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266)とある月の旅路

 レナンは今……知識を得る為に、中級万能戦艦エゼケルのAI、オニルによる圧縮学習を受けていた。



 圧縮学習は、脳に直接を書き込む教育プログラムとの事だが、その為に深い眠りが必要と説明を受けた。


 その為、レナンはオニルにより深睡眠状態へ移行させられたが……。





 彼は、今……夢を見ていた。





 その夢の中でレナンは、見た事も聞いた事も無い世界を漂っていた。



 どこまでも漆黒の暗闇が広がる世界……そこは、レナン自身知らなかったが……星の海である宇宙空間だった。




 レナンは、その夢で一つの惑星が滅ぶ様子を見た。




 レナンが最初に見たのは……漆黒の闇の中に浮かぶ、巨大な星だ。この星は金属で出来た、人工の惑星だった。



 人工の星は、赤い大きな太陽に照らされている。レナンが知る太陽は薄い黄色だったが、この星を照らす太陽は、赤く巨大だ。


 しかも……この赤く巨大な太陽は、巨大なリングによって鳥かごの鳥が如く囲まれていた。赤い太陽が放つ光は、リングにより半分程度しか外に漏れていない。



 レナンは知らなかったが、このリングは恒星のエネルギーを効率的に得る為に設けられたものだった。


 赤い太陽を囲む巨大なリングからは、断続的に青い光が放たれて、金属製の人工惑星に送っている。



 太陽のエネルギーは全て、この金属の星が使っている様だ。



 その金属の星は、表面に巨大な幾何学的な模様の様な溝が、作られており内部に人工物が密集し様々な色の光を発している。


 よく見れば星の表面は凸凹とした建造物が無数に生え揃い、星を覆っていた。



 その星の周りには、幾つもの月が浮かんでおり、その月も星と同じ様な金属製の人工物だった。



 金属で出来た星は、その表面に刻まれた模様の溝より不思議な光を絶えず発する。


 その星には光り輝く何かが、周囲に浮かび絶えず動き回っている。



 レナンが目を凝らすと、不思議な事だが勝手に視線が、その光り輝く何かへクローズアップされた。


 それは色々な形をした巨大な船だった。円盤状で突起物が伸びた船、菱形の複雑な形の船や、武骨なブロックの様な形状の船……。



 レナンはその中で、真白くて流線型の美しい形の船に目を奪われた。


 

 そんな無数の船が、人工の星から光を放ちながら飛び上がったり、舞い降りたりと、引っ切り無しに繰り返している。



 金属製の星の周りに浮かぶ人工の月にも、船は忙しく飛び回り星と月々を連絡していた。


 事情の分からないレナンが見ても、その星と月は活発で生き生きとしていた。




 しかし……星と月に突然の終焉が訪れる。



 

 活発な活動を見せていた金属製の惑星が、突如……一瞬震えた後、全ての光が消えた。そして、星の表面に、巨大な割れ目が幾重に走り……天を貫く炎が立ち上る。




 そして人工の星は、不自然に膨らみ……眩い光と共に大爆発し、消滅した。




 星が在った場所には、巨大な破片が浮かぶが……その中に黒い染みの様なモノが現れる。



 その染みは爆発的に増殖し……弾けるように広がった。



 そして星の周りに浮かんでいた、沢山の月に襲い掛かる。黒い染みが金属で出来た月を覆うと……惑星と同じ様に、炎を噴き出して爆発して消滅した。



 そんな中……惑星の一番遠くに在った、金属製の月が黒い染みに襲われながらも、その星系より離脱する。




 この場から最後に残った月は、逃げようとしている様だ。レナンの視点は、自動的に切り替わり金属製の月へとクローズアップされる。




 離脱する月に目掛け、黒い染みは執拗に追う。



 レナンは、その夢の中で……黒い染みに見えたのが、無数の蠢く肉塊である事に気が付いた。



 混沌から吐き出された様な蠢く肉塊は……どれも形が統一していない。




 口と目が、体表に埋め尽くされた長大なヘビの様な姿をしたモノや、無数の長い手足を毛の様に生やした丸い怪物もいる。


 頭部に、目の無い人の顔が張り付いている虫の様な甲殻を持った化け物もいる。軟体生物の触手を幾重にも生やした樹木の様な怪物もいた。


 また、金属製の星の破片とブヨブヨの肉体と融合したモノも見られた。




 生物としての整った機能性を持たない、全てをごちゃ混ぜにした様な混沌の怪物……。




 その姿はまるで、思い付きで生物のパーツを切り取って無造作に張り付けた様だ。



 レナンはその不気味過ぎる異様な怪物を一目見て、嫌悪し吐き気をもよおした。




 黒い染みの一つ一つが……全て異様過ぎる怪物だったのだ。その数は一体どれ位いるのか数えるだけ馬鹿らしい程だ。



 この混沌の怪物は、分裂しながら増殖しており、爆発的にその数を増やし続ける。



 それらは遠目には黒い染みの様に見えたが、間近で見ると山の様に大きい。恐らくは1000mを遥かに超える巨大さだ。




 そんな巨大で異様な怪物が、脱出する月を襲う。襲われた月は小さな爆発を繰り返したが、光線を幾重に放ち抵抗する。



 そして、離脱を続ける月の前に巨大な裂け目が生じ……月はそのまま裂け目に突入し、完全にその場から消失した。




 月を見失った黒い染みは、増殖を続け……拡散を始めるのだった。





 レナンが次に見たのは、何も無い宇宙空間より突然裂け目が生じ、そこから出てくる金属の月の姿を見た。



 人工の月は、混沌の怪物による襲撃で……金属製の外装はボロボロに破壊されていたが……構わず、遠く遠くへと飛び続ける。



 月は、混沌の怪物から一刻も早く、遠ざかろうとしている様だった。




 レナンは月が永い永い時を経て、飛び続ける様を見た。


 

 巨大なガス惑星や、青い輝きを見せる太陽、そして全てを飲む込むブラックホール……それらを間近にしても、立ち寄る事も無く、人工の月は逃げ続ける。





 金属製の月は、永い旅路の中……カモフラージュと補給の為か、自身に激突した小惑星の破片を表面に纏う。


 逃げ続ける中で、いつしか金属製の外装は修復され……その表面を岩石で覆う事で、人工の衛星から、ありふれたクレータだらけの衛星へと姿を変える。




 それから……更に逃げ続ける人工の月は、幾度も空間を割って転移を繰り返しながら、何処までも飛び続け……遂に、青い美しい星の傍で停止する。




 夢の中で映像を見ているレナンには、直感で理解出来た。この青い星がレナン達が暮らす大地なのだと……。




 混沌の怪物から、永く永く逃げ続けた人工の月は……この青い星に最初から存在していた衛星の横に慎重に移動し、そこにピタリと留まった。



 レナン達が暮らす、青い星アステアの二番目の月として……。




 レナンは、そんな夢を見ていたが……突然に声が鳴り響く。




 “……圧縮学習による教育プログラムを終了します。次いで覚醒シーケンスへ移行し……カウントダウンを始めます。5……4……”



 そしてカウントダウンが始まり……終了と同時にレナンは目覚めるのだった。


 いつも読んで頂き有難う御座います! この話で出てくる混沌の怪物は、この箱庭シリーズの宿敵となる存在です。


 ですが……この混沌の怪物が物語に登場するのは、箱庭4か5以上の未来の話になります。



 そこまでに至れるように頑張り続けたいと思います。次話は8/1(日)投稿予定です、宜しくお願いします!


 追)抜け等を見直しました

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