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265)AIオニルとの出会い

 マリアベルの死を切っ掛けに、新しい力に覚醒したレナン。



 彼はその力にて王都を襲撃したゼペド達を倒し、無数の龍を滅ぼして王都の危機を救った。



 そして……レナンは最後に黒い異形の船、エゼケルに向かって……自らの体を光の弾丸と化して体当たりをする。


 そしてエゼケルと共にレナンはエリワ湖に水没したのであった。





 そのレナンだったが……目覚めると、うす水色の液体の中に浮かんでいた。





 (……ここは……? 確か僕は……あの巨大な黒い塊に激突して……。ああ、そうだ……マリアベル……、僕は君を……失ったんだ……。あああ……)

 


 目覚めたレナンは、マリアベルを失った事を思い起こし……どことも知らぬ場所にも関わらず、さめざめと泣く。



 何故か動く事も出来ず、液中に居る為に声も出せないが、自分が泣いている事は理解出来た。


 不思議な事だが、液体の中に居るにも関わらず、呼吸は出来る。




 レナンは短く無い間……マリアベルを想って泣き続けた。只々、泣き続けたが……彼女に託された事を思い出す。



 マリアベルは、最後にソーニャと皆を頼むと言って死んだ。



 それは、マリアベルが守ってきた者達や、ロデリア王国の事だとレナンは理解していた。


 今からは、マリアベルの代わりに彼女が愛し、大切にした者達の為に……自分が戦おうと、レナンは決める。




 彼は泣いて、泣き続けてようやく……自分がやるべき事を理解し、冷静になった。そして行動を開始する事を決めた。



 そう決めたレナンは、見慣れぬ場所に少し戸惑いながら、体を動かそうとするが……力が入らず動く事が出来ない。



 唯一動く目を動かして、液体の中で自分の体を見ると……自分が生きているのが不思議なほどの傷を負っている事を知る。



 そして、その自分がシリンダー状のガラス容器に入れられ、体中にチューブ状の物が刺さっている事に気が付いた。




 (……? とにかく……ここに閉じ込められている訳にいかない……)




 そう思ったレナンが力を発動しようとすると……。




 “……お待ち下さい、マスター。貴方様は、本艦との衝突の際に、重傷を負われ……長期の治療が必要な状況です”



 (誰だ……お前は?)



 レナンが力を発動しようとすると……彼の頭の中に、人工的な女性の声が響いた。



 “はい……私は、本艦……つまり揚陸用中級万能戦艦エゼケルのAIであるオニルです。以後、お見知りおきを……。マスターの現状は、頸椎及び脊髄の損傷……次いで右大腿部の不全切断、そして胸部オド器官破損及び……肋骨骨折による肺臓の重度損傷により重体です。その為……治療プログラムに基づき、マスターの肉体を治療中です“



 レナンに問われた人工音声はオニルと名乗った。AIであるオニルは、シリンダー容器に入ってるレナンに……彼の肉体損傷状況を3Dモデルで表示して説明した。



 オニルの言う通り、レナンは自分が負った傷の状況をシリンダー容器内で見せられて、改めて重篤な状況である事を理解した。こんな重症では回復魔法による治療は不可能な事も分った。



 だが、不思議な事に、死に至りそうな重傷なのに全く痛みが無い。



 (……オニルと言ったか……。オニル、教えてくれ……。この傷は治るのか……? そして敵である僕を、どうして治療する?)


 “はい、マスターの肉体は……ナノマシン投与と、修復ポッドの併用により、200時間程で完治します。そして……敵性対象か否か……と言う問いですが……、本艦は正当王位継承者であるマスターにこそ、正式な所有権を保有しておられます……。従いまして、先程までの戦闘行為は、本艦の不正使用に基づく戦闘であり……本艦の建造目的とは逸脱します。マスターと本艦の衝突の際、マスターのDNA及びエーテル固有波長等の各種特有データを再登録し……改めて、本艦はマスターが所有者と至りました……”




 レナンが頭の中で問い掛けた事に、AIのオニルは淡々と答える。オニルの返答はテレパシーに依るモノか、レナンの頭の中へ直接伝えられた。



 しかし……レナンはオニルの説明する内容が、何の事か理解が追い付かなかった。




 (オニル……君の言う事は、意味が分からない……。そもそも奴らは何の為に、この国へ来た? 君の言うAIとは何だ? ナノマシン? エゼケル? 何も分らない)


 “現在までのマスターの教育環境に、重大な問題があります……。植民地星であるアステアの原始的な文明レベルの影響を受けた為と推察致します。本艦の操作には、本国リネトアにおける知識レベルが他者に教育出来るレベル5以上で有る必要が有り……その上で、各種専門的な知識が必要ですが……圧縮学習による教育プログラムを実行されますか?”



 レナンの更なる問いに、オニルは難解な言葉で返答する。



 (だから……君が何を言ってるのか……全く分らない。だけど……最後のは分った……。僕に奴らの事、この世界の事、そして僕自身の事を……教えてくれるのか?)


 “はい……正確には圧縮学習によって、マスターの大脳記憶領域に……直接、必要とされる知識を書き込みます。尚……この教育プログラムの終了には、36時間程必要です……”


 (相変わらず、何を言っているか……分らないけど……僕が、これから……やるべき事の為に、奴らの知識は絶対に必要だ。どうせ、この傷では動けないし……頼む、その圧縮……学習とやらを、やってくれ)



 AIのオニルの言葉は、レナンの脳内に直接響くが……その内容は、彼には全く分らない。


 しかし、レナンはオニルが自分に知識を与えてくれる、と言う事だけは理解した。



 レナンに取ってマリアベルに託された想いの為に、敵の知識は絶対に必要だった為、迷わずオニルに依る教育を望んだのだ。



 “はい……マスター、ただ今より圧縮学習に依る教育プログラムを実行します。プログラムの実行中、マスターは深睡眠状態への移行が必要です。従いまして、カウント後に強制睡眠を行います……”


 (な、何だ? その強制睡眠って……嫌な感じがするんだけど……?)


 “……5……4……”



 オニルにより強制的に眠らせると聞いたレナンは戸惑うが、オニルは構わずカウンダウンを始めた。


 “……3……2……1……0”



 そして、カウントゼロと同時に……レナンは意識を失うのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! この話から新章となり暫くはレナン視点で物語が進みます。


次話は7/25(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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