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258)哀しい勝利――そして、黒騎士へ……

 レナンが第二形態に覚醒し、その圧倒的な力の前にゼペドとアニグはあっと言う間に殺される。

 


 追い詰められたメラフは、揚陸用中級万能戦艦エゼケルに命じてレナンへの攻撃を指示したが……エゼケルは拒否して沈黙した。



 アステアと呼ばれる、この星の占領後……拠点となるべく与えられたのが、この揚陸用中級万能戦艦エゼケルだ。


 万能戦艦と言うだけあって、龍を生み出す自動生成プラント等、あらゆる機能が内蔵されている。



 メラフはそう言った理由で、与えれたエゼケルに、のめり込み自分の意のままに動かしてきたが……今の今まで、エゼケルから認証拒否を受けた事等、一度も無かった。




 元々、エゼケルを始めとする全ての船や自動生産プラントと言った設備類は……旧体制時代に建造された。


 それらの設備はベルゥが新生軍を組織し実権を奪ってから、戦艦等の設備類の支配権上書きを行って、初めて支配できた。



 旧体制派の王家が所有し、王家の認証が無いと使えなかった戦艦や強力な兵器群……。



 これらの支配権を新生軍の首魁ベルゥが奪った事で、旧体制派は大いに弱体化し混乱した。



 ベルゥが戦艦や強力な兵器群を支配出来たからこそ、永遠とも思われた王家を中心とした旧体制派による統治を、新生軍が崩す事が出来たのだ。



 ベルゥがどうやって王家より上位の支配権を手にしたのか誰も不明だが……実権を手にした新生軍の中で彼女が絶対的な権力を手にした理由の一つだ。



 もっとも……王族には絶大な力を持つ、巨大な龍の姿となれる第三形態と言う奥の手が有った。



 この第三形態へ覚醒した王族の戦闘力は圧倒的で……如何な兵器群を集めても敵う筈は無かったが……ベルゥは、第三形態となった王族に対抗する“力”を持って、王族を打ち破る。



 故に、ベルゥは大いに畏怖され、彼女が立ち上げた新生軍の支配は揺るぎの無いモノとなった。




 ……血染めなる少年がレジスタンスを組織するまでは……。




 なお、エゼケル等の兵器群に施された支配権の上書きはベルゥが生み出した方法で、エゼケルに乗り込み遠隔では無く直接操作する必要が有った。



 しかもベルゥが居る墓所との接続が必要で、しかも彼女自身の認証が必要だった。その手続きは複雑で、この場で出来る事では無い。



 エゼケルが認証拒否した理由は、間違い無くレナンだ。


 彼が王族の証である角を生やし、第二形態となって力を発動した事で、エゼケルは彼が主だと認めてしまったのだ。



 「と、とにかく! エゼケルに乗り込んで……」


 “ザン!!”


 「うごぅ!!」



 メラフがエゼケルに向かおうと、背を向けた瞬間……彼は背中からレナンに貫かれた。



 「……逃がさないと言った筈だ……」


 「……ヒュー……ヒュー……た、たすけ……」


 「黙れ」



 メラフを背中から貫いたレナンは、低く呟く。メラフは虫の息で命乞いをしたが、レナンには届かなかった。



 レナンは冷たく突き放すように答えた後……背中から貫いている右手に力を込める。



 “ギイイイン!!” 


 右手から甲高い音が鳴り響き……。


 

 “ドシュ!!”


 「げぶっ!!」



 力を発動したしたレナンは、メラフの体内より光の刃を幾重も生み出し……剣山の様に串刺しする。


 メラフは気持ち悪い悲鳴を上げた後……微塵となって絶命した。




 こうして……ゼペド達、ギナルの白き神を全滅させたレナンは――。




 「……ゴメン……マリアベル……僕が、もっと強ければ……君を……うう……」



 レナンは空に浮かびながら、一人泣いた。


 

 しかし……。



 “キシャアアア!!” 



 地表に居た龍が吠えるの聞いて、泣き止んだ。



 不思議な事だが、ゼペド達と同じく全身が異形となったレナンには、龍や黒き船は攻撃してこない。レナンの事を敵とは認識していない様だ。



 だが、レナンは龍や黒き船を放置する気は全く無かった。レナンは額に生えた角に意識を集中する。



 “ギイイイイイイン!!”



