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246)地獄絵図

 その日――王都は良く晴れた青空が広がっていた。




 時間としては、昼前……ようやく朝の忙しさから落ち着きを取り戻した時間だ。



 それでも王城から延びるメインストリートは沢山の人達でごった返しており……賑やかだが、いつもの平和な日常だった。





 しかし……。異常な何かが王都の空に現れ、行き交う住民達が、それを見て立ち止まり訝しむ。





 「お、おい……何だよ、アレ……」「……鳥……なのか……?」




 王都の空に広がる黒い何か……。それらは遠目には黒い鳥の様な点が大量に固まって黒い染みの様にも見える。



 それらは瞬く間に四方から王都の空を覆い尽くすと、溜まった水が零れ落ちるが如く地上に降下し出す。



 不気味に広がる黒い染みを地上から見ていた、王都の人々は……突然、舞い降りてくる無数の“ソレ”を見て絶叫する。



 「あ、あれは! ば、化け物だ!!」「うわあああぁ!!」「た、助けてくれー!!」



 地上に舞い降りてくる無数の“ソレ”は……異形の龍だ。




 お伽噺で聞かされるような鱗を纏った爬虫類らしい龍では無い。



 そこに現れた異形の龍は、ぬっぺりとした長い頭部に、巨大過ぎる口……そして小さな目が大きな口の上に付いている……それは正しくヘビの様な顔を持っていた。


 その怪物は黒い色で、長い胴と尾を持つ。背中には翼が生え4本足で這う様に歩く。短い前足は太く長大な爪が生えていた。


 頭部だけ見ればヘビの様な顔をしているが、足が生え、翼が有る事より……異形では有るが龍と呼称されるのが正しいだろう。




 異形の龍が空から舞い降りると……王都の人々は恐怖で蜘蛛の子を散らすように、一斉に逃げ出した。



 龍は逃げ惑う人々を見て、迷いなく貪り喰い始めた。途端に地獄へと化す王都だが……脅威は地上に居る龍だけでは無かった。


 空に舞う沢山の龍も、地上に向け……一様にそのあぎとを開く。



 すると、瞬く間に眩い光が集まり……光線となって放たれた。



 “ドキュ!!”



 光線は一斉に放たれて地上を焼き、爆裂した。

 


 “ガガガアァン!!”



 爆音と共に、龍が放った光線は次々と巨大な火球を王都の街に形成する。



 空には無数の龍が、舞いながら……光線を吐き、動く者を見れば急降下して襲う。



 地上は、破壊された街と、喰い散らかれた人々の死体で埋め尽くされた。


 



 そんな地獄絵図と化した王都の空に……突然、割れ目が生じる。天が裂けたのだ。


 巨大な裂け目の奥に見えるのは……何も無い真黒な虚無だ。



 そんな漆黒の虚無より……巨大な異形の物体がゆっくりと進み出る。その物体は真黒く、とにかく巨大であった。



 物体の形状は、魚の様な流線型であり、鋭利な棘が後方に何本も突き出ている。


 その異様な物体について、王都の民達は知る由も無かったが……ギナル皇国で白き神と崇められているゼペド達が乗るエゼケルと言う船だった。



 真黒く巨大なエゼケルは、その表面に真白い光を幾つも走らせ、悠々と王都の空に、裂け目より進み出る。



 エゼケルは完全に黒き裂け目より出ると、ピタリとその進行を止める。


 

 そして、エゼケルの表面に大きなレンズの様な装置が一列に現れた。



 そのレンズ体は、徐々に光を溜め……次の瞬間――。



 “ビュイン!!”



 エゼケルの胴体左右に並んだレンズ体より、長大な光線が王都の街に放たれた。


 光線は弧を描いて、全数地上に直撃した。



 そして――



 “グワァ! ドドドドドン!!”



