表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
262/370

259)抗う彼女達①(絶望の中で)


 レナンが黒き船エゼケルを落とす前……王立学園の校舎内にてリナとジョゼは迫り来る龍の襲撃から身を潜めて隠れていた。



 リナ達だけで無く、学園の皆は散り散りになって逃げ、何処かに隠れている様だ。



 残念な事に、生徒の中には龍に喰われてしまった者や、放たれた光線によって半壊した校舎の瓦礫に埋もれて死んだ者も多い。




 一体、どれ程の生徒や教師が死んだのか、リナ達には想像付かなかった。




 校舎の外には黒い龍が、喰う為に動く人間を、探している様子が見える。



 「……ジョゼ……こ、これから……どうする?」



 リナは疲れ切った様子で、隣に居たジョゼに問う。


 「…………」


 リナの問いにジョゼは答えられず、ガタガタ震えるだけだ。



 学園が龍に襲われた時、教室に居た彼女達は……何が何やら分らず、悲鳴を上げて座り込んだ。


 だが、同じ様に座り込んだ女生徒が……窓から首を突っ込んだ龍に喰われるのを目の当たりにして、這う這うの体で教室から脱出した。



 逃げ惑う中……龍に喰われたり、崩壊した校舎の瓦礫に押し潰されたりした、生徒や教師達を沢山見た。



 リナとジョゼの2人が、今まで生き残ったのは、ただ運が良かったとしか言えない。



 逃げ惑った後、彼女達が居るのは……半壊した校舎の一階にある教室だ。


 そこの大きな教壇の下で、二人して身を屈めている。

 


 だが……いつ校舎が崩れ落ちるか分らず、ここにずっと隠れている訳にいかないと、リナは考えていた。



 「と……とにかく……ジョゼ……ここから……」


 「い、いや……! も、もう動けない……!」



 リナは、震えるばかりのジョゼに声を掛けるが、ジョゼは動く事を拒否した。


 彼女は恐怖で心が折れてしまったのだろう。



 リナ達が、這う様に逃げてきた一階の教室は、上階が一部崩壊しており、瓦礫で押し潰されて死んでいる生徒の姿も多く見られた。



 そればかりか……窓から首を突っ込んだ龍により、喰い散らかされた生徒の遺体も転がっている。


 こんな場所に居れば、気の弱いジョゼの心が折れるのも当然の事だ。



 リナもジョゼが隣に居なければ、とっくに恐怖で押し潰されていた。



 「……ティアが居ないなら……私が、頑張らないとね……」



 リナは此処には居ない親友ティアの事を想いながら呟く。



 そんな中……。



 「いやあああ!!」



 隣の教室で叫ぶ声が聞こえた。


 「!? こ、この声は!?」


 聞き覚えがある、その声にリナは思わず……教壇の下から飛び出し駆け出す。


 「ま、待って! リナちゃん!」


 駆け出したリナに、ジョゼも這う様に後を追った。




 二人が隣の教室に駆け付けると……。




 そこには、パメラと女生徒達が半壊した教室に入り込んだ、龍に襲われそうになっていた。



 パメラ達は怪我をしているのか、その場から動けない様だ。



 「こっちだ! パメラ!!」


 リナの叫びにパメラ達は、顔を上げてリナの方を見て叫ぶ。


 「!? リ、リナ先輩! ダメなんです! 友達が怪我をしてて……!」


 避難を呼びかけたリナだったが、パメラはその場を離れる事が出来ない。


 「ま、待ってろ!」


 そう叫んでリナはパメラの元へ駆け寄るが……。



 “キシャアアア!”



 身を乗り出す龍が吠えた後、頭を振ってリナに襲い掛かる。


 大きな首を動かした為、机が吹き飛びリナに直撃した。 


 

 「あぅ!!」



 机にぶつかったリナは悲鳴を上げて倒れてしまう。龍は大口を開けて、倒れたリナにかぶり付こうとしたが……。



 「静かなる大地よ、我が意に従い、爪牙となりて切り刻め! 地狼牙!!」



 “ガガン!!”

 


 素早い詠唱の後に放たれた中級土魔法に、頭を貫かれた龍は動きを止めた。



 「リ、リナちゃんから……離れて!!」



 魔法を放ち、そう叫んだのはジョゼだ。ジョゼはリナに駆け寄り、彼女を抱き起す。



 「リナちゃん! しっかり……!」


 「……な、何だよ……ジョゼ……やれば出来るじゃん……」



 抱き起されたリナは、頭から血を流しながらジョゼに軽口を言う。



 そんな中、龍はジョゼが放った渾身の土魔法にも関わらず、すぐに動き出した。



 「……リナちゃん皆と居て……私が……戦うから……」

 「ジョゼ……お、お前……」


 ジョゼは、リナを寝かして龍と戦う為にスッと、立ち上る。



 リナは知らなかったが……ジョゼの家系は代々、白騎士のリースの様な白騎士を輩出した騎士の家系だ。



 従ってジョゼも幼い頃から、魔法や剣等の武術を教え込まれた。彼女は学園に入る前から牙である戦う術を持っていたのだ。



 そんなジョゼの欠点は、優しすぎる故の気の弱さだ。



 しかし……目の前で親友のリナが殺されそうになり、ジョゼは自分が戦うしか無い状況に追い込まれた時……彼女は生まれて初めて、牙を持ちて立ち上ったのだ。



 「……静かなる大地よ 我が意に従い 矢を放て 地破弾!!」



 ジョゼは続けて、下級の土魔法を龍に向けて放つ。しかし対する龍には大したダメージは与えられない。


 「く……リナちゃんは……皆と逃げて……!」

 「バカ! そんな訳にいくか!」


 逃げる様に促したジョゼにリナが拒絶して叫ぶ。



 “キシャアアア!!”



 そんな二人をあざ笑うかのように、龍は吠えてジョゼに向かい、その巨大な口で丸呑みしようとする。


 しかし、武器を持たないジョゼは自らの身を守る事も出来ない。



 「ジョゼ!!」

 「ジョゼ先輩……!」


 ジョゼの危機にリナとパメラが叫ぶ。



 絶体絶命……その場に居た皆が、そう思った中……。 


 “ズパン!!” 


 斬り裂かれる様な音が響いた後……龍の首が音を立てて切断され崩れ落ちる。


 “ズルゥ!”



 「……ふぅ……何とか、間に合ったか……」



 そんな声と共に龍の背中から、現れたのは……クマリだ。

 


 彼女はいつもの仮面を被り、両手から鉤爪を不気味な色の血を滴らせている。その鉤爪で龍の首を切断したのだろう。



 「「「クマリさん!!」」」



 ティアの師匠であるクマリの助太刀に、リナとジョゼ達は同時に叫ぶ。



 「コイツは、首を落としたって死なない……スグに此処から脱出するぞ!」



 クマリはそう言って……、リナとジョゼ達、学園の生き残りを連れて脱出するのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 


 この話以降、プロローグ後の物語となります。新章に至るまで、クマリ達と、ソーニャ達と……そしてティアの奮闘が幕間として描かれます。


 次話は6/13日 投稿予定です、宜しくお願いします!


 追)誤記を見直しました


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