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254)迫り来る死

 「!? マリアベル!!」

 「お姉様!!」



 振り下ろしたゼペドの右腕から、放たれた光線を受けて倒れたマリアベルを見て……レナンとソーニャは一斉に叫び、彼女の元へ駆け寄る。




 しかし……マリアベルの体は、光線による攻撃で……左手と右足が切断されていた。胸にも深く抉られた傷が生じ、腹部にも光線が貫通した為か大きな穴が開いている。



 誰が見ても、治療しようの無い致命傷だった。



 「こ、こんな……酷い……!」



 ソーニャと共に駆け寄ったルディナもマリアベルの惨状を見て、涙をボロボロ流しながら嘆く。



 ゼペドの攻撃はマリアベルだけで無く……彼に立ち向かった他の白騎士隊にも及んだ。



 マリアベルの真横でゼペドに斬り掛かったオリビアは……無残にも胸部を切断され即死していた。


 ジョゼの従姉であるリースは光線によって袈裟切りされ絶命している。


 魔法が得意で理知的なナタリーは胸部と腰を其々分断され、亡くなっていた。



 ベリンダとレニータの2人は命は助かった様だが……手足や体に光線を受け、出血が酷い。



 にも拘らず、何とか命が助かったベリンダとレニータは、体を引き擦りながら……今にも死にそうなマリアベル元へ向おうとする。



 そんなマリアベルを見てレナンは……溢れる涙を拭おうともせず、切断されてしまった、その体を抱き寄せ叫ぶ。



 「マ、マリアベル!! ど、どうして助けに来た! 逃げろって言っただろう!! 待ってろ、今! 今、助ける!!」



 レナンは気が狂った様に叫んで、何とか異形の腕を光らせ……マリアベルに治療を施す。



 しかし、右手の宝石状の器官をメラフに破壊された為か、レナンは上手く力の制御が出来ない。


 彼に続いてソーニャやルディナもマリアベルに二人で治療を行ったが……。



 「な、何でだ!! 何故治らない!?」



 レナンは出血が止まらず、今にも死にそうなマリアベルを見て、取り乱しながら叫ぶ。



 マリアベルの体に刻まれた傷は、どれも致命傷だった。


 特に腹部の大穴と、抉られた胸の傷は……生きるのに必要な内臓を、どうしようもないレベルで損傷しており、もはや手遅れだった。



 レナンとソーニャ達は泣きながら治療を続けるが……。



 「……もう……いいぞ……はぁ、はぁ……あぐ! ……わ、私は……助から……ない……」


 「うるさい! 黙っていろ!!」

 「お姉様! あ、諦めてはダメです!!」



 息も絶え絶えなマリアベルは……泣きながら必死に治療をするレナンとソーニャ達に向かい、静かで優しい声を、何とか掛けたが……レナン達は聞かずに治療を続行する。




 そこへ……ゼペドが心底どうでも良い様な素振りで呟く。



 「……ふん……勢い余ってやり過ぎたか……手足だけ切り落とす心算だったのだがな……。所詮は下等動物……この程度で、あっさり絶命するとは……」



 呟いたゼペドは、泣き喚いてマリアベルの治療をするレナン達を尻目に、足元に絶命して倒れているオリビアの頭を蹴飛ばした。

 


 “ガン!” 


 「貴様!!」



 ゼペドの行いに、マリアベルを抱き締めているレナンが激高して叫ぶ。



 激高したレナンに構わず、ゼペドは宙に浮かんで叫ぶ。



 「……喜べ、小僧! お前を飼っていた下等動物を、この俺が殺してやったのだ! これで、晴れてお前は自由と言う訳だ。……最強無比の存在で在るヴリトが、その様な首輪を巻かれ……従わされるとは、さぞ屈辱だったであろう……。貴様が持つヴリルの力で、この不遜な者共を皆殺しにし……原始的な街を灰燼にするが良い! ……さすれば、我が同胞として迎えてやろう!」



 ゼペドは、両手を広げて……破壊され、大火が立ち上る王都を示して叫ぶ。



 そう叫んだゼペドに対し、冷たくなっていくマリアベルを大切に抱えながら、強い憎しみを込めて睨む。



 今すぐ飛び掛かって殺してやりたいと、強い激情を感じていたが……腕の中のマリアベルがいる状況では抑えるしか無い。

 

 彼女だけでは無い。この場にはソーニャやルディナ、そして生き残ったレニータやべリンダがいる。



 それ以外の白騎士隊である、オリビアやリース、ナタリーは既に絶命していた。



 レナンは亡くなった彼女達と過ごした日々が脳裏に浮かんだ。


 国王の指示とソーニャの策によって無理やり、この王都へ連れて来られた。


 当初は嫌で嫌でたまらなく、一刻も早く故郷のアルテリアに戻りたいと思っていた。



 そんな訳で自分をこの王都に連れて来たオリビア達白騎士隊の事は、最初好きになれなかったが……任務を通じて共に一年以上、王都で過ごす内に、彼女達を憎む気持ちはすっかり無くなった。



 そればかりか、女性特有の優しさや穏やかさを持つ彼女達に、レナンは随分と癒された。



 そして……今、彼女達はレナンを助ける為に、この絶望的な死地に来てくれた。



 彼女達白騎士隊はマリアベルと共に、王都の危機にはいつだって先陣を切って駆け付けた。


 その中にはレナン自身も一緒に居た。レナンはマリアベルを抱えながら、オリビアやリース、ナタリーと共に王都を駆け抜けた日々を思い起こす。



 もはや彼女達と共に過ごす事が出来ない悲しさに、大声を上げて泣きたかったが……この場には、生き残っているマリアベルやソーニャ達がいる。




 先ずは目の前の危機を排除して、マリアベル達を何とか逃さないといけない。



 段々と死にゆくマリアベルの周りには、生き残ったレニータやべリンダが体を引き摺って集い、ソーニャやルディナが必死に治療を続ける。



 彼女達はボロボロだったが、皆等しく涙にくれ……目の前のマリアベルが救われる事だけを願っていた。



 (彼女だけは……彼女達だけは絶対に助けないと……!!)



 レナンがそう決意している所に、ゼペドが上空より言い放つ。



 「……返答は? 早くしろ……殺すぞ……」



 ゼペドはレナンに、この王都の更なる破壊を促し、自分達への従属を強制するのだった


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/16(日)投稿予定です、宜しくお願いします!


追)誤字等を直しました。

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