 光線の直撃により沢山の火球を生んで、一斉に爆発した。



 広大で華やかだった王都は、現れた無数の龍と、エゼケルの放った光線により無残に破壊され、焼かれてしまった。



 立ち上る幾つもの炎の柱に、瓦礫の山となってしまった歴史ある王都の建造物。


 そして……食い散らかされた余りに沢山の民達が、地を埋め尽くす。




 現出した地獄の中……まだ生きている人々は、必死な形相で逃げ惑うが……次々に龍に喰われるか、光線で焼かれてしまう。



 それでも、生存者達は王都の外へ脱出しようと、城門に走るが……更なる絶望が待っていた。



 王都に設けられた4か所の城門へ、災厄から逃れる為、生き残った人々は向かったが……城門の上空に真黒い円盤が現れる。



 その円盤は50m位の大きさだろうか、4か所ある城門上空に、それは突如として現れた。



 円盤から巨大な何かが落下し……。“ゴガガガアアアン!!”


 落ちて来たソレは、轟音を響かせ……城門を踏み潰しながら降り立った。



 天から落下した存在は……巨大な魔獣だ。その魔獣は、かつてレナン達が多く犠牲を払って倒した巨獣だった。



 全高10m、ゴリラとトカゲを掛け合わせた様な巨獣は、上半身の胸部と腕が極端に発達し、両腕は異様に長く、尖った爪が地面に付く程だ。


 巨獣の頭部は長く突き出ており、サンショウウオに似た形状だ。そして、目と思しき赤く光る器官は正面に8個放射状に並んでいる。


 ぬめっとした白っぽい筋肉質の体に、半透明な目の様な器官が、至る所に付いていた。


 そして背中には甲殻類を思わせる鋭角な棘が無数に生え揃っている。



 この異様な巨獣は、ギナル皇国で白き神と崇められるメラフが生み出した生物兵器だ。


 この生物兵器はゴリアテと呼ばれ……圧倒的な再生力と広範囲の殲滅力を持ち、都市攻略用に設計されている。



 地上に降り立った4体のゴリアテは……同時に両手を付いて前のめりになる様に、身を丸めて倒れ込んだ。そして……。



 “バシュー!!”



 倒れ込んだ4体のゴリアテは、その背より生えていた、無数の棘を放出する。



 飛び散った棘は光の尾をなびかせながら地上に突き刺さると、4本足の蜘蛛の様な魔獣に姿を変え……城門に集った人々を襲う。



 惨劇はコレだけでは終わらなかった。4体のゴリアテは……示し合せた様に、同時に起き上がった。



 そして、その巨体に埋め込まれている半透明な目の様な器官より光線を真白い光線が一斉に放たれた。



 “キュバ!!”


 

 ゴリアテの半透明の器官から放たれた光線は四方八方に放たれ、その光線の軸線上在ったモノは……人も、建造物も全て焼かれた。



 放たれた光線は、ゴリアテを中心に無数の爆発を生じ……更なる地獄が展開される。



 王都を襲撃した龍も、巨獣ゴリアテも……そして空に浮かぶ異形の船エゼケルも……王都の民を誰一人生かす心算は無い様だ。



 逃げ場を失った王都の民は……ある者は半狂乱になり闇雲に逃げ回り、ある者は余りの恐怖で絶叫し、ある者は全ての感情を無くして座り込んだ。



 彼等の起こす行動は誰一人として一貫性が無かったが……唯一つだけ、等しく理解している事がった。



 生き残っている王都の民達が共通して刻み込まれたのは……今日と言う日が、この世の終わりと言う事だった。



 だが、彼らは知る由も無かった……この地獄は始まったばかりと言う事に――



 何故なら、更なる地獄を与えんと……黒き異形の船より、3人の白き神達が王城へ向かい飛び去ったからだ……。


いつも読んで頂き有難う御座います! プロローグに本編が至るまで、週二回投稿を心がけます!


従って次話は2/18日 投稿予定です、宜しくお願いします!

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