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211)攫われた彼女達

 ギガントホークに襲われ、中止となってしまった決勝戦。


 次回に向け再戦を誓うティアとマリアベル……そしてレナンの元に、クマリ達が大慌てで駆け付けた。


 そんなクマリ達にマリアベルが代表して問う。





 「……どうした、お前達……何か有ったのか?」


 「ああ、マリちゃん……大変な事になった様だ」


 「……マリアベル様、現状を報告致します」


 問うたマリアベルに、クマリが答えるが、白騎士のベリンダが割って状況を説明した。



 王都で火事が発生した事、その最中コロシアムで人攫いが起こった事を話した。そしてその後判明した衝撃の事実を告げる。それによると……。



 「……ソーニャが行方不明……!?」


 「さ、攫われたのはパメラとナタリアさん!?」


 ベリンダが説明した事態に、マリアベルとティアは揃って驚愕の声を上げた。



 「……は、はい……コロシアムでの拉致事件被害者は……調べによるとレミネイル公爵家御令嬢のパメラ ド レミネイル様と……その御付の侍女ナタリア嬢です」



 驚いて力が抜けた二人に、ベリンダに替わって白騎士のリースが答える。



 「そ、そんな……パメラ達は決勝戦の前……控室で会ったばかりよ!」


 「……はい、どうやら……賊はパメラ様達が控室から貴賓室へ移動するタイミングを狙った模様です……。そしてソーニャ様は……それを追われて……行方が分からなくなりました」


 事態が信じられ無いティアに、リースはパメラが攫われた状況を続けて話した。



 「しかし……ソーニャは報告に来た騎士と共に、パメラ嬢の救出に向かったのであろう? ……それでどうして行方が分らない、と言う事態になるのだ? 最近支給されたアレを使えば良いのだろう?」


 リースの説明を聞いていたマリアベルが腑に落ちず問うた。



 戦う術を知らない公爵令嬢のパメラならいざ知らず……白騎士であるソーニャが簡単に賊の手に落ちるとは思えなかったからだ。


 それに白騎士隊には、最近……連絡用の魔道具が配布されている。


 ダイオウヤイト襲撃の際、餌として連れ去られた騎士達がいた事例を踏まえ、最近支給される様になったのだ。



 従ってマリアベルは救出に向かったソーニャが、離れて行動していても連絡用の魔道具で所在が分ると考えたのだ。


 マリアベルの問いに対し、今度はベリンダが答える。



 「……どうやら、その騎士は偽者だった模様です。コロシアム近傍の植木横に騎士服が置かれておりました。……其処に此れも……」



 そう呟いてベリンダがマリアベルに差し出したのは、白騎士隊に渡されている連絡用の魔道具だ。


 支給された連絡用の魔道具は、それなりに高価である為、誰もが持てる訳では無く大切に扱われている代物だった。


 その魔道具がコロシアム脇の植木に、共にいた筈の騎士の衣服と共に置かれていた……。



 そうとなれば、ソーニャの置かれた状況は唯一つしかない。



 「……罠に嵌り……連れ去られた、か……。恐らく騎士に扮したその男は、パメラ嬢を攫った連中の仲間だな。……直ちに救出に向かうぞ」


 「当然……私も行くわ!!」


 状況を把握したマリアベルは、一瞬も待たず判断を下した。横に居たティアも即答で答える。



 「……しかし、お前は……って聞きそうな顔じゃ無いな」


 ティアの即答を聞いたマリアベルは、彼女の試合でのダメージを考慮して断ろうとしたが……。


 ティアの決意に満ちた顔を見て、断るのは難しいと判断した。



 「当たり前よ! パメラとナタリアさんは私の応援する為に控室に来たの。他の誰でも無く……私の為に……。そんなあの子達を、他人任せなんか出来ないわ!!」


 「マリちゃん……当然私も行くよ。パメラ嬢には茶を入れて貰った恩も有るしな」


 「俺も行くぜ」「私もです!!」「私もだ」



 ティアの言葉を皮切りに、クマリに続きバルドやミミリ、ライラが声を上げる。そして……。


 「……僕も行くよ、マリアベル……。ソーニャも、パメラって子も見捨てる訳に行かない」


 「レ、レナン……有難う」「お前が来てくれれば百人力だぜ」


 皆に続いてレナンも力強く答え、ティアやバルドも彼の言葉を歓迎した。



 だが……意外な人物が彼を拒絶する。それは、マリアベルだった。



 「ダメだ、レナン……。お前が動く事は許されない」


 「!? ど、どうしてよ、マリアベル……! レナンが来てくれたら……どんな事件も解決するでしょう!?」


 マリアベルの言葉に、ティアが驚きながら聞き返すが……。



 「そうか……“国王陛下”の御為か……。泣かせるねぇ」


 「……クマリ……私が言いたいのはもう少し包括的な事だ。先程、コロシアムを襲ったギガントホークの群れも……王都で起こっている火事も……、この誘拐事件も……恐らくはギナル皇国の手に依るモノだろう。奴らの目的は、このロデリア王国の滅亡……。対して陛下は、このロデリア王国の中心であり全てだ。故に陛下を御守りする事は、このロデリア王国を御守りする事と同義……。レナン、お前は……この王国の最後の剣にして盾。だからこそ、お前は陛下と王太子を御守りしろ」


 クマリの侮蔑の入った冷やかしに、マリアベルは動じることなく冷静に話す。


 「しかし、マリアベル……王都の火事もソーニャ達の事も放置は出来ないよ」


 「……確かにお前の言わんとする事も分る……だが、もう一度ギガントホークの群れが襲ってこないとは、誰も言い切れん……。その事態に対処出来るのはお前だけだ。レナン、先ずは陛下と王太子を王城まで御連れしろ。王城なれば守りは強固……どの様な事態においても陛下達の御身が危険に晒される事は有るまい。陛下達を王城までお連れした後……我等の元へ駆け参じてくれ」


 「……分ったよ、マリアベル……。直ぐに陛下を王城まで連れて行くから……皆も待っていてくれ」


 マリアベルの言葉に、レナンは止む無しと言った様子で国王の元へ向かう。マリアベルの指示に従う為だ。



 レナンが去ったのを見送ったマリアベルは、ティア達の方へ向き直り声を掛ける。



 「……ティア、クマリ……そして勇敢なる戦士達よ。思えばそなた等は、ダイオウヤイト討伐においても尽力してくれたな……。済まぬが、もう一度……そなたらの力を貸して頂きたい……!」


 ティア達に向かい頭を下げて頼んだマリアベルに対し、皆を代表してティアが答えた。


 「そんなの、アンタに頼まれるまでも無いわ! パメラ達のついでに……ソーニャも助けてあげるわよ。あの子には色々言いたい事が有るけど……ココで大きく恩を売りつけてやるから……!」


 力強く答えたティアに、彼女の仲間達も揃って首を頷く。こうしてソーニャとパメラの救出作戦が始まった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 


追)誤字修正しました。

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