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208)武闘大会-38(ギガントホーク)


 決勝戦で熾烈な戦いを繰り広げたティアとマリアベル。


 今まさに、最後の攻撃を仕掛けようと、二人がした時……。空から真黒い何かが舞い降りてきた。


 “キシャアア!!”


 舞い降りたソレは耳をつんざく様な、甲高い雄叫びを上げた。


 「……ギガントホーク!? な、何故こんな所に!?」


 マリアベルは、眼前に舞い降りた真黒い何かを見て大声で叫んだ。



 ギガントホーク……それは、その名の通り巨大な鷹だ。翼を広げれば6m程にもなる巨鳥は、山岳地帯の麓に広がる森で獲物を狩る猛禽類型の魔獣だ。


 その体は黒い羽毛で覆われており、地上に降りて立ち上がった時の体高は3mは有る。


 顔程も有る巨大なくちばしと、長大で鋭利な爪が武器だ。


 大空を飛び、獲物となる大型の魔獣を見つけると空中から一気に舞い降りて、くちばしと爪で仕留める。


 ギガントホークは山奥に巣を作り、大型の魔獣を狩る生態から、人里に下りて来る事は滅多にない。


 獲物を探して麓の村まで飛んで来る事は有っても、人間の逆襲を恐れてか上空を舞うだけだ。


 もっとも山に入った人間を襲う事も有り、マリアベルはその存在を知っていた。



 しかし、この巨大な猛禽類型の魔獣が、大勢の人が居る王都に……ましてや地上に降り立った事にマリアベルは驚いたのだ。


 

 “キシャアアア!!”


 ギガントホークは足元に居るマリアベルやティアに向け、威嚇の叫び声を上げた。


 「ギ、ギガント……ホーク……何て……大きさ……」


 ティアは生まれて初めて見たギガントホークを見上げて、驚きながら呟く。



 しかし……。



 「な、何だアレは!!」「キャアアア!!」


 ティアが驚いた間にコロシアムの観客席から悲鳴が聞こえた。


 ティアとマリアベルが声のした方を見ると……観客達は空を見上げて叫んでいる。


 観客達が見つめる空には、多数のギガントホークが群れを成して飛んでいた。


 あの数のギガンドホークが観客達を襲えば目を覆う様な惨劇が広がるだろう。


 空を舞うギガントホークに、観客達はパニックになり、我先にとその場から逃げようとしていた。



 「一体……何が……!?」


 ティアは突然の状況に戸惑い呟く。そんな彼女に降り立ったギガントホークは待ってくれなかった。


 “キキイィ!!”


 甲高い鳴き声と共に、ティアの近くに居たギガントホークは彼女に襲い掛かった。


 「クッ!!」


 しかし、彼女は戦いの影響で満足に動けない。襲い掛かるギガントホークにティアは地面を転がって攻撃を避けた。


 逃げたティアに対し、この巨大な猛禽は完全に餌と判断した様だ。


 「クウエエエェ!!」


 鳴き声を上げて、地面に寝転がったままのティアに恐ろしい、くちばしを突き立てようとした。


 「!? こ、この! しつこい……わね!」


 “ガシイ!”


 瞬く間に迫るギガントホークに、元々動けなかったティアは対処が遅れ、寝転がったまま、くちばしを掴む。


 そして秘石を発動して、そのままの体勢で押し返そうとしたが……。


 “キイイ……ン”


 右手の秘石は一瞬発動したが……、徐々に音が小さくなり光が無くなる。


 “ガクン!”



 ティアは秘石の力を失ったと同時に、体全体の力がごっそりと抜けてしまう。


 寝ながらギガントホークのくちばしを押さえていたが、押し返す事が出来ず……凶悪なくちばしがティアの顔面に突き刺さろうとする。



 絶体絶命、一瞬死を覚悟したティアだったが――。



 「……バケモノが……! 死ねッ!!」


 “ザシュウ!!”


 マリアベルの叫びと共に、大剣がギガントホークに浴びせられる。すると……巨鳥の体はズルリと地に倒れた。



 「……大丈夫か……ティア……」


 鮮血を飛び散らせて崩れ落ちたギガントホークを横目に、マリアベルはティアに手を差し伸べ声を掛ける。


 「ええ……な、何とか……あ……」


 ティアはその手を掴んで、よろめきながら立ち上がった。しかし、彼女の足は震え自分の足で立つ事が出来ず、ふら付いてしまう。



 マリアベルはよろめくティアの肩を抱いて支える。


 「……力を使い過ぎた様だな……もはや、一人で立つ事も儘ならんか……。しかし、この状況では……」


 マリアベルはティアに肩を貸しながら彼女を案じ……空を見上げて忌々しそうに呟く。


 コロシアムの上空には、ギガントホークが群れを成して旋回し……観客に狙いを定めているのか上空を舞い続けている。



 まるで観客達の恐怖を煽る様な動きだ。そして上空を舞っていたギガントホークの一部が、待ちきれないかの様に動き出した。


 “ブワァ!!”


 ギガントホークは統率された動きで地上目掛けて急降下する。向かう先はマリアベルとティアの元だ。


 「ま、拙い!! 此処に来るぞ!」


 叫ぶマリアベルを嘲笑うように、多数のギガントホークが一度に彼女とティアに襲い掛かるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 


区切りの関係でちょっと短いですが王都襲撃回の始まりを書かせて頂きました。


次話は9/27(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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