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190)武闘大会-20(ユラ戦③)

 ユラの魔法攻撃を受けて倒れてしまったティア。


 破片とは言え、生成された石槍の破片をモロに喰らったのだ。誰の目にもティアが受けたダメージは大きく、勝敗は決したと思われた。


 しかし……。


 「ふぐ……うぅ……まだ……お、終われないよ……」


 ティアは痛みの残る体を引き摺る様に立ち上がった。何とか立ったティアは破片がぶつかったのか……頭部から血を流している。


 身に纏う皮鎧にも破損が見られ、傷を負ったのか衣服にも血が染み出ていた。



 武闘大会参加者には、学園の模擬戦同様にダメージを軽減する護符装着が義務付けられている。


 従って少々の攻撃は選手には痛痒を与えない筈だが……ユラの放った魔法は、護符の守りを超えたダメージをティアに与えた様だ。


 彼女の受けた傷を見て、試合を見守る審判が命に関わると判断した場合、試合終了を言い渡されるだろう。



 少なくないダメージを負ったティアは立ち上ったものの、息も粗く辛そうな状況だった。しかし、その目には強い意志の光が見られる。


 そんなティアの様子を見てユラは感嘆しながら話し掛ける。



 「……驚いた……流石に終わったと思ったのだけど……、見事な覚悟ね」



 そう言ったユラだが……彼女の周りには土で出来た杭がビッシリと隙間なく直立し、壁となってユラの周りをグルリと取囲んでいる。


 この土の杭こそ、ティアが放った強力な火炎魔法を防いだ防衛の土魔法だった。


 ユラは、ティアが詠唱して下級火炎魔法を放つ際、彼女の右手に尋常ならざるエーテルの高まりを感じ、唯の下級火炎魔法では無いと咄嗟に判断した。


 その為、ユラはティアが魔法を放ったと同時に、防衛の土魔法を展開したと言う訳だった。


 実際、ティアの放った下級火炎魔法は、とんでもない破壊力だった。


 ギリギリの状況だったとは言え、その魔法をユラは何とか防ぎ爆発の火炎が広がる中……立て続けにティアに魔法で攻撃した、と言う状況だった。



 虚を突く形で放たれたユラの二段魔法を喰らって倒れたティア。立ち上がる事が無いと予想していたユラだったが、ティアは立った。



 その事を素直に称賛するユラに対しティアはと言うと……。



 “ぐぎゅうううぅ!!”


 「……は? な、何……今の音? お、お腹の音?」



 ユラの言葉に答えず、ティアは盛大にお腹を鳴らす。最近は随分と抑制出来る様になった、秘石の副作用が行き成り発動した様だ。


 「……え、えっとスイマセン……ちょ、ちょっと待って……」


 “ガサガサ……ボリボリ……”


 真っ赤な顔をしたティアはユラに謝りながら、カバンをゴソゴソとまさぐり、親指大の菓子を大口開けて貪り喰いだした。


 その様子にユラは苦笑いで困惑しながら眺めている。


 ちなみに今、ティアが食べているのはランドシャークの肝臓から調理した菓子だ。


 栄養が豊富で味も食べ易く沢山持ち運び出来る様に、木漏れ日亭の女将が工夫に工夫を重ねて作り上げたモノだった。


 「……ボリボリ……ゴクン……お、落ち着きました。ふぅ……。あ、改めて、ユラさんの魔法……超スゴイですね! あんな形で魔法を使えるなんて!」


 ティアは、ユラの周りに展開された土魔法による防御壁を見ながら、興奮して話した。


 それに対しユラは自嘲気味に答える。


 「そう言う、貴女の火炎魔法も威力も半端無かった……。貴女こそ、素晴らしい才能ね……。剣や体術でも戦えて……魔法までも規格外……。

 そう、正しくあの人……クマリと同じね。そんな貴女だから、クマリの弟子として選ばれたのでしょう……。

 対する私は貴女やクマリの様に魔法以外で戦えない。ティアさんは褒めてくれたけど、魔法でしか戦えない私は……勝利する為に、工夫する必要が有っただけ。

 私には魔法しか無い……だからこそ、魔法戦で勝てる事を! 私が強いって事を、証明するの! ティアさん、あの人の……クマリの直弟子である、貴女に勝ってね! だからこそ、貴女には負けられない!」


 「……ユラさん、貴女は一つ勘違いをしています……。私は、才能が有るから弟子にして貰ったんじゃない。全く逆です。能力も、特技も有る訳じゃ無い。唯一持ってるのは……諦めないド根性だけです! それを、貴女に見て貰うわ!」



 ユラは自らの秘めた激情を明かし、ティアもそれに答えた。ユラは、静かに魔法の詠唱を始める。


 一方のティアは近接戦で攻める考えで、剣を構えたが……ユラが展開する土壁を見て接近戦は不利と踏んだ。それで自分も火炎魔法で攻めようと詠唱を始める。


 「……“源なる水よ 礫となり我が敵を……”」


 「“……“原初の炎よ……”」


 ユラは下級水魔法の詠唱を始めると、彼女の頭上に大きな水礫が生成される。一方のティアはユラより詠唱開始が遅かった為、出遅れた。


 「“……打ち倒せ! 水撃衝!”」


 先に詠唱を終わらせたユラはティアに向け水の礫を撃ち放つ。放たれた水の礫は詠唱中のティアに迫るが……、彼女は剣で薙ぎ防いだ。


 「“……集いて我が敵を……”やぁ!」


 ティアは詠唱を途中で止め、水の礫を切り裂いた。しかし、間髪入れず多数の水の礫が迫り来る。


 ユラは詠唱開始と同時に魔法現象が発動し、圧倒的な速さで魔法を放つ事が出来る様だ。


 多数の水礫はティアに向かい……全弾彼女に迫るが、ティアは秘石を発動し右手の剣で全て薙ぎ払う。


 “バシャン!”


 水礫はティアの足元、広範囲にぶちまけられ……彼女自身も含めて、周りは水浸しとなった。



 この時点でティアは嫌な予感がした。背筋に冷たいモノを感じる。


 一刻もこの場を離れなければならない、そう判断し駆け出した時……。静かで自信に満ち溢れたユラの声が響く。


 「……“天の光集いて 我が敵を穿うがつ刃と為れ 雷刃”」


 “ガガン!”


 ユラが放った雷魔法下級は、駆け出したティアから外れ、全く関係の無い場所で小さな雷を落とす。


 しかし、辺り一面が水浸しとなった大地は絶縁抵抗が無くなり……、雷撃は濡れた全ての場を駆け巡った。


 走りだしたティアも当然、逃れる事は出来ず……彼女も電撃に貫かれるのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は7/26(日)投稿予定です! よろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言]  こんばんは、美里野さん。御作を読みました。  ユラさん、鍛えている上に考えて戦っていますね。  水で濡らした上での電撃とか実に容赦ない。  やはり強敵との戦いは物語の華です。  ティアちゃ…
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