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228)降臨

 「うん? 随分と……自信に満ちた表情ですね……。強い意志の光を宿した目……何かムカつきます……一体、何を期待していると言うのですか? 」


 「……き、希望よ……。揺るぎない……本当の希望……」


 「ハハハ! 此処に来てそんな事ある訳無いでしょう! もういい! 貴女は! 此処で死になさい!! ギガントホーク! ソイツをゆっくり踏み潰せ!!」



 どこまでも足掻くティアに、心底ムカついたツェツェンは……今、この場でティアを殺す事を決めた。


 

 彼の指示でギガントホークはティアをゆっくりと踏み潰しそうと体重を掛ける。


 「あ、あああ!!」


 「!? ティ、ティア!! 貴方達! 止めなさい!!」


 「「ティア様!!」」



 ティアを悲鳴を聞いたソーニャが必死に叫んで制止させようとするが……彼女も叉、囚人達に揉みくちゃにされて動けない。パメラ達も危機に晒されながら大声で叫ぶ。


 彼女達の声を聞きながら、ティアはゆっくりと押し潰される痛みの中……流石に死を覚悟した。

 


 意識を朦朧とさせながら、ツェツェン達の背後に燃える木立を見ると…………遠くの木の頂きに白い何かを見つけた。


 木のてっぺんに一瞬だけ姿を見せて搔き消えた白い何かはティアにとって見間違う事など有り得ない、大切な存在だった。



 「……遅いよ……レ、レナン……!」



 その姿を見た瞬間……ティアは死に至る痛みの中……涙を溢れさせて呟いた。希望である……愛しきレナンの名を。



 「? ……何か、言いまし……」



 絶望的な状況の中、歓喜の涙を流して呟いたティアを不審に思い、ツェツェンが彼女に問うた時だった。


 “ズシュ!”


 何かが斬られるような鈍い音が響いた後……巨大なギガントホークの頭が転がり落ち、周囲に赤い血を撒き散らす。



 「な、何が!?」


 突然首を切り落とされたギガントホークを見て、ツェツェンが驚き叫ぶ。



 だが、次の瞬間……。


 “ドオオン!”



 眼前に立っていたギガントホークの亡骸が吹っ飛び、盛大な音を立てて燃える木立に激突した。


 次から次へと起こる有り得ない状況にツェツェン達は、流石に戸惑う。


 

 そんな中、吹き飛んだギガントホークが居た場所に、銀髪、色白の少年が倒れていたティアを抱き起こすのを見た。



 「……遅くなってゴメン、ティア……」


 「ほ、本当だよ……。でも……レナンは、絶対来てくれるって分ってた……」



 ティアを抱き起こしながら言うレナンに、彼女は涙ながらに答える。



 レナンと呼ばれた、その少年を見た時……ツェツェンは恐怖で全身が震える。その少年には絶対、何をしても勝てないと分ったからだ。


 ツェツェンは彼をコロシアムで一度見たが、忘れる事が出来なかった。



 その少年……レナンこそ、コロシアムでツェツェンが操っていたギガントホークの群れをたった一人で殲滅した存在だったからだ。


 ツェツェンはレナンがどう言う存在か、分っていた。その力、その姿……見間違う筈も無い。



 眼前に現れた白い少年こそが自分の故郷で有るギナル皇国にて崇め奉られる“白き神”であると。


 蠱毒の闇を幾度となく超え、発火能力と爆薬を使いこなすツェツェンは、単体としてはギナル皇国最強の存在だろう。


 策に嵌めたとは言え、黒騎士マリアベルやクマリを倒す程の強者だからだ。



 しかし、そんな彼でも……“白き神”だけには勝てるとは思えなかった。


 気分次第でギナル皇国首都を半壊させる様な……馬鹿げた力を持つ“神”と戦う事など、出来る筈が無いと確信していた。


 全ての感情が消えてしまった筈のツェツェンだったが、超越的な存在であるレナンに本能として恐怖を感じた。




 だから、レナンが“白き神”だと知っているツェツェンは、今すぐこの場から逃げ出すべきだと判断し……震える声で呟く。


 「……て、撤退です。今すぐに」


 「? 何を言っているんだ、ツェツェン?」



 レナンの姿を見て、動揺して後ずさりしながら呟くツェツェンに、商人風の男が問う。


 仲間であるこの男には、レナンが何者かは理解出来ていない様だ。



 「だ、黙って指示に従い……」


 「何だ、このガキ? いきなり現れやがって」



 商人風の男の問いに答えず、ツェツェンは続けて撤退を指示しようとした時だった。


 

 ソーニャを押さえ付けていた囚人達がレナンを取囲んで、彼を恫喝した。


 しかしレナンは取囲んだ囚人達を見ようともせず、地に組伏されたままのソーニャを見る。



 彼女は数人の囚人達に今だ押さえ付けられた状態だった。


 「……ソーニャ……酷い目に……」


 レナンはソーニャを見て辛そうに呟き、彼女の元へ向かおうとしたが……。


 「てめぇ! 調子に乗って……」



 恫喝した囚人が、レナンの肩を掴んだ時だった。



 レナンは刹那に右手を囚人の胸に当て……その手を光らすと……。



 “キュン!!”


 つんざく様な甲高い音と共に、レナンの右腕から光が放たれた。


 その光は眩く輝き……そのまま囚人の体を貫き、後方に廻り込んでいたギガントホークの一体も貫いた。



 光は細かったが、眩い光線となり……囚人の男とギガントホークを貫いた後、そのまま後ろに広がる森を貫通する。



 その間は一瞬。その場に居た者達はレナンの手が眩く光ったとしか目で追えなかった。



 しかし、彼の右手が光線を放った直後……轟音が鳴り響く。



 “ドドドドドン!!”



 レナンが放った光線が、森の遠方まで貫き破壊した音が、後から地響きとなって轟音を立てる。



 貫かれた森は、光線が走った跡が爆炎となって一直線に延びている。



 光が放たれ、一瞬その場に居た者達が、状況を掴みかねて戸惑う。



 皆、生死を掛けた修羅場の最中だと言うのに、彼等は我を忘れ焼かれた森を見つめるのであった。



 そんな中……。


 “ドザン!”



 何か大きな音が倒れる音がして、我に返った一同がその方を見ると……光線に貫かれたギガントホークと囚人の男が絶命し地に倒れていた。



 ギガントホークも囚人の男も体に焼けた大穴が開き、穴からは煙が立ち上っている。



 「「「「…………」」」」



 レナンが現れてから立て続けに起こる有り得ない状況に、その場に居た者達は言葉を失い戸惑うしか無かった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話投稿は12/27(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

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