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192)武闘大会-22(ユラ戦⑤)

 ユラの上級火魔法、爆裂とティアの火球により生じた爆発。


 コロシアムには衝撃を緩和する防護魔法や防護札が幾重にも施しているとは言え、生じた火球に、二人の試合を見ていた観客達は肝を冷やした。



 火球が消え去った瞬間、動いたのはユラだ。



 「“源なる水よ 集いて白銀の牙と為れ 氷槍波!!”」


 彼女は、ティアに向け上級水魔法を繰り出した。無数の氷の槍を生み出し放つ。


  四方八方から迫る氷の槍にティアは、落ち着いて右手を上げて呟く。


 「……炎の剣よ、迎え撃て……」



 そう呟いた瞬間、ティアの右手に紅いモヤの光が集まり……弾けて飛んだ。弾け飛んだ紅い光は無数の炎の剣となり、ティアに迫った氷の槍を砕いた。



 ユラとティアが見せる激しい魔法戦に、恐怖で固まっていたコロシアムの観客達も大きな歓声を上げる。


 

 しかしティアと戦っているユラは違った。



 「……あ、あんな……魔法、知らない……それも、無詠唱で!?」


 ティアの放った魔法を見て、ユラは青い顏をして呟く。



 そう―― ティアもユラとの戦いの最中、秘石の力を借りる事で……レナンと同じく詠唱を必要とせず、想い描いた魔法を発動する事が出来る様になっていた。


 度重なる命の危機により秘石とティアの同化がより進んだ為かも分らない。


 戦いを経て、ティアは以前より秘石の力を上手く引き出す事が出来る様になったのだ。



 呆けるユラに対し、ティアは迷わず次の攻撃へ移る。右手を大きく後ろへ振り被り……大声で叫ぶ。


 「……炎よ、集え!!」


 “キイイイン!”


 ティアが叫ぶと振り被った彼女の右手を、又しても紅い光が纏わり付く。強いエーテルの高まりを感じたユラも負けじと詠唱を始める。



 「“静かなる大地よ 我が意に従い 杭となり陣と成せ 地衛陣!!”」


 ユラが唱えたのは防衛の土魔法だ。既に施されている土の盾を2重に張り、防御を完璧にする考えだった。


 そしてティアの攻撃を防いだ後は、もう一度、雷魔法を放つ心算だった。但し、今度は下級の雷刃では無く……上級魔法の崩雷撃を。



 ユラは身を低くして自らが生成した土の杭で作られた盾に思い切りエーテルを込めながら、炎の槍をやり過ごす心算だった。


 エーテルを十分に込めたこの土盾は上級魔法の攻撃だって耐えれる。


 幾らティアの放つ魔法が凄かろうが防いで見せる心算だった。そしてその後は崩雷撃で反撃を……そう考えていた。



 そんな事をユラが考えていると、ティアが吠える声が聞こえた。


 「……炎の槍よ、貫け! おおおお!!」


 ユラがティアを見遣ると振り被った右手に尋常ならざるエーテルが込められた炎の槍が彼女の右手に浮かんでいる。



 ユラはその炎の槍を見た途端……命の危険を感じて、自らが作った強固な土の要塞から飛び出した。



 “アレを喰らえば……間違いなく死ぬ!”そう直感したのだ。



 吠えたティアが紅い光に包まれた右腕を振り抜くと――。大きな炎の槍が放たれた。



 放たれた炎の槍は、音より早く飛び、ユラが作りだした強固な2重の土盾に激突する。


 “ゴガアアアアン!!”


 炎の槍は、環状に作られた強固な土盾を粉微塵に砕き、炎で包み込み爆発した。



 コロシアム全体に地響きがして、爆風が観客を襲ったが幸いにして強固な防護魔法により事なきを得る。

 


 爆発の炎が消え、すぐに土煙も収まった。


 ユラが改めて自分が居た土盾の要塞跡を見ると……、アレだけ強力にエーテルを込めたにも関わらず、完全に破壊されている。


 それどころかティアが炎の槍を放った後、その軌跡が直線状に地面が抉れ焦されていた。


 ユラの防御魔法が強固で無ければ、炎の槍は土盾を貫通しコロシアムの端まで突き抜けていただろう。


 炎の槍の、予想以上の威力に一瞬呆けてしまったユラだったが。


 今は試合中である事を思い出し、ティアの方を見る。



 すると……彼女は一心不乱にカバンから取り出した例のお菓子を貪り喰っていた。



 その様子に“何を呑気な”と、ユラは気が抜けた想いだったが……それが間違いだった事を知る。


 バリバリと貪り喰っていたティアは満足したのか、ピタッと食うのを止め……ゆっくりとユラの方を見る。



 ユラが見られた、と思った刹那……。



 急にティアは腰を屈めた後、突如に姿が消えた。


 「き、消えた!? ……まさか!?」


 姿が消えたティアに驚いたユラだが、背筋に冷たいモノを感じて上を見ると剣を下向きに構えたティアが、正に迫っている所だった。



 大技を放ったティアは補給を終えた後、ユラへの頭上からの攻撃を仕掛けたと言う訳だ。


 但し、その跳躍が余りに素早く、ユラの目には消えたとしか見えなかったのだが。


 「拙い!!」


 そう叫んだユラは、大きく後ろへ飛びのいた。その直後、ユラが居た地にティアが天から舞い降りて剣を突き立てる。


 “ザン!”


 ユラは大きく後ろに後退して距離を取りながら、考えていた上級雷魔法を唱える。


 「“天の光顕現し 紫電となりて 裁きを与えよ 崩雷撃!”」


 “ギガガガン!!”

 

 眩く光る無数の雷撃がティアに向かって放たれる。


 普通ならこの崩雷撃を受ければ如何な生物も絶命する禁じ手であったが……。


 「秘石よ、我が身を守れ!!」


 ティアが右手を天に向け、雄々しく叫ぶと……右手は白く光り、彼女に降り注いだ恐るべき雷撃を全て防ぐ。


 そして……。


 「……炎よ、砕け!!」



 ティアは上級雷魔法の崩雷撃を防いだ直後に、右手を地面に付け叫んだ。


 すると……、ティアの右手からユラに向けて直線状に、地面が炎を吹き出して爆発する。


 “ドオオン!”


 「そ、そんな!?」



 ユラは慌てて退避しようとしたが、全く間に合わず……大地の爆発を受けて遠く飛ばされた。


 そして地面を転がった後……そのまま意識を失った。



 ユラとの激闘が終わりを告げた瞬間だった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は8/2(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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