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201)武闘大会-31(決勝戦①)

 コロシアム中央に向かい合い、互いを見合う……ティアとマリアベル。最初に話し掛けたのはティアの方だ。


 「……長かった……本当に、長かった……。この8か月、貴女とこの場で戦う為に……私は死に者狂いで足掻いてきたの……。漸く、それが報われるわ」


 「ティア……お前の戦いは知っている。その手にした強さも……。本当に大したものだと思う……。まぁ、私が言えた義理では無いがな……。ティア……お前が、この武術大会に参加した理由は……レナンを取り戻す為なんだろう?」


 目に涙を浮かべながら天を仰ぎ呟いたティアに、マリアベルは労いつつも彼女に問う。


 もっとも、マリアベルはいつもの恐ろしげな厳つい兜を被っている為は表情は分らない。



 なお、二人の間には審判が立ち、試合開始の合図を告げようとしてたが、前回優勝者のマリアベルに遠慮してか、彼女が話し終わるまで待っている様子だった。



 「ええ、そうよ。私はこの決勝戦で貴女に勝ち……! 国王にレナンを返す様に訴えるわ! その為に……私は……!」


 「ああ、分っている心算だ。だが、勝つのはこの私……。お前には悪いがな」


 「……別に悪くは無いわ、マリアベル。私は負ける気は無いから」


 「ククク……面白い!」



 ティアの力強い言葉に、マリアベルも不敵に笑い答える。マリアベルが答えたと同時に、待ちかねた審判が決勝戦開始を告げた。




 試合開始の合図と共に駆け出したのは挑戦者のティアだ。



 恐れる事無くマリアベルに向かい間を詰め、両手で持った剣で斬り掛かる。


 “ギイン!”


 両手で剣を持ち振り降ろしたティアの剣に対し、マリアベルは大剣を片手に持ち、難なく受け止めた。

 

 「はああぁぁ!」


 最初の攻撃を防がれたティアは諦める事無く、剣を振り被って斬撃を加える。


 “ギン! キン! キン!!”


 ティアの猛攻にマリアベルは巨大な大剣にて軽々と受け流す。


 「……今度は私から行くぞ!」



 マリアベルはそう叫び、大剣を引いて突きを繰り出す。マリアベルの突きに対し、ティアは後ろに飛んで、これを躱した。


 後ろに下がったティアに、マリアベルはすかさず大剣で薙ぐ。彼女の大剣は長く、その間合いもティアの予想を超えて広い。


 「くっ!」


 迫るマリアベルの大剣による薙ぎ払いに、ティアは舌打ちをしながら身を屈めて何とか避ける。



 マリアベルは薙ぎ払った大剣と体を入れ替える様に、ティアに迫り右足で彼女を蹴り上げた。


 対してティアは流れる様な一連の攻めに戸惑いながら、何とかマリアベルの蹴りを腕で防いだ。


 漆黒の鎧を纏うマリアベルの蹴りは、丸太で突かれた様に強力で何とか受けたティアは衝撃で後ずさりする。



 そんなティアに対し、マリアベルの猛攻は止らない。



 蹴りを受けて下がったティアに向けマリアベルは、間髪入れず大剣を振り降ろす!


 “ガキン!!”


 マリアベルの大剣を、ティアは何とか剣で受け止めた。


 彼女は両手でマリアベルの大剣を防いではいるが、力負けして剣を今にも手放してしまいそうだった。



 対してマリアベルは大剣を片手で振るい、まるで重さを感じていない様だ。彼女は大剣を押し付ける様に力を込める。


 「う、うぐ!」


 「……どうした、ティア……よもや、こんな程度で終わるのでは無いだろうな」


 大剣を押し込まれているティアは、両手で持った剣で受け止めながら苦悶の声を漏らす。



 そして、マリアベルは片手で大剣を押し付けながらティアに問い掛ける。対してティアはと言うと……。



 「……そ、そんな訳! 有る訳無いでしょう!」


 “キイイイイイン!”


 ティアは叫ぶと同時にアクラスの秘石を発動させた。秘石は甲高い音を立てて、宿主に人外の力を与える。


 「ううおおおりゃあ!」


 “ガギギイン!!”


 秘石の力を発動したティアは叫び声を上げて、マリアベルの大剣を受けていた剣で思い切り薙ぎ払った。


 “ズササァ!”


 ティアの薙ぎ払いで、今度はマリアベルが後ろに大きく下がる。



 「……フフフ……まさか、我が剣を弾くとは……!」


 ティアによって後ろに押し返されたマリアベルは、驚きながらもその声は喜喜としていた。



 思えば秘石の力を発動させたティアと戦うのは、マリアベルとしても初めてで、本気を出したティアがどの程度の物か読み切れていなかった。


 本気を出していないとは言え、亜人の血を引くマリアベルの大剣を弾き返す者など、皆無に等しい。


 腕に覚えが有る、と言う触れ込みでマリアベルの前に立つ者達は、揃ってマリアベルの大剣を受ける事すら儘ならず……簡単に敗れ去った。


 唯一の例外は、マリアベルを負かしたレナンだけだった。彼以外に自分とマトモに戦える者など居ないと思っていたマリアベルは、予想外のティアの実力に歓喜したのだ。



 「面白い、面白いぞ! ティア フォン アルテリア! お前達、姉弟は何処までも私を楽しませてくれる! さぁ、戦いを続けようぞ!」


 「……言われるまでも無い!」


 歓喜の声を上げるマリアベルに、ティアも力強く答えた。そして彼女は秘石の力を発動し矢の様に駆けてマリアベルに迫る。


 「はぁぁぁ!!」


 一瞬でマリアベルの間合いに入ったティアは右手に持った剣で突き掛った。

 

 “ガキン!!”


 恐るべき速さで間合いに入り、突いたティアに驚きながらもマリアベルは大剣を掲げて、ティアの突きを防ぐ。


 しかし、ティアは止らず……突きが防がれたと思った瞬間、飛び上がってマリアベルの頭部に回し蹴りを噛ました。


 “ガイン!!”


 回し蹴りを頭部に喰らったマリアベルは一瞬よろめいたが、直ぐに距離を取り大剣を構えた。


 「……見事だ、ティア……まだ、楽しませてくれるのだろう?」


 「……もちろん続けるわよ、マリアベル……。貴女を倒すまでね!」


 歓喜するマリアベルの問いに、ティアは不敵な笑みを浮かべて答えるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は9/2(水)投稿予定です、宜しくお願いします!

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