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234)諸悪の根源

 国王カリウスとの謁見で、ティアはカリウスの姿を初めて目の当たりにして、自分とレナンの仲を引き裂いたのは……正しく、この国王が諸悪の根源だと改めて理解した。



 自分を罠に嵌めたソーニャは、レナンを連れ去ったマリアベルは……この国王の命に従っただけだと。この偏狭な国王は自分の意に従うまで、権力を振りかざし服従させるのだ。




 レナンを連れ去った“真の敵”を前にティアが、怒りと悔しさに震えながら跪き俯いていると……その憎き国王カリウスが彼女に、冷徹な態度で声を掛けて来た。



 「……改めて問うぞ、ティア フォン アルテリア……。そなたの望みを、もう一度申してみよ……。但し、今度は世迷言を申すなよ」



 そう告げるロデリア国王カリウスの声は、静かだが冷たく血の通っていないものだった。



 「……何度でも申し上げます。私の望みは唯一つ、我が婚約者レナン フォン アルテリアをお返しください」



 強権を発動し、レナンを諦める様に圧力を掛ける国王カリウスに対し、ティアの言葉は全く揺るがなかった。



 そんなティアに対し、カリウスは……。



 「痴れ者が! 誰か、この不届き者を地下牢へ放り込め!」

 「お待ち下さい!!」



 激怒したカリウスが叫んだかと同時に、レナンが立ち上り声を大にして制止した。そして改めてカリウスの前に跪いた。



 「……偉大なる……国王陛下……この私、レナン フォン アルテリアは……陛下の御命令に全て……抗う事無く、従います。

 それ故、此度の“姉”の不始末を何卒お許し下さい! ご不満であれば、今すぐ我が首を斬り落として献上致します……!」



 右手を首に当て国王カリウスに跪いて懇願するレナン。彼が右手に力を込めれば……言葉通り、その首は斬り落とせるだろう。



 レナンの命懸けの懇願を見た者達は、その覚悟に言葉を失う。横に居たティアも、国王の後ろに立つマリアベルも血の気の引いた顔で彼を見つめる。



 レナンとしてはティアがこれ以上国王の怒りを買う事を何とか避けたかったのだ。



 地下牢の劣悪な環境はレナンも聞き及んでいた。そんな所にティアを放り込まれる事等彼は断じて有り得ないと考えていた。




 自分の思惑通り隷属の意を示したレナンを見て、若干気を良くした国王カリウスは後ろに立つマリアベルを見て問う。



 「……大した覚悟だ、レナン……。そなたの揺るぎない忠義を余に見せるならば、何も言う事は無い。さて……マリアベル、レナンはこう申しているが。お前は如何なのだ?」


 「陛下の……御心のままに……」



 カリウスに問われたマリアベルも、レナンの覚悟を見て国王に従うしかなかった。



 「見ての通りだ、ティア フォン アルテリア……我が意に従い、レナンと我が姪マリアベルは子を成し……長きに渡りこの王国の盾と成ると申しておるぞ? レナンを連れ帰るのは……どうやら、難しそうよの」


 「…………」



 自分の思う通りに事が運んだカリウスは、ティアを見下しながら挑発する。




 対してティアは頭を垂れ跪きながら……内心は怒りと悔しさで爆発しそうだった。


 今この瞬間にも国王カリウスを、思い切りぶん殴りたかったが……ティアを守る為に自分を犠牲にして庇ったレナンと、祖国の父を思い何とか踏み止まった。



 ティアが怒りで震えているのを見て、カリウスは思い出した様に軽い調子で声を掛ける。



 「……だが、余とてそなたの恋慕の情に思う所は有る……。そこでだ、ティアよ……そなたがレナンの妾に成るのはどうだ? 側室にしてやりたいが、そなたは少々お転婆過ぎるからな……」


 「私に……レナンの妾になれと……?」



 挑発するカリウスに、ティアは怒りで声を震わせながら返答する。



 「悪い話では有るまい? 但し……妾であろうが、側室であろうが……そなたとレナンの間に生まれた子は、王国で引取り育てる。何せレナンの力を引き継ぐ子だ。うっかり街を吹き飛ばされても敵わんからな。この王城で余、自らが育て上げようぞ。この王国を守る最強の盾としてな……」



 「……その言い様……! レナンを家畜とでも……」「ティア、止せ」



 ティアの怒りなど我関せず、国王カリウスは増長した言葉を浴びせる。その言葉はレナンの事を人として扱わないモノだった。



 そんなカリウスの言葉で、遂に我慢ならなくなったティアは拳を握り締め、国王に殴り掛かろうとしたが……横に居たレナンに強く制止された。


 一番辛い筈のレナンに止められたティアは……彼の為に怒る事すらレナンを強く苦しめる事に気が付いた。




 この場で国王に何を言っても、結果的にレナンを追い込み……更に傷付けるだけだ、と理解したティアは……カリウスが居るこの玉座から一刻も早く飛び出したくなった。


 これ以上、国王カリウスの声を聞いていると……怒りで自分が抑えられ無くなりそうだったが……レナンを取り戻す為に、どうしても折れる訳に行かなかった。



 レナンを取り戻す為に、諦める事等ティアは出来なかった。”今回はダメなら次回に生かすだけだ、その為に行動しなければならない”と決意した彼女は強い意志を持って国王に話す。


 ティアが話すのは単純であるが、絶対に出来ないであろう願いに関してだ。その事はティア自身、最初の最初から分っていたが……もはや、それしか道は無いと覚悟を決めたのだ。



 レナンを取り戻す為……命を賭けて来た彼女にとって、一度断られた位で引く気にはならなかったのだ。



 「……陛下……色々と無礼を働き申し訳御座いません。故に私には褒美は不要です。ですが……確認させて頂きたい事が御座います」


 「ほう……褒美が要らんと申すか、殊勝な事よ。それに免じて、今迄の不遜な態度、不問とし……そなたの問いに答えてやろう」


 国王カリウスはレナンとマリアベルを従わせた事で、完全に機嫌が直ったらしく……ティアの事等どうでも良くなった。だからこそ、軽い気持ちで彼女の話を聞いていた。



 しかし……そんな適当な国王の態度とは裏腹に対し、ティアは真剣だった。

 


 「……先程陛下は仰いました、レナンこそ、無上なる至宝と。なれば……私が彼より強くなれば良いだけ……。私がレナンを超える強さを身に着けた暁には……彼を開放頂けますか?」


 ティアは迷いなく、荒唐無稽な願いを国王カリウスに言い切ったのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は2/7(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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