(まと)わり付き異様さを(かも)し出す。


 その様より、抑えきれない強大な力を感じさせた。



 赤い光を纏わせ、強大な力を発する マリアベルがレナンに語る。



 「……こうなってしまっては……加減が出来ない……構わないよな……?」


 対してレナンは自身の分析結果を元に答える。


 「古い文献で見た事が有る……遠い、亜人の国には……戦鬼と呼ばれる部族が居ると……彼らは戦いに優れ……闘気を(まと)いて戦場を蹂躙(じゅうりん)すると……それが、貴方の正体か……」


 「博識だね……その通り……私は戦鬼と称されるオーガ族の出だ……但し純血では無く人族との混血だよ。だが戦鬼としての力は受け継いでね……この姿になって……私は、負けた事は無いんだ……さて、君はどうかな?」


 レナンの言葉に嬉しそうな口調で話すマリアベル。しかしその姿勢は今にも飛び掛からんと腰を低くし、既に臨戦態勢だ。


 その様子を見たレナンはバルドとミミリに下がる様に伝えた。


 「……バルド、ミミリ……アイツはやる気だ……今度はちょっとヤバそうだから、後ろに下がって貰えない?」


 「あ、ああ……気を付けろよ?」


 「レナン君……む、無理しないで……」


 バルドとミミリから声を掛けられたレナンは笑顔で答えた。


 「うん、有難う」


 対して黒騎士マリアベルは大剣を構え、更に腰を低くし跳躍(ちょうやく)した。(およ)そ人と思えぬ行動だ。


 マリアベルはレナンの頭上から剣を振り降ろさんと直線距離10m程を一気に飛び上がり襲い掛かった。レナンはマリアベルの鋭い大剣をブロードソードで受け止める。


 “ギャリギャリ!!”


 嫌な金属音を立てて(せめ)ぎ合う大剣と剣。一瞬の膠着(こうちゃく)状態の中、レナンが前蹴りを放つ。


 身体強化重ね掛けの効果で、レナンの蹴りは強化され、戦鬼となったマリアベルを吹き飛ばした。


 “ドドォウ!!”


 後方に吹っ飛んだ彼女はそんな音と共に木立に激突した。レナンもすかさず追従する。


 マリアベルにレナンが肉薄せんと迫った時巨大な何かにレナンは打ち付けられた。


 “バギン!!”


 何かで強打されたレナン。今度は彼が逆に飛ばされ街道の地面に転がされた。


 「レナン!!」

 「レ、レナン君!!」


 その様を見たバルドとミミリがレナンを案じて叫ぶ。転がされたレナンはその声に応えるが如く立ち上がる。


 彼はマリアベルの方を見ると、右手には大剣、左手には先ほどレナンが切断した太い木を掴んでいる。レナンが殴られたのは左手の木の方だった。


 太い幹に万力の様な左手の指が食い込み、マリアベルは右手の大剣同様、紙の筒を持つかの如く重さを感じず振り回せる様だ。


 “ブオン!!”


 マリアベルは左手の木をレナンに向かって投げ付けた。



 此処でレナンは背後のバルド達を見る。自分が単に投げられた木を避ければ後方の二人は巻き込まれる。そう判断したレナンは、飛んで来る大木を叩き落とす事にした。


 “ズパン!!”


 そんな音と共に投げられた大木を両断したレナンだったが、大木と同じタイミングで迫ったマリアベルの横薙()ぎの斬撃に対応が遅れた。


 赤い光を(まと)って戦記と化した彼女の膂力(りょりょく)と速度は、身体強化魔法重ね掛けしたレナンに匹敵する程だった。


 その為マリアベルは人外の動きを見せ、レナン以外に目で追う事も対応する事も出来なかった。



 突如現れたマリアベルが放った大剣の横薙()ぎに、大木を切って捨てたばかりの為、剣で受けるのが遅れてしまう。


 “ガギン!!”


 何とか剣で受けたものの、姿勢を保てず倒れてしまう。そこにマリアベルは容赦なく追撃を加える。彼女は強化された足でレナンを想い切り蹴り上げ様とする。


 対してレナンは咄嗟(とっさ)に地を転がり何とか避けた。そして起き上がりブロードソードを構えマリアベルを見据える。

 

 そのレナンを見て、マリアベルは愉快そうに語る。


 「ククク……この姿……力を開放して鬼降ろしの身と成った、この私と……ここまで戦えた者は今まで一人も居ない……見事だ……ハハハ、楽しくて仕方ない!」


 「……僕としてはさっさと終わらしてギルドに行きたいんだけど……もう終わりにしませんか?」


 何処か楽しそうに話すマリアベルに対してレナンは冷たく突き放す。対してマリアベルは構わず語る。


 「つれないな……こうして会い見えたのは宿縁に寄るもの……故に!! いつまでも剣で語り合おうぞ!!」


 そう叫んで黒騎士マリアベルはレナンに向けて突進する。


 「何だよ、宿縁って……勝手に決めないでくれる? ……全く……仕方ない!」


 レナンもそう呟いて、自ら打って出る。マリアベルは下段から切り上げる様に大剣を振る。レナンもブロードソードで受け流す。


 “ギャリン!!”

 

 マリアベルは大剣を振り回し、激しい連撃をレナンに与えた。レナンも一歩も引かず迎え打つ。


 “ギン! ガキン! ギャリン! キン!”


 激しい剣戟(けんげき)が続き、レナンとマリアベルは一歩も引かない。


 赤い光を(まと)って戦鬼となったマリアベルの剣技は、レナンの多重強化された剣にも引けを取らず、戦いは拮抗(きっこう)していたが……。


 “ビキン!!”


 そんな甲高い音を立てて、レナンの使っていたブロードソードが折れてしまった。折れた剣を見てレナンは短く悪態を付いた。


 「チィ!」


 丁寧に手入れされたその剣は簡単に折れる物では無かったが、メガワスプに続き黒騎士マリアベルの大剣と激しい剣戟(けんげき)を繰り返した事で限界が来てしまったのだ。


 ブロードソードが折れてしまったレナンは後方に宙返りして飛んで下がった。


 対してマリアベルは無手となったレナンに対しても容赦なく、赤い光を(まと)わせながら大剣を構えて突進したのだった……。


追)サブタイトル見直しました!

追)一部見直しました!

追)一部見直しました。

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