 途端に爆発的な力が発動し、地を揺るがす程の轟音が彼の体から鳴り響く。



 レナンの体は、5つのオド器官を中心に眩く輝き……真白い太陽の様になった。



 彼は浮かんだまま、両手を胸の前でクロスし……その身を屈める。


 レナンは額に角を生やした第二形態に覚醒した時から、自分の力に何を如何すればいいか、完璧に分かっていた。



 彼は王都に群がる龍やゴリアテ共を、全て殲滅する力を放つ。



 「はあああ!!」



 光り輝く、その身に恐るべき力を溜めていたレナンは、叫び声と共に一気にそれを解き放った! 


 

 “ギュン!!”



 叫び声と共に、レナンの輝く体より放たれたのは、無数の光の矢だ。



 光の矢は長く尾を引いて地上や空に溢れる龍に突き刺さる。



 “ズビュン!!”



 光の矢は龍だけでは無く、4か所の城門に居座るゴリアテにも突き刺さった。ゴリアテが放った棘の魔獣も同じだ。



 光の矢が突き刺さった途端、龍やゴリアテ共は、一斉にその動きを制止する。



 しかし……空中に浮かぶレナンが、その身を眩く輝かせながら、すっと右手を差し出し……一言呟く。


 「……滅べ……!」



 そうレナンが呟くと同時に、差し出した右手をグッと握り締める。



 すると……。



 “ギキイィ!?”

 “キシャアアアァ!!”

 “グオオオオオ!!”



 空や地に無数に居た龍やゴリアテ、そして棘の魔獣が……一斉にもがき苦しみ、苦悶の叫び声を上げる。



 そして――。



 “ボボボボオン!!”



 大きな音を立てて、全ての龍とゴリアテ共は爆散し……粉微塵となった。



 レナンが放った光の矢は、突き刺さった対象を分子レベルで崩壊させる技だ。


 分子レベルで分解された龍やゴリアテの体は、当然再生する事も出来ず……砂の様な残骸となって……全て、殲滅されたのだ。




 今度こそ、救われた王都……。しかし、その惨状は余りに酷く、一体どれ程の死者が居るのか想像も付かない。



 死んでしまった者達の中には、レナンが知る者も多い。


 特にオリビアやリース、ナタリー、そして……マリアベルだ。



 その事を想い、レナンは怒りと悲しみに身を震わせる。涙を流しながらレナンは、空に浮かぶ異形の黒き船を睨み呟く。



 「……残りはアイツだけ……見ていて、マリアベル……!」



 そう呟いたレナンは、異形の肉体に力を発動させ、またも眩く光り輝く。


 ”ギイイイイン!!”


 そしてレナンは光り輝く体を、矢の様に飛ばし……黒い船に突進した。そのまま異形の船に体当たりする積りだった。



 対する黒い船は、機能停止している様で何の動きも見せず、静かに浮かんでいるだけだ。



 「うおおおおお!!」



 レナンは叫びながら飛び、空に浮かぶ異形の黒い船に迫る。



 輝くその体は、光の軌跡を長大に空に示しながら、光の弾丸となって――黒き船に激突した。 



 “ドガガガガアアアン!!”



 レナンに激突された、異形の船は……小さい爆発を繰り返しながら、大きく傾き、落下し始める。




 そして……レナンと共に王都外れにあるエリワ湖へと、ゆっくりと落ちていき……。



 “ドパアアアン!!”



 盛大な水しぶきを上げてエリワ湖へと沈没した。




 光の弾丸となったレナンは、黒き異形の船と共にエリワ湖に沈む。

 


 彼は知らなかったが、この事が切っ掛けで……レナンは更なる力と知識を得て、生まれ変わる事になる。



 彼が愛したマリアベルの遺志を継ぎ、この国と世界を守る為に……レナンは蘇るのだ。



 ……最強無比の黒騎士として――。




いつも読んで頂き有難う御座います! 


 この話で、漸くプロローグに本編が追い付きました……! ここまで長くなってしまい、申し訳ないと思います。せめて毎日投稿出来れば良かったのですが……。


 これからは、幕間として……クマリやリナ達の戦いや、マリアベルとソーニャのエピソード、そしてティアの戦い が続きます。


 そして……新章から描くレナンと戦艦エゼケルとの邂逅が、彼に知恵と力を与え……さらに隔絶した存在に変える事になります。


 そこからが、この箱庭1のもう一つの始まりと言えると思います。


 次話からプロローグ以降の物語となりますが、以前よりお伝えした通り、週一投稿とさせて頂きます。


 次話は6/6日投稿です、次話以降から毎週日曜日投稿とさせて頂きます、宜しくお願いします!


 


 

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんにちは、御里野さん。御作を読みました。  まずはお疲れ様でした。  ここまで構成し、紡ぐのはきっと大変だったと思います。  その上で、どうしてこうなった(´;Д;`)  マリアベル…
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