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249)ヴリト

 ゼペドの襲撃により、国王を始め多くの者が殺された玉座の間で……レナンは生き残った者達を逃す為、一人でゼペド達と戦おうとする。



 そんなレナンを見て、ゼペドはイライラしながら呟く。



 「……誇り高きヴリトが、虫けら共に良い様に使われやがって……」


 「ヴリト……?」



 ゼペドはレナンを見て吐き捨てる様に言うが、レナンは“ヴリト”の意味が分からず問うた。



 「今のお前に教える義理は無い……先手は譲ってやるよ……身の程を教えてやる」


 

 対してゼペドはレナンの問いに答えず、彼を挑発する。



 レナンはゼペドの挑発に答えず、攻撃を仕掛けた。彼は飛び上がって、異形の右手に生えた鋭い棘でゼペドに斬り掛かったのだ。



 ゼペドはレナンの斬撃を、避けもせずに僅かな動きで躱した。そして強烈な上段蹴りを彼に喰らわす。 

 


 「ぐぅ!」



 自分を凌駕する膂力を持つゼペドの蹴りを喰らったレナンは、咄嗟に左手でガードしたが吹き飛ばされる。

 


 “ドガアン!!”



 蹴りを喰らったレナンは、吹き飛ばされ玉座の間の壁に激突する。


 そこへ、すかさずゼペドの追撃が迫る。ほとんど瞬間移動の様なスピードだ。 ゼペドは体勢の整っていないレナンに向け連撃を加える。



 “ガガガガ!”



 レナンはカメの様に固まってガードをするが、ゼペドは容赦なく上から叩きつける。



 元より、まだ幼いレナンと相手は筋骨隆々とした大男……レナンとゼペドは、ヴリトと言う同じ種族では有るが、戦士としての能力と経験は、圧倒的にゼペドの方が上だった。



 サンドバックの様に一方的に、叩きつけられたレナンは……既にボロボロで血塗れとなった。


 そんなレナンの姿を見ても、ゼペドは眉一つ動かす事無く、攻撃を続行する。



 ゼペドは殴られ続け、弱ったレナンの頭をボールの様に掴むと……思い切り反対側の壁に向かい投付けた。



 “バガアアン!!”



 レナンは玉座の間の壁を突き抜け、隣室の控えの間の壁に激突する。



 「……う、うう……」

 「弱すぎる……」



 壁の向こうで蹲るレナンに向け、ゼペドはつまらなそうに呟き、右手を差し出す。



 “キイイイン!!”



 ゼペドの右手は、レナンの様な異形の姿になり、音を立てて光を溜め始める。



 そして……。


 

 “キュバ!!”



 ゼペドの右手から光が迸り、甲高い音と共に光弾が放たれた。 


 “ガガガガアン!”


 光弾は音よりも早く飛び、玉座の間の床を砕きながら、隣室に居たレナンを飲み込む。



 そして、その光弾は隣室を崩壊させ……遥か遠方の森に向かって飛び去った。そして……。



 “ドドドドドドドオオン!!”



 光弾は森に激突すると、大音響とと共に爆発し、巨大な火球を形成する。



 「……チッ……勢い余って、殺してしまったか」



 舌打ちしてゼペドは、崩壊した隣室を見ながら呟く。しかし……。



 “キイイイン!!”


 「む!?」



 何処からか鳴り響く甲高い音にゼペド達は警戒する中……。



 “ドキュ!!” 

 


 ゼペド達の足元より、眩い光が放たれ……彼等を飲み込む。


 “バガアアアン!!”


 レナンが放った、光の攻撃はゼペド達に直撃すると玉座の間ごと爆発し、空に大きな火球を形成する。




 ゼペド達の階下より放たれたレナンの攻撃は、油断していたとは言えゼペド達を直撃した。



 「はぁ! はぁ!」



 レナンは玉座の間の階下より……右手を上に上げたまま、荒い息をする。


 先程、ゼペドの光弾が迫った時……レナンは咄嗟に外から飛び降り、窓から階下に入って、ゼペドの真下から攻撃したと言う訳だ。



 レナンは腐肉の龍を消滅させた、あの力を全力で放った。


 その攻撃により、玉座の間は完全に崩壊し、土煙が立ち込める。



 いくら強いあの男達も、流石に絶命したとレナンは確信したのだが……。



 「……ほう……中々のヴリルだ……。ガキだと思い、侮ったわ……」



 火球は消えたが、爆発の影響で土煙が舞う中……感心した様なゼペドの声が響く。



 「ば……馬鹿な……」



 全てを破壊する心算で放った全力攻撃を受けて、平気そうなゼペドの声を聞いて……レナンは愕然とする。


 そんな中……。


 “ブワッ!!”


 声が響いた空より、強い力の奔流が生じ一瞬で土煙が晴れる。



 そこに現れたのは……異形の肉体を持ったゼペド達3人だった。



 その姿は、首から下が龍と人を掛け合わせた様な形状であり、その体には鋭利な棘が生え、長く太い尾が伸びている。


 真白いその異形の体には、両手両足の甲と、首元に宝石の様な器官が、眩く光り輝いていた。



 「……その……姿は……」



 レナンはゼペド達の異形の姿に、思わず問いを口にする。よく見れば自分の異形の右腕は、彼等の今の姿に非常に似通っていた。



 「ふん……無知な、お前に教えてやろう……。この姿こそ! 最強にして頂点を司る我々ブリトの証……! 小僧……腹立たしいが、貴様も我等と同じ種族よ……」


 「ぼ、僕が……お前達と同じ……!?」



 ゼペドより伝えられた話を聞いて驚愕するレナン。



 「そうさ! 僕らは誇り高きヴリト! 心外だけど……君も同じ種族だよ……。だって、ホラ」


 「お前の方は、中途半端な覚醒しか出来ていない様だがな……何故、こんな奴が……俺達の邪魔を……」



 ゼペドに続き、アニグがレナンと同じガントレットの様な、自分の腕を指差しレナンに説明する。


 対してゼペドはレナンに対し敵意に満ちた目で呟く。レナンによって、ギナル皇国が行なってきた侵略を防がれた事を、恨んでいる様だ。



 「……まぁまぁゼペド……この子をベルゥ様の元へ連れて行けば、きっと許してくれるんじゃないかなー。“鍵”の件は仕方なかったけど……このロデリアとそれ以外の、他国の侵略を一気に終わらせ……旧体制派の残党を捕獲した、となれば……十分に合格ラインだろ?」


 「ああ。結果は多い方が良いだろう……。おい、お前……俺達と共に来て貰うぞ」



 ゼペドを宥めながらのアニグの提案に、メラフは納得しレナンに迫るのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は4/28(水)投稿予定です、宜しくお願いします!


追)誤記を修正しました。

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