250)レナンの反攻
異形の姿に変身したゼペド達……彼等は自分達がレナンと同じ種族である事実を明かし、共に来る様に迫った。
しかしレナンは――
「……お前達と共に行く……? ふざけるな! 王都をムチャクチャにしたのはお前達だろう! 一体どれ程の人間が死んだと思っている! 誰が、お前達などに従うか!」
メラフ達の指示に、レナンは真っ向から拒絶した。
「……これは……家畜に子どもの頃から飼われていた弊害かな……」
「ククク……仕方ない事とは言え……此処まで無知だと笑えてくる」
断固拒否したレナンの言葉を聞いて、アニグとメラフは心底呆れながら、レナンを見下す。
そんなレナンに対しゼペドは……。
“ヒュン!!”
一瞬で姿を消し、眼下に居たレナンの背後に移動し……彼を掴んだ。
体全体を異形の姿へ変えたゼペドの動きは、もはやレナンですら捉える事が出来なかった。
レナンは躱す事も、避ける事も出来ずに……背後に回ったゼペドに捕まってしまう。
そして、レナンを掴んだ状態で、ゼペドは空中へと飛ぶ。
「良く見るがいい、小僧! この……木と石で出来た原始的な街を! そして見るがいい! 我等ヴリトの科学力が生んだ無数のレギオンや、空に浮かぶエゼケルを! お前を飼っていたのは……我等ヴリトが、太古に生み出した家畜なのだ! 家畜が住むあばら家を如何に破壊しようが! 家畜そのものを嬲り殺そうが! 主たる我等ヴリトなら、当然な事だ!」
ゼペドはレナンを掴んだまま、空から……破壊されていく王都を見せて叫ぶ。
上空から王都の惨状を見せられたレナンは絶句した。
空を舞う無数の龍は次々と降下し、まだ生きて逃げ惑う人々を襲い……または全てを焼く光線を吐き出している。
美しく活気に満ち溢れた王都は、完全に破壊され……街路は龍が食い散らかした人々の死体で溢れかえっていた。
広大な王都は至る所で炎上し、大火が立ち上って大地震が来たかの様に、建造物が崩壊している。
そればかりか、王都に設けられた4か所の城門には、巨獣が陣取り……破壊をもたらす光線と、棘の魔獣を撒き散らす。
今、この時――王都には正しく地獄が現出していた。絶望と死が支配する世界だ。
「……が、学園が……闘技場が……あんなに、崩れて……王都が、こんなに燃えて……あ、有り得ない……」
レナンはゼペドに掴まれた、空から見せられた王都の地獄絵図に、力なく呟く。
彼は目の前の光景が、現実とは信じたくは無かった。
「……家畜共の国など、この通り……。我等ヴリトが、ほんの軽く力を振るえば簡単な事……。小僧、己が立場を理解し……我等に従え……」
自分達が作り出した王都の惨状を、レナンに見せながらゼペドは、彼に恫喝する。
だが、レナンは――
“キイイイン!!”
「む!?」
“バアアン!”
レナンは、右手の力を発動させ、ゼペドに向け光弾を放った。
「ぐ!」
ふいを突かれたゼペドは、レナンを手放してしまう。空中から落とされたレナンは、身を翻して体勢を整え……真下に在った王城の屋根に、何とか着地した。
「……どうやら……貴様には身の程を、体に教えてやる必要が有る様だ……」
屋根に着地したレナンに、頭上からゼペドが怒りを込めながら話す。ゼペドの周りにはアニグやメラフも飛来して集う。
「お前達も力を貸せ……。この痴れ者に立場を分らせてやる」
「……まぁ、今まで邪魔された分のお返しも、しないとねー」
「確かに、コイツの所為でアステア侵攻が、遅れたのは事実だ……」
ゼペドの声に、アニグとメラフも応え……レナンに向かい攻撃体勢を取った。
3対1……しかも、人数差だけでなく……レナンに対し、相手は遥かに強く格上の存在だ。
しかし、レナンには“逃げる”と言う選択は最初から無かった。ましてや、ゼペド達に従うと言う選択も。
そんな器用な心根ならば、腐肉の龍相手に……一人で戦ったりしないだろう。
レナンは、自分の上空に浮かぶゼペドに狙いを定め特攻する。
指揮系統を担うゼペドを倒せば、他の2人は隙が出来ると考えたからだ。
ゼペドに向かい、右手を光らせ飛び上がったが……。
“ドゴオウ!!”
レナンは、真横からの不意打ちを喰らい、王城の壁に激突する。
アニグが攻撃を与えたのだ。レナンは激突した壁の瓦礫に埋もれてしまった。
追撃は止らず、間髪を入れずにメラフがレナンが埋もれている王城の壁に、光弾を放った。
“ガアアアン!!”
着弾した光弾は爆発し、大きな火球を創り出した。爆風で王城が激しく揺れる。
やがて火球は大きな火に変わり、レナンが居た所より空高く立ち上った。
大火が王城を焦す中……攻撃を受けたレナンが炎の中から出て来ない事にアニグが苛立ちながら呟く。
「……出て来ないな……まさか、この程度で死んだの?」
「アイツは不完全な第二形態への覚醒状態しか……出来ない様だったから、在り得る話だ……」
アニグに次いでメラフがつまらなそうに答える。
そんな時、レナンを包む炎から光が天高く立ち上った。それを見たゼペドが獰猛な笑みを浮かべ呟く。
「……雑魚なりの、矜持が在る様だ……何の意味も無いがな……」
ゼペドが呟いたと同時に、立ち上った光の柱より無数の光が帯となって軌跡を描き……空と地上で、破壊と死を撒き散らしていた龍に突き刺さる。
龍に突き刺さった光の帯は、その体内で幾重にも分れ……針山の様に飛び出した。
内部から串刺しにされた龍は、絶命した様で……空を舞っていた龍は落下し、地上で人を貪っていた龍は崩れ落ちた。
レナンが放った技は、彼が巨獣との戦いの際に生み出した技だ。
レナンを包んでいた炎が収まり……そこから姿を現した彼は、技を放った為だろうか、異形の右手を高く上げ、崩れた王城に立っていた。
彼は体のいたる所から血を流し、衣服も焼けボロボロの姿だった。高く上げた右手から立ち上る光の柱。
そこより放たれた無数の光の帯は、王都を襲っていた龍達を粗方一掃した様だ。
龍達が倒された事を見て、建物に隠れる等して何とか生き残った、王都の住民達は歓喜の声を上げたのだった。
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