225)抗戦
ツェツェンによって追い詰められたマリアベル達。
ティアとライラとミミリ、そしてバルドは爆薬により吹き飛ばされ、地に伏したままだ。
彼女達を助けに行きたいが、爆薬を自在に操るツェツェンを前にして動けない。
仲間達が倒れている状況で……彼女達の背後に森は燃え、パメラ達人質が居る教会にも火の手が上がった。
逃げる事も攻める事も出来ない絶体絶命の状況だった。
その状況の中、マリアベルが決断を下す。
「……リース、お前は魔法で教会の火を消せ! ソーニャはティア達を頼む……。残りは総員で奴を倒す!」
「勝手な行動は慎んで頂きたいですねー。貴女達が別行動する隙を僕が与えるとでも? この場から離れた途端……“バン!”ですよ?」
「お前が攻める間を、我らが与えなければ良いだけの事! 行くぞ!!」
「「「「応!」」」」
マリアベルの号令で皆は一斉に動く。リースは教会へ向かい水魔法を放って火を消し始めた。
ソーニャは爆発を受け倒れたままのティア達の治療に走る。
マリアベルはクマリとベリンダの3人でツェツェンを間断なく攻めて、救出の時間を稼ぐつもりだ。
「はぁ!!」
マリアベルは掛け声と共に大剣で切り掛かり、彼女にタイミングを合わせてクマリとベリンダも同時に合わせる。
逃げ場が無い3方向からの同時斬撃に、ツェツェンは……自分の体を有り得ない角度で曲げて反らし、難なく躱した。
そして彼は躱されて背中を見せたマリアベルの背に斬りかかるが、追撃したベリンダによって攻撃を防がれる。
「……もう少しだったのに残念です! さすがの連携ですね」
「どこまでも、ふざけた奴だ。だが、油断ならん! ソーニャ急げ!」
軽口を叩くツェツェンに対しマリアベルは怒りながら、ソーニャに救出を促す。
「はい、お姉様! ティア、しっかりしなさい!」
「……う、うう……ソーニャ?」
ソーニャは地に伏して倒れているティアに声を掛け、何とか目を覚まさせた。そんな中、マリアベルの攻めが遂にツェツェンを捉える。
“ギン!”
「ちぃ! やはり大剣を振るう黒騎士様とは、相性が悪いですね。しかも、この連携も面倒です」
黒塗りの短剣でマリアベルの大剣をいなしたツェツェンは痛そうに腕を抑え後ろに下がるが、クマリやベリンダが隙を与えない。
「勝機! 一気に畳みかける! オオオオオ!!」
マリアベルは勝負とばかりに、赤黒い光を身体から放ち鬼人化する。
「や、やったわ! お姉様が本気を出せば、あの男だって!」
「……ええ、鬼人化したマリアベルの速度なら、誰も捉えられない……」
赤黒い光を纏いながら鬼人化したマリアベルを見ながら、ソーニャは嬉しそうに叫ぶ。傍らのティアは彼女に起こして貰いながら、呟いた。
教会に上がっていた火の手はリースの水魔法により弱まりつつある。
ソーニャにより、ティアは何とか回復した。ダメージはあるがもう少しで参戦出来そうだ。
このまま続いてソーニャとティアの二人で倒れたままのライラ達を同じ様に治療すれば共に戦ってくれるだろう。
鬼人化したマリアベルと、戦えるようになった仲間達が協力すれば、ツェツェンを倒せる事は容易な筈だ。
しかし、ティアは……言いようの無い不安が芽生えていた。
(……何故、だろう……凄く有利な筈なのに……追い込まれている様な……)
ティアが漠然とした不安を胸にしていた時だった。鬼人化したマリアベルが恐るべき速さでツェツェンに特攻を掛けた。
マリアベルは鬼人化した力で、人外の脚力でツェツェンに迫る。あっという間に彼の間合いに入り大剣を振り被った。
この間は一瞬で流石のツェツェンも回避する間も無いようで慌てている。
「う、うわぁ!! 凄い速さだー!!」
ツェツェンは、両手で顔を覆って叫ぶ。誰もがツェツェンの敗北を予想したが……。
“バガン!!”
突如、爆発音が響き……マリアベルが吹っ飛んだ。そして地に叩き付けられ……そのまま動かなかくなった。
動かなくなったマリアベルは赤黒い光が消えた。鬼人化が解けてしまった様だ。
「!? お、お姉様!」
「マリアベル!?」
「マリちゃん!」
「マリアベル様!!」
倒れて動かなくなったマリアベルを見て、ソーニャとティア達は一斉に叫びながら彼女の下へ駆け寄ろうとした。
そんな中……ツェツェンの間延びした声が響く。
「……アレー? まさか、黒騎士様の癖に……さっき仕掛けた爆薬の事に気付かなかったとかー? ガッカリですよー。それじゃ他の方々も知らないのかなー?」
「!? まさか、我々にも爆薬を!?」
ツェツェンの言葉を受けてマリアベルの下へ向かおうとしていたベリンダが動きを止め立ち止まる。
「嘘だよー! ……ボン!」
“バン!!”
慌てたベリンダを嘲る様にツェツェンが叫んだ後、突如ベリンダの体が火に包まれ吹き飛んだ。
動きを止めて自分の体を確認しようとしたベリンダだったが……自身の体の周りに黒い粉が撒かれていた事に気が付か無かった様だ。
「お、お前!!」
「貴女は、強いから爆薬有でーす」
“バガン!!”
激高したクマリがツェツェンに突撃したが、彼が呟いた瞬間……爆発音と共にクマリが吹き飛ぶ。
「師匠!!」
マリアベル同様吹き飛んだクマリを見て、ティアが叫んで救助に向かったが……ツェツェンが手を上げて声を掛ける。
「はーい、あっという間にツートップが撃沈したねー。ロデリア王国最強って言うから期待したのにー全然だったよー。残りは雑兵の君達だけ……戦っても面白くないから、すぐに終わらせようか」
そう言いながらツェツェンは右手を振る。すると辺り一面に黒い粉が撒き散らかれたのだった。撒かれた黒い粉は火薬だ。
ツェツェンの前に立っているのはティアとソーニャだけ……絶望的な戦いが始まった。
一部見直しました。




