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202)武闘大会-32(決勝戦②)

 「うおおおぉ!」


 “ギイン!”


 「ぬぅ……!」


 ティアは雄々しく叫んでマリアベルに斬りかかる。一方のマリアベルは大剣でティアの剣を受けたものの、秘石を発動したティアに押されて苦悶の声を上げた。


 「フフフ……やるでは無いか、ティア! だが……!」


 アリアベルは叫んでティアの剣を受けていた大剣を跳ね上げる。そうする事でティアは剣を構えれず体制を崩す。


 マリアベルは跳ね上げた大剣を、止める事無くそのまま振るい、右上段から斬り降ろした。


 「な、何の……!」


 ティアはマリアベルの大剣を、剣で何とか受け流して何とか凌ぐ。しかしマリアベルは止らず、その場で素早くコマの様に回り今度は左上段からの薙ぎを放った。


 余りに素早い反撃に普通なら対処出来ず、左からの薙ぎで両断されるだろう。マリアベルの大剣は巨大だが、彼女が扱う事でまるで羽の様に軽やかに動く。


 ティアは左からの薙ぎ払いに、右に飛んで姿勢を低くして辛うじて大剣を避けた。


 巨大な大剣にも拘らずレイピアの様な攻撃を放つマリアベルに対し、ティアは攻めるしかないと踏んだ。


 “キイイイン!!”


 ティアは身を低くしてマリアベルの大剣を躱した後……獣の様に突進する。そしてマリアベルの体に前から抱き着いた。


 “ガッ!!”


 「クッ! な、何をする!」


 行き成り抱き着かれた事で戸惑うマリアベルだったが、彼女の叫びにも答えずティアは鎧を掴んだ。


 そして……。


 「おりゃぁぁぁ!!」


 マリアベルの鎧をガッと掴んだティアは、思い切り叫んで投げ飛ばした。


 鎧に身を包んだマリアベルは其れなりの重さだったが、アクラスの秘石により強化されたティアの膂力は、それを物ともしなかった。


 “ズダン!!”


 「ぐぅぅ!」


 ティアは人外の力を発揮し、マリアベルを遠くに放り投げた。5m近く投げ飛ばされたマリアベルは咄嗟に受け身を取ったが、落下した痛みで声を漏らす。


 マリアベルはすぐさま反撃に出ようと、ティアが居た方を見るが……彼女は其処に居なかった。


 「!? ま、まさか!」


 居る筈のティアが消えていた事に、マリアベルはゾッとする危機感を憶え、上を見上げるとティアが剣をマリアベルに向け飛び掛かってくる所だった。


 マリアベルを投付けた後、ティアは一瞬も待たず剣を掲げ飛んで追撃しようとしたのだ。


 5mもの距離にも拘らず、一回の跳躍でマリアベルの元へ舞い降りるティア。対してマリアベルは大剣を構えるのがやっとだった。


 “ガギイン!!”


 天から舞い降りたティアの剣を、何とか大剣で防いだマリアベル。防がれたティアは宙返りして着地して剣を構えた。


 「……女魔法使いとお前との試合を見ていなければ、予測出来なかったな……。全く楽しませてくれる……!」


 「まだまだ、これからよ! 覚悟しなさい!」


 大剣を構えたままマリアベルは楽しそうに叫び、ティアもそれに答える。


 ティアは右手に剣を持ち、身を低くして構え……マリアベルに飛び掛かった。その様はまるで獣の様だ。


 “ギイン!!”


 恐るべき速さで間合いを詰め、マリアベルに斬り掛かったティア。対してマリアベルは大剣で受けたが……秘石を発動しているティアに押され気味だ。


 「……お前の、その力……大したものだ……執念の成せる技か……」


 「……に従え……」


 ティアの剣を受けながらマリアベルは素直に彼女の力を称賛する。対してティアはマリアベルに答える事無く、何かをボソボソと呟いている。


 「!? お前!」


 “拙い!”と直感したマリアベルは全身の力を使ってティアを押し返して彼女を下がらせ、必殺の突きを放とうとする。


 しかし、先のティアの技の方が一瞬速かった。


 「吹き飛ばせ……火砕……!」


 ティアは突きを放とうとしていたマリアベルの足元に向け火球を放った。放たれた火球は狙い通りマリアベルの地面に激突し大きな音を立てて爆発した。


 “ドガアアン!”


 マリアベルの足元で生じた爆発により、ティア自身も吹き飛ばされ地面に転がされる。


 ティアが放った魔法は意識して威力を押さえた心算だったが、それでもこの破壊力だ。



 爆発の影響で生じた立ち込める土煙の所為で視界が遮られてしまったが、至近距離でモロに爆発を受けたマリアベルは立っている様子は無い。

 

 ティアはユラ戦を経て秘石の力により、無詠唱で魔法を発動する事が出来た。


 彼女はマリアベルに斬りかかった際、下級火炎魔法の火砕を放つ様に秘石を発動していたのだ。


 下級火炎魔法とは言え、ティアが放つ魔法は上級を超える威力を持つ為、彼女は加減して魔法を放った。


 それでも重装備の鎧を纏っているマリアベルに大きなダメージを受けた筈だと、ティアは予想していたが……。


 「……大した破壊力だな、ティア……」


 土煙を掻き分ける様に出てきたマリアベルの体には、赤いモヤの様な光が纏わり付いている。


 ティアの放った魔法で大きな爆発が生じたにも関わらず、マリアベルには何のダメージも受けていない様だ。


 「本来……試合如きでは……使う筈の無い力だが……ティア、そなた相手では出し惜しみしている場合では無いと思うてな……」


 そう呟くマリアベルの周りに纏わり付く光が、どんどんと明るさを増していく。


 「お前を強者と認め、本気を出させて貰う……! オオオォ!!」


 マリアベルはそう叫んで、雄叫びを上げる。すると彼女に纏わり付いていた赤い光が、眩く輝いて、その体を包み込む。


 “ドグン!!”


 マリアベルを中心に、大気が一瞬脈打ったような衝撃を発する。


 マリアベルはティアを真の強者と認め……彼女が受け継いだ戦鬼としての力を開放するのであった。


一部見直しました。

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