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189)武闘大会-19(ユラ戦②)

 ユラの頭上から攻撃を加えようとしたティアだったが、その動きを完全に読んでいたユラから水魔法による手痛い反撃を受ける。


 初級とは言え、至近距離からマトモに魔法の礫を喰らったティアは吹き飛ばされ、地面に転がった。



 初戦のダリル戦、次いで次戦のリゲル戦とは全く異なる、明確なピンチだ。



 ユラの攻撃が決まった事で、コロシアムの観客達は一斉に湧いた。ティアは歓声が響く中、何とか立ち上がろうと手足に力を入れる。


 ティアは魔法によるダメージと、地面に激突したダメージの両方を喰らい、立ち上がる事が困難だった。


 このまま痛みが無くなるまで横になりたいと思ってしまったティアだったが……遠くに居るユラが何やら呟いているのを見てギョッとする。



 彼女は詠唱しているのだ。



 「天の光集いて 我が敵を穿うがつ……」


 「拙い!!」


 ユラは倒れたティアに対して追撃の魔法を与えようとしている、そう理解したティアは体を捩ってその場から離れた。


 「……刃と為れ 雷刃!”」


 “バシイン!”


 ティアがその場から離れると同時に、さっきまで居た所にユラの雷魔法が炸裂した。あのまま留まっていたら、今の魔法が直撃し敗北していただろう。


 「うぐぅ……おりゃあ! ハァハァ……」


 ティアは痛みを抱えたまま、跳ね起きた。



 「流石だね、追撃の雷刃で終わったと思ったんだけど……」


 「……つ、続け様の連続魔法にこの速度……こ、これが潰滅って言われる所以ですか?」


 「さぁね? 確かに手数と速さには自信が有るよ。でも……それだけじゃ1級には居られない。おいで、ティアちゃん……君が今より上を目指すって言うなら……それを教えてあげる」


 「……胸を借ります、ユラ先輩!」


 自信に満ち溢れた顔で手招きするユラ。対してティアは胸を張って此れに答えるのだった。




 ◇  ◇  ◇




 「何だよ、あの魔法! 隙なんて無いぞ!?」


 ティアとユラの戦いを見て、バルドがユラの魔法発動速度に驚愕の声を上げる。


 「うむ、それに5大要素の魔法を全部使い熟している。クマリ殿、貴女の仲間だったユラと言う冒険者はこれ程の使い手だったのか?」


 バルドの言葉にライラが続ける。ライラが言う5大要素とは”火・水・風・土・空“を基準とした魔法の事だ。


 魔法を使う者は多く居るが、5大要素全てを使い熟せる者など滅多におらず、ライラが知る限り、その様な者はレナン以外居ない。


 もっともレナンは5大要素を超えた魔法を発動出来るが……。


 ともかくライラはレナンに匹敵する多様性を見せたユラに驚いたのだ。ライラの問いにクマリは……。


 

 「いや……私と別れた時、アイツは火・土・空の3属性しか使えなかった筈……。発動速度もあれ程じゃ無かった……。フフフ、ユラの奴……私と別れた後、死に物狂いで頑張った様だ。……さて、ティアよ。目の前の先輩は、紛れも無い強敵だ。そんな相手に、お前はどう戦う?」


 ライラの問いにクマリは独り言の様に呟く。クマリの言葉を横で聞いていたミミリが心配そうにティアを見つめていた。



 

 ◇   ◇   ◇




 対峙するティアとユラ。先に動いたのはティアの方だった。彼女は駆けながら詠唱を行う。


 「“原初の炎よ 集いて我が敵を……”」


 詠唱を行いながら右手に意識を配り、秘石を発動した。


 “キイイン!”


 甲高い音を立てて秘石はティアに凶暴な力を与える。


 「“……打ち砕け 火砕!”」


 詠唱を終えたティアは右手から下級火炎魔法を放った。下級とは言え、秘石の力を与えたその魔法は、上級を遥かに上回る威力だ。


 小さな建屋等吹き飛ばす程の破壊力を持つその魔法をティアはユラに直撃させず、彼女の前方地面に向け放った。


 爆裂する魔法でユラを吹き飛ばして勝利する考えだった。放たれた大きな火球はティアの狙い通りの位置で命中して爆発した。


 “ドガアアン!”


 流石に秘石から与えられる力を抑えて加減したが、それでもティアの魔法は大音響を響かせ、地面を震わせた。


 爆発により生じた火球は炎となり立ち上り……誰もがユラは吹き飛ばされて、勝負は決したかと思ったが。


 「“……爪牙となりて切り刻め 地狼牙!”」


 爆発に依る土煙が立ち込める中、ユラの声が響く。彼女が放ったのは中級地属性魔法だ。


 それは地形を操作し槍の様に鋭い石状の牙を範囲の地盤から生成し、敵を貫き切り刻む魔法である。


 鋭い石槍が瞬く間に形成され、ティアに迫った。


 「う、嘘!?」


 火炎魔法でユラが何らかのダメージを受けていると予想していたティアだったが、爆発の後に間髪入れず攻撃されるとは予想出来ず慌てた声で叫ぶ。


 それでもティアは大きく後方に飛んで、襲い掛かった石槍から逃れた。



 しかし……。


 

 「“敵を切り刻め 風牙!”」



 後方に飛んでいる最中に響いたユラの声。それは下級の風魔法を詠唱を終えた声だった。


 “ゴヒュウ!!”


 立ち上る炎や土煙を吹き飛ばしながら飛来した風の刃。その風の刃は一枚では無く、3枚。


 刃はクロスする様に同じ軌道をで時間差で迫る。しかし、その風の刃はティアに向けて放ったモノでは無く、土魔法により乱立した石槍に纏めて命中した。


 形成された石槍群に折り重なる様にぶち当たった風の刃は……一瞬で霧散し乱気流を生み出す。


 そしてその結果、生じた乱気流により石槍は切り刻まれ吹き飛んだ。


 飛散した石槍は、バラバラに砕かれながら、着地を終えたティアに襲い掛かり、彼女の体を容赦なく打ち付けた。


 “ガガガン!”


 石槍の破片をモロに喰らってしまったティアはそのまま崩れ去る様に倒れたのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 


追)誤字の為見直しました!

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