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252)白騎士隊

 妻としてレナンを救う為に、死地へ向かおうとするマリアベル。妹のソーニャによる必死な制止にも関わらず、マリアベルの覚悟は揺るがなかった。




 マリアベルは涙顏のソーニャを始めとする白騎士隊を見回し、声を掛ける。




 「……私がレナンを助けに行くのは……ただの我儘だ。お前達は付き合う道理は無い。オリビア……ソーニャ達を連れ、この場を離脱してくれ」


 「恐れながら……その命令は聞けません。我が剣は、姫殿下……常に貴女様と共に」


 「そうです、私は貴女様に助けられ……此処に居ます。貴女様が戦うと言うなら……私だって……」


 「私も同じ気持ちです」「私もだ」「当然、私も」


 「ふぅ……分ってるの、貴女達……? 相手はレナン君すら倒す神様なのよ? まぁ自称だけどね……。貴女達だけなんて、危なかしくって見てられないわ」



 マリアベルの退避命令を力強く拒否したオリビアに続き、リースとナタリーが答える。


 他のベリンダやレニータも迷いなく言い切った。そんな仲間達を見ていたルディナが呆れながら呟く。



 そして……。



 「……当然、私もマリアベルお姉様と共に行きますわ……。お姉様がレナンと出会って生まれ変わったと言う様に……この私はお姉様に救われた事で、新しく生きる事が出来ました……。だから、お姉様がレナンを、いえ、お兄様を助けに行くと言うなら……それが、私の進むべき道ですわ……!」



 オリビアやルディナ達の決意に満ちた声の後……ソーニャも迷いなく答えた。



 「お前達……ふぅ……このバカ共め……分った……もう止めん……。だが、約束しろ……決して命を無駄にするなと。分ったな?」



 「「「「はい!」」」」



 全員の声を聞いたマリアベルは、溜息を付きながら、皆に釘を刺す。




 こうして……白騎士隊の皆が、レナンを助ける為に動き出した。



 マリアベルも皆に続こうとしたが……何も無い空中の一点に、何やら視線を感じた。



 「……?……」


 「姫殿下……どうなされましたか……?」



 違和感を感じて立ち止まったマリアベルに、傍に居たオリビアが問う。



 「……誰かに……見られていた様な気がしたが……そんな筈はあるまい。……気のせいだった様だ……。それより、オリビア……」



 問われたマリアベルは視線を感じた空中に目を凝らすが……あんな所に、人など立てる筈も無く、自分が感じた違和感を否定した。


 

 そしてオリビアだけに聞こえる様に、声を潜めた。



 「……ええ……承知しております……ソーニャ様の事ですね……」


 「ああ、私に万が一の時は……ソーニャだけでなく皆を連れて脱出しろ。勿論、お前もな」



 マリアベルの意図が分っているオリビアが答えると、マリアベルは他の者達に聞こえない様にオリビアに指示を出した。



 「……私自身の事はお約束は出来かねますが……ソーニャ様だけは、何としてもお守り致しましょう。……それと、貴女様も……」


 「お前達自身の身を大事にしろ、と言っても……お前は言う事を聞かんしな……。全く不器用な奴め……だが、私にはかけがえのない忠臣だ。今際の言葉になるやも知れんから、今ここで言わせて貰う。オリビア、礼を言わせてくれ。今まで有難う」


 「……ひ、姫殿下…も、勿体なき……お言葉……」



 オリビアの決意に、マリアベルはフッと笑った後……彼女に向き直り、真摯に礼を言う。


 対してオリビアは、その言葉に感極まった様で、涙を浮かべながら返答する。



 そんな彼女の肩をポンポンと叩いた後、マリアベルは決意新たにレナンが居る方を見て呟く。



 「……待っていろ、レナン……私が、必ずお前を守って見せる……!」



 マリアベルは、力強く呟いた後……レナンの元へ急ぎ向かうのだった。




  ◇   ◇   ◇




 “ガガアン!!“


 「うぐぅ!」



 バルコニーの床に叩きつけられたレナンは、血を吐いて苦悶の声を上げる。


 白き神を自称したゼペド達に、一方的に攻撃され……何度、血反吐を吐いたか分らない。



 「雑魚の分際で……無駄な抵抗を続けやがって……」



 “ガッ!!”



 床に埋まったレナンに、ゼペドが空より舞い降り、彼の頭を踏み付けながら……下らなそうに呟く。


 「う……うぐ……」 


 “ググ……”



 対してレナンは、踏みつけられた状態から、起き上がって反撃しようとする。



 「く!? コイツ、また……!」 


 “ドゴオ!“



 反抗するレナンに苛立ったゼペドは、彼を蹴飛ばす。蹴飛ばされたレナンは転がされ仰向けに倒れた。



 「ねぇ……もう、その右腕……潰しちゃおうよ……。それが無くなったら、何も出来ないだろうし。ベルゥ様の元に連れて行くのに、手足が無くなっても別に構わないだろう?」


 「そうだな……いい加減、苛ついていた所だ……」



 アニグの言葉に同意したゼペドは、仰向けに倒れたレナンの右腕を踏みつけ……力を込める。



 “ググ!”

 

 「ぐああああ!!」



 右腕を踏み潰されそうなレナンは、激痛で叫ぶ。対するゼペドは無表情で、更に力を込める。

 

 激痛で叫ぶレナンをアニグやメラフは……ニヤニヤと見下ろすだけだった。



 そんな中……。



 「うおおお!!」

 「む!?」



 勇ましい叫び声と共に、ゼペドは上から斬り掛かれそうになり、レナンから飛び退いた。


 マリアベルが跳躍してゼペドに攻撃したのだ。



 「レナンは私のモノだ! 返して貰うぞ!!」



 レナンの前に立ったマリアベルは大剣をゼペド達に向け叫んだ。


 深いダメージを負って倒れたままのレナンに、ソーニャやオリビア達白騎士隊が駆け寄り介抱する。



 「……マ、マリアベル……それに……み、皆も……。ダメだ……奴らには勝てない……逃げるんだ……」



 抱き起されたレナンは、助けに来たマリアベル達に、苦しそうな声で逃げる様に訴える。



 「ソーニャ、ルディナ! レナンを下がらせ、回復させろ! 私は……あの痴れ者共を討つ!!」



 マリアベルの勇ましい声を受け、ソーニャとルディナ以外の白騎士達は、ゼペド達を取囲むのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/9(日) 投稿予定です、宜しくお願い申し上げます!


追)誤字を修正しました

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