218)望まぬ再会
「……久しぶりだね、パメラ……。相変わらず美しい……」
かつて幾度となく愛を囁かれた、フェルディの声を改めて聴いたパメラが震える声で叫ぶ。
「……その声……、やはり……フェルディ様、なのですね!?」
パメラの叫びを聞いたフェルディは、醜くなったその顔に、嫌らしい笑みを浮かべて彼女に近付く。
「お嬢様に! ち、近付かない……! あ!」
パメラに近付こうとするフェルディの前に、侍女のナタリアが立ち塞がったが……彼に押し退けられた。
「……ああ、パメラ……君にも会いたかったよ……」
「あ、貴方は確か捕縛されて……! そ、それに……その顔は一体……」
「あー、この顔はねぇ……。そこに居る女の所為なのさ!! コイツのお蔭で俺はぁ!!」
「ひぃ!」
優しげな調子から、突如恐ろしい声で叫んだフェルディの変貌に、パメラは恐怖で悲鳴を上げた。
「パメラ……、君もやってくれたよね? 僕が捕まった時……君の家はアッサリと、僕との婚約破棄を決めた……。お蔭で、全ての後ろ盾を失った僕は……転がり落ちる様に……真っ逆さまって訳だよ……」
「そ、それは言い掛かりです……!」
フェルディの呪詛の言葉に、横に居た侍女のナタリアが抗議するが……。
「お前には聞いてないんだよ! この雌犬が!!」
“ドガ!!”
「キャア!!」
「ナタリア!? ひ、酷い事しないで!」「止めなさい!!」
抗議したナタリアをフェルディは蹴飛ばした。痛みで悲鳴を上げ倒れたナタリアに、パメラがすかさず覆いかぶさって叫び、ソーニャも大声を上げて制止する。
彼女達をニヤニヤとフェルディが見つめる。彼だけでは無い……フェルディの背後には囚人服を来た恐ろしげな男達が立っている。
この男達は、全員の目が息粗く目も血走り……欲望に満ちた嫌らしい顏で彼女達を見ていた。
フェルディは此処で有る物を懐から取り出して首に掛ける。一見、ネックレスの様だが……。
「……パメラ、見てくれよ。最近集めてるコレクションなんだ……」
そう言ってフェルディは自らの首に掛けているモノをパメラに示した。
紐に通された赤黒く縮んだソレを見て、パメラ達は……。
「!? ひぃ! きゃあああああ!!」
「いやあああ!!」
干からびたソレを見たパメラと侍女のナタリアはあらん限りの絶叫を上げる。
余りに予想外の事で彼女達は腰を抜かし、ガタガタと震えだす。
フェルディが首に掛けていたのは……切り取られた“耳”だった。その数は6つ。恐らくは自分の父と殺した看守達のモノだろう。
「……此れは戦利品でね……。僕が勝ち取った自由の証として集めてるんだ。だから……これからも積極的に集めて行こうと考えていてね……。僕に逆らう奴は……耳を切り取ってやるんだ……。お前達も、俺に逆らえばどうなるか……分っただろう?」
「「…………」」
ご機嫌な調子で話し掛けるフェルディに対し、パメラとナタリアは怯えきって震えるだけで何も答える事が出来ない。
その様子を見たフェルディは満足そうに、彼女達に向け声を掛ける。
「良いか、お前らは……二度と日の光を浴びる事は無い……。パメラ、お前は俺の財布だ。お前の父親に身代金を要求し……出し渋る様なら……指を切り取って一本ずつ送ってやる。そこの侍女は人質だ……。パメラ、お前が俺の言う事を聞く為のな……。もしお前が俺に刃向ったら……この侍女を後ろの男共にくれてやる。どうなるかはガキのお前でも分るだろう。そして……其処の白騎士殿は……キヒヒヒ……ダメだ、想像しただけでイキそうだ」
フェルディの言葉を聞いたパメラと侍女は互いを抱き締め合い……震えながら恐怖でおかしくなりそうな精神を何とか保っていた。
平和で穏やかな場所に生かされてきた彼女達も、流石に死よりも恐ろしい危機が自分達に迫っている事に否応が無しに気付いてしまった。
そんな中。凛とした美しい声が響く。
「……貴方は連続婦女暴行犯のフェルディ フォン ルハルトですね。罪の無い女性達を毒牙に掛けておきながら……反省も無く、今度は脱獄とは……。これ以上、罪を重ねる前に自ら自首なさい!」
絶望的な状況の中……ソーニャは堂々と言い放つ。
対してフェルディは……。
「キヒ!! あーダメだ、コレはダメだ……。今すぐ、コイツを犯して無茶苦茶にしないと……俺が壊れそうだぁ」
そう言いながら、彼はソーニャの元へ卑下た笑みを浮かべ近付き……ソーニャを思い切り蹴り上げた。
“ガスッ!!”
「あぅ!!」
「てめぇは!! もう!! 終わりなんだ!!」
“ガン! ガツ! ゴン!!”
「ウグゥ! ううぅ!」
蹴られて蹲ったソーニャに馬乗りになったフェルディは叫びながら容赦なく殴り続けた。
ソーニャは両手で顔を覆うが、フェルディは構わず殴りつける。憎しみからかその拳は止らず、痛みでソーニャは悲鳴を上げる。
そんな様子を見て、脇で震えていたパメラが勇気を振り絞り叫んだ。
「や、止めて! 止めて下さい!!」
「お、お嬢様! ここは静かに!」
「はぁ、はぁ……丁度良い……。お前らに見せてやるよ……。この雌豚に、今から何をするのかを……」
そう言ってフェルディは剣を取り出し……ソーニャに向ける。そして……。
“ザシュ、ザシュ!”
フェルディはソーニャが着ていた白い鎧の留紐を剣で切り裂いていく。次いで乱暴に鎧を外し、綿の下地を剥き出しにした。
「や、止めて! ぶ、無礼者!!」
「ヒヒヒ! テメェはな、先ずは皆が見てる前で! この俺が犯してやるよ!! 時間がねェから、後にしようと思ったが! ダメだ、あーダメだ!! 鼻に付くお前の態度を見てたら! キヒヒ、今すぐ無茶苦茶にしてやらねェと気が済まねぇんだよ!!」
「だ、誰が!! お前なんかに!! 今すぐ、放しなさい!!」
「うるせぇよ!!」
“バキイ!”
「あうぅ!!」
下地を脱がされそうになったソーニャは、力一杯叫んで抵抗するが、フェルディに思い切り顔を殴られてしまうのだった。
いつも読んで頂き有難う御座います!
追)一部見直しました。




