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195)武闘大会-25(最低なハイエナ)

 地下牢にてフェルディが傷を抑えながら、喚いていると……。


  “ガアン!!”

 

 「うるせえよ、馬鹿犬!! 何喚いてるんだ!!」


 「ヒイイイィ!! すいません、傷が、傷が痛むのです!」



 フェルディの声を聞き付けて現れた看守が警棒を檻に思い切りぶつけて叫んだ。対してフェルディは、水を掛けられた犬の様に怯えて媚びながら答える。



 「ほう? その醜い面の傷が痛むのかぁ? また、その面に小便掛けて消毒してやろうかな?」


 「そ、それは、もう! 勘弁して下さいぃ!」



 看守の男はニヤニヤと意地汚い笑いを浮かべ問うと、フェルディは何度とも無く受けた屈辱的な行為を思い出し、青ざめた顔で必死に叫ぶ。


 

 「……はぁ? そこは有難う御座いますだろうが!? ……随分と生意気な態度取るようになったな、この犬は!」


 「い、いえ! け、けけけ決してその様な! お、お許しください!!」


 「そうか! その態度はきっと、発情期だな! また、同僚のゴメスの奴に相手して貰え! スグにでも呼んでやるよ! 良かったな!」


 「!? そ、それだけは! それだけは! どうか許して下さい!! お、お願いします! 本当に許して、許して下さいいいぃ!!」



 完全に見下して嘲笑する看守に対し、フェルディは膝を地に付け土下座して大泣きしながら懇願する。


 看守の男が言うゴメスという男は、むさ苦しい中年の男で男色を好み……このゴメスにフェルディは無理やり何度も相手をさせられていた。



 みっともなく土下座して泣くフェルディに対し、看守の男は……。



 “ボグゥ!!”


 「ハギャアァ!!」


 持っていた警棒で檻の隙間から、思い切りフェルディを突く。突かれたフェルディは悲鳴を上げて地に転がった。


 「お前、まさか自分が今まで……どんな事して来たか、忘れたんじゃ無いだろうな……ゲス野郎!! テメェが散々弄んだ所為で自害した女も居るって言うのによ!!

 いざ、自分が“サレる”側になったら、許してくれだぁ!? ふざけんのもいい加減にしろ!!」


 “ガズン! ゴン! ゴス!” 


 「ギャアアア! アヒィ!」


 看守の男は悪態を吐いて警棒でフェルディを思い切り突き続け、彼は体を丸めて悲鳴を上げ続ける。


 「はぁ、はぁ……おい、クソ犬! お前に恨みを持つ御方は大勢おられる……。こんな程度で許されるとは思うなよ? まぁ、続きはゴメスが来てからだ。今日も散々遊んで貰え……。また、皆で見てやるからな! アハハハ!」


 「…………」


 看守の男は、息を切らすまで警棒でフェルディを打った後、罵って彼の元から去った。



 対してフェルディは痛みで蹲っていたが……。



 「……殺す、殺してやる……あの看守も、ゴメスも、全員だ……! だが! 先ずはあのソーニャって女だ! アイツは手足を切って、穴と言う穴に突っ込んで! クソ塗れにして焼き殺す!! 此処の奴らも全員! 絶対に殺……」


 「誰を殺すって?」



 フェルディがソーニャや看守達に呪詛を言葉を吐いている最中……誰も居なかった筈の牢の外から声が聞こえた。



 「!? うううわぁ! な、な何でも有りませ……」


 「落ち着けよ、俺はこんな服着てるが……看守じゃ無い」


 

 突然現れた声の主は、看守の服を来た筋肉質の男だ。彼は看守の服を着ていながら、そうでは無いと話す。


 「ククク……随分と酷い目に遭ってるな……。まぁ、自業自得って奴だろうが……。しかし、俺はお前の犯した罪や、お前がどうなろうとも……興味は無いぜ」


 「な、何だ!? あ、あんたは! 何者だ!?」



 筋肉質の男の言葉に、フェルディは看守の服装を着ながら重罪人の彼をどうでも良いと言う、その話の意味が分からず、上ずった声で問う。


 「……俺が何者かは、後で言う。俺が、いや……俺達が此処に来た理由は、お前と……お前の父親に利用価値が有るかどうかだ」


 「お、俺と……俺の父に利用価値!? な、何だ、どう言う意味だ!?」



 男は、フェルディとその父に利用価値が有ると言うが……、自分と父親は投獄中で、地位も財産も失った筈……。


 そんな自分達にどんな価値が有るのか、フェルディ自身が、どう言う事か分らなかったのだ。



 「ふん、そう怯えんなって……。明日、この王都で大きな“祭り”が有る。その際……お前達親子を此処から出してやるよ」


 「ほ、本当か!? 俺を、この地獄から助けてくれるって言うのか!?」


 「まぁな、お前らに価値が有るのかどうかは、この地下牢じゃ分らんからな。だが……お前達が俺達の働きに見合う価値が無ければ……そこで終わりだ」

 

 フェルディの必死な問いに、筋肉質の男は淡々と事実を言う。


 「……お、俺を! 此処から連れ出してくれるなら……俺は何でもする! だから、だから! おおお、俺をだ、出してくれ! この汚いクソ地下牢から!!」


 彼が言う価値が、何を示すのかフェルディには全く分らなかったが……この生き地獄から抜けられるなら……持てる全てを差し出しても構わなかった。



 その為、フェルディは全身全霊で叫び、助けを乞うた。対して男の返事は……。



 「まぁ、短い旅路かも知れんが……頑張って価値を示して貰おうか……。もっとも息子のお前には、元より何の価値も無さそうだがな。だが、其れを判断するのは俺じゃ無い。どっちにしても、今日の所は辛抱して貰おうか……」


 筋肉質の男は、そう呟いた後……静かに姿を消した。



 再び一人になったフェルディは醜くなった顏を更に歪めて、薄汚く笑って誰に聞かせるでも無く話す。



 「ひ、ひひひ、ひぃーひひひ! う、運が巡って来たぞ! 幸運の女神か、悪魔の采配でも、何でも良い! やっと、やっと此処から出られる! このクソ溜めの地獄から! 待っていろよ、この俺をコケにしやがったクソ共……! 一人残らず殺してやるっ!」


 フェルディの呪詛は暗い地下牢に響く。


 復讐心に焦がれた最低なハイエナが……今まさに、この王都に放たれようとしているのであった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は8/12(水)投稿予定です! よろしくお願いします!

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