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239)それからの彼女達

 「あふ……はぁ、はぁ……あぁ……!」


 「はぁ……はぁ……」


 夜更けのマリアベルの自室にて……若い女の嬌声と、男の荒い息遣いが聞こえる。彼らはベッドの上で裸で絡み合っていた。




 その男女はレナンとマリアベルだ。




 「はぁ、はぁ……フフフ……」



 激しい情事の後、疲れ切った様子の二人だったが……マリアベルがレナンを抱いたまま、突然可笑しそうに笑う。



 「……何がおかしいのさ……?」



 彼女に笑われたレナンは、馬鹿にされた様に感じ、口を尖らせて問う。



 「フフフ……すまない……。だって、お前……最初、あんなに嫌がってたのに……最近は、そうでも無いんだな……って思ってな……」


 「……別に……そうでも無いよ……」



 悪戯っぽく笑いながらレナンを抱き締め答えるマリアベル。対してレナンは機嫌が悪くなった様で、目を逸らして呟く。



 それからレナンは急に現実に戻った様にベッドから起き上がった。




 だが、マリアベルは……そんなレナンにそっと抱き着き耳元でささやいた。




 「……すまん……お前は悪くない……この赤い首輪が示す通り……お前は私のモノだ……。私とお前が夜を共にするのは……私が命じたから。だから全ては私が悪い……。お前は何一つ気に病む事は無い……」



 そう囁いたマリアベルは、その豊かな胸にレナンの頭を埋めさせる。そして何より愛おしそうに、彼の額にキスをした。



 「お前は私のモノ……誰にも渡さない。だから……私だけを愛して……。そして、早く……私にお前の子を……」



 マリアベルは、レナンの首に巻かれた赤い首輪に手を添え、囁きながら……彼を押し倒した。


 対してレナンはマリアベルに誘われるまま、彼女に従う。



 そして暗い部屋で再び……レナンの荒い息と、マリアベルの嬌声が響くのであった。




 レナンとマリアベルが共に夜を過ごすようになって半年。それは国王の厳命によりマリアベルとの子を成す為だった。



 半年前までレナンは、のらりくらりと国王の命令を引き延ばしていたが……建国祭での王都襲撃を境に、そう言った曖昧な事は許されなかった。



 マリアベルの誘いのまま、レナンは彼女との情事に至ったが……肌を合して愛し合う度に、マリアベルと愛し合う事はレナンに取って苦では無くなってきた。




 むしろ最近では彼女との関係を望む自分が居て――それ以上、その事を考えるのは止めた。




 “マリアベルが言う様に、自分は命じられて彼女との情事を重ねている”




 それしか道は無く……断れば大罪を犯した父と故郷アルテリアは大変な事になる。




 そしてティアも……。




 その様に自分に言い聞かせ、レナンは今日もマリアベルと愛し合う。



 罪悪感が押し寄せ、脳裏にティアの後ろ姿が浮かんだが……何も見えず、何も聞こえない振りをした。



 心の中で、何もかもを塞いで……マリアベルの美しい体に、自分を強く打ち付けると……彼女は大きな声を上げて、気をやり倒れ込む。



 普段は強がる彼女が、レナンとの情事の際は立場が逆転し……彼が愛せば素直すぎる程に、嬌声を奏で……レナンに従い応えた。



 それは……まるで、拙く幼いレナンを包み込む様に……甘く、魅惑的だった。マリアベルと愛し合う時は、一人の男として強くなった気がした。


 


 マリアベルとの情事は……雁字搦めに縛られ、苦しい想いをしているレナンに取って、慰めだけで無く、男としての尊厳と彼女からの愛を与えられていた。




 レナンは、気をやり果てたマリアベルを抱きながら……自分も泥の様に深い眠りに落ちたのだった。





   ◇   ◇   ◇





 「……お早う、ソーニャ。良い朝だな」


 「お早う御座います、お姉様。本当に素敵な朝ですね」



 レナンと夜を過ごした後……マリアベルは王城の食堂で、いつもの通りソーニャと朝食を取る。



 なお、マリアベルはレナンと結ばれてから、王城では厳つい兜をかぶる事は無かった。



 もはや、亜人である事、女である事を隠す必要が無くなった為だ。



 ちなみにレナンは騎士のディーイと共に王子アルフレドに剣術指南をするのが朝の日課になっている。



 その為、朝だけはソーニャはマリアベルと二人で過ごせる貴重な時間だった。



 レナンとマリアベルが寝所を共にする様になってから……ソーニャは別室で暮らすようになった。



 以前は3人でマリアベルの広い部屋で過ごしていたが、二人が愛し合う様になってからは、ソーニャはマリアベルに対し、遠慮する様になったのだ。




 「……気を遣わせて済まないな、ソーニャ……」


 「何をおっしゃいますか、お姉様。ソーニャはお姉様の幸せそうな姿を見れば、それで良いのです」


 「寂しくは無いか……?」


 「……“寂しくは無いか?”と言われれば、正直……少し寂しいですが……そんな事より、こんなお姉様の嬉しそうな顔を見られるとは! 本当に何よりです!」


 「そ、そんなあからさまな態度に、出してないだろ……」



 満面の笑みで冷やかすソーニャに対し、マリアベルは口を尖らして抗議する。



 「フフフ……」「ハハハ……」



 お互いの様子が面白かったのか、二人は可笑しそうに笑う。そんな二人は本当に仲の良い姉妹その物だった。





 暫く笑い合った後、落ち着いたマリアベルとソーニャだったが……二人が共通して、気に掛けている事を口に出す。



 「……所で……ティアの居場所は分ったか?」

 

 「いいえ……あの子……最近の足取りはさっぱり……」



 マリアベルの問いに、ソーニャは伏し目がちに答える。



 国王との謁見の後……ティアは変わってしまった。レナンを取り戻す為、更に強く有るべきと誓った為だろう。



 今までの生き方全てを否定する様に……学園も急に辞め、クマリやミミリ達の元から去ってしまった。



 「……そうか、手紙だけはマメに……レナンの元に届く様だ。心配を掛けたくないと思っているのか……やたら元気な言葉が並ぶらしい。だが、いつも手紙に居場所は記されていない様だ」


 「ええ……ティアの家族や、友人達も同じ様な状況です……。そう言えば、師匠であるクマリはティアと会った事が有るとお聞きしましたが……?」



 「ああ、その事はクマリから聞いた。少し前の事らしいが……。森に在る拠点にティアが突然訪ねて来たそうだ。別人の様に強くなって……しかも何故か、レナンが森に放したギガントホークを操ってな……」


 ソーニャに問われたマリアベルは、クマリから聞いたティアの近況を話し始めたのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います!


今回はティア……ゴメンの回です……。でも、ティアもいつかは報われますので……。


 次話は3/14(日)投稿予定です、宜しくお願いします!


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