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199)武闘大会-29(決勝戦に向けて①)

 控室から突如姿を消したツェツェン……。彼に付いて調べると、登録された出身地や推薦した者の情報は全て偽造されたモノで有る事が分った。


 それにより彼こそがマリアベル達が探していた刺客だと断定された。


 ツェツェンを捕縛出来なかった事より、決勝戦は中止にすべきと言う声も上がったが武術大会続行を求める意見が圧倒的で、結局ティアとマリアベルの試合は予定通り行われる事となった。


 その背景には、逃げ出したツェツェンには大した事は出来ないだろうと言う予測も有ったが、何より“ロデリア王国の威信”を守る事が最優先された。




 そんな中、決勝戦で戦うティアはと言うと……。




 控室で、クマリからツェツェンの話を聞いたティアは……試合中に聞いた彼の言葉を思い出し、吐き気を催し蹲った。そんな彼女をその場に居た者達が慌てて介抱していた。


「だ、大丈夫、ティアちゃん……?」


「……有難うジョゼ……。だいぶ落ち着いたわ……」


 介抱していたジョゼがティアに問い掛けると、彼女は落ち着きを取り戻した様子で答える。



 この控室には、次の決勝戦に向け観客室に居たリナやジョゼ、そしてパメラも含めティアの仲間達が集まっていた。


 「……ティアお嬢様……決勝戦は辞退されるべきでは有りませんか……?」


 「心配掛けてゴメン、ライラ……。自分に理解出来ないモノを目の当りにして、動揺しちゃっただけよ。もう、大丈夫……。決勝戦にはマリアベルが居る。そして……その先にはレナンが待ってる……。だから何が有っても試合には出るわ」


 ティアを心配したライラが決勝戦への辞退を勧めたが、ティアは強い意志を持って答えた。そんな中……。




 「……良く言った! いい覚悟だよ、馬鹿弟子!」


 マリアベルの所に行っていたクマリが弟子の決意を耳にして叫ぶ。


 「し、師匠……今戻られたんですか……」


 「たった今な……。安心しろ、決勝戦は中止にならない。慎重論も出たけど……結局、ロデリア国王の一言で決定された。……皆、国王の言いなりだったね。

 そんな中、マリちゃんはぶれて無かったよ。決勝戦に向け気合い十分って感じだな。マリちゃんにとっても、お前との戦いを強く望んでいる様だった」

 


 戻ってきたクマリにティアが声を掛けると、彼女は対戦相手マリアベルの様子を伝えた。


 「……そうですか、正に……相手に取って不足無しです! 必ず勝って見せるわ!」


 「その意気だ、ティア。所で、クマリさん……。その逃げたツェツェンって奴はどうなるんだ?」


 「ああ、上の連中は危機管理が全くなってないね……。ツェツェンって奴がギナル皇国の手先って教えてやっても、具体的な対策を取ろうともしない。結局……見るに見かねて妹ちゃん達、白騎士隊が指揮を執って捜索隊を組む事になった。どっちにしても奴に関して私らが出来る事は無い。ティア……お前はマリちゃんに勝つ事だけを考えろ。そして、私らはティアを支えてやるのが先決だ」


 問うたバルドに対し、クマリは見聞きした状況を話した後にティアへ発破をかけた。そして控室に居る皆に向け声を上げる。



 「皆、いよいよ決勝戦だ! 思えば私達は、この決勝戦に向け長く戦ってきた! 正直、私は皆が此処まで付いて来れるとは思っていなかった。馬鹿弟子を支える為、皆……本当に良くやってくれた! 師匠として皆に礼を言う!」


 「「「「「…………」」」」」


 クマリは控室に居た全員に向かい頭を下げて礼を言う。身勝手で我儘なクマリが皆の前で礼を言うなど滅多に無い事だ。


 

その場に居たティアの仲間達は意外な姿に面食らって固まってしまった。そんな皆を余所にクマリはティアに目を向け語り出す。


 「思えば……ティア、お前の覚悟に引きずられ……私もガラに無く師匠なんてやる羽目になったが……。存外、悪く無かった」


 「……し、師匠……」


 「今回の武術大会では荒れに荒れ……ユラ戦の様に激しい戦いの連続だ。観客は湧き……審判達も選手の安全より、試合の盛り上がりを優先している様だ。この流れでは……決勝戦でマリちゃんは鬼の力を開放し、本気を出して来る事も考えられる」


 「「「「「…………」」」」」


 クマリの言葉に、ティアを始め皆が沈黙する。8か月前、クマリはティアに決勝戦でマリアベルと戦う策を伝えた際、マリアベルと本気で戦う様には指示しなかった。


 本気を出して鬼と化したマリアベルが強すぎるからだ。当初の作戦では、マリアベルは安全の為に、本気にならないと考えていた。


 しかし……今回の武術大会ではティアやユラを始めとする強い選手達により、強力な技が飛び交う派手な試合が続いた。

 

 大いに盛り上がった試合を優先する為か、審判達はこの流れを制止しなかった。この事より決勝戦でもマリアベルが強力な攻撃をティアに仕掛けても、試合は中断されず続行されると、クマリは予想したのだ。



 鬼と化したマリアベルが本気で仕掛けてくる……。


 絶望的な状況の筈だが、ティアに向けて話すクマリの声は力強い。


「……確かに鬼と化したマリちゃんは恐ろしい……。だが、秘石の力を使い熟せる様になった、今のお前の力は本気のマリちゃんにも負けないだろう。

 もう細かい事は言わん、決勝戦ではお前の思う通り戦うと良い! だから存分に本気を出してマリちゃんに挑むんだ! ティア……お前は、此処まで私を含めて、皆を連れて来た。

 後はお前が結果を示すだけ……。やってやれ、ティア! マリちゃんをブチ倒し! 国王の度肝抜いてやれ! それでレナン君を取り戻せ!!」


「は、はい、師匠! 私は必ずマリアベルに勝って見せます!!」


クマリは最後にティアにハッパを掛ける。対してティアは迷いなく勝利宣言を行うのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は8/26(水)投稿予定です よろしくお願いします!


追)一部見直しました。

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