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188)武闘大会-18(ユラ戦①)

 始まった3回戦目……。


 決勝戦で待つマリアベルと対戦とする為には、この3戦目を勝利し……次の準決勝を勝ち抜かなくてはならない。



 コロシアムで向かい合うティアと、対戦者のユラ。試合開始の合図の後、彼女は年上の女性らしく落ち着いた様子でティアに声を掛ける。



 「……初めましてだね、ティアちゃん……。君と戦うの楽しみにしていたよ」


 「ユラさん……貴女の事は、師匠に聞きました……。昔、パーティを組んでたって……」


 穏やかに話すユラに、ティアは緊張気味に答える。


 「まぁね……。結構前の事だけど……。あの人、クマリが王都に居着くまでコンビ組んでたんだ。それにしても……“師匠”か。あの面倒臭がりのあの人が……弟子を取るなんて……。ハハハ、余程君の事が、“面白い”だろうね……だから! 私も、この試合楽しませてよ!」


 ユラは話している途中に笑い出して臨戦態勢へ移った。ティアは慌てて距離を取る。


 ユラが何やら呟くと彼女の背後に火球が五つ形成された。


 「し、信じられ無い!」

 

 ティアはその光景を見て思わず叫ぶ。それもその筈、魔法に長けている者だとしても、同時に魔法を複数行使出来る事等……滅多に見れるモノでは無かったからだ。


 驚愕するティアを余所にユラの火炎魔法は一度に放たれた。


 “ドドドドドン!!”


 ユラが放った五つの火炎魔法は初級だったが同時に炸裂した為、広範囲に爆炎が広がった。


 「うわっ!」


 ティアは予想を超えた火力にのけ反りバランスを崩す。そこに光る刃が飛来する! 


 「!? ヤバい!」


 ティアは咄嗟に右手の剣で飛んで来た刃を叩き落とす。


 “ガキン!”


 ティアに向けて飛ばされた刃は氷の槍だ。


 炎の隙間から縫うように迫った氷の槍は、炎の熱気にも拘らず形状を保ったままだった。強いエーテルを込められた為だろう。




 「……やるねー! 簡単に防がれちゃったわ。 初戦は此れで勝てたのだけど」


 「師匠にかなり、鍛えられましたから」


 笑顔で話すユラに、ティアは応える。


 「良いわね、私なんか……何度頼んでも弟子にしてくれなかったのに」


 「……多分、面白いオモチャを見つけた気分だと思います。毎日弄られますので……。だけど、お蔭で少しは戦える様になりました。私に力を付けてくれた事……師匠には感謝してます」


 

 悪戯っぽく拗ねた様子で話すユラだが……悪気は無く純粋にからかっている様だ。彼女の意図が分ったティアもくだけた感じで話すが、最後は本心を伝えた。


 ふざけながらもクマリへの感謝をティアは蔑ろには出来なかったのだ。そんな彼女の様子を満足そうに見たユラは笑いながら叫ぶ。


 「ハハハ! あの人も良い子を見つけた様ね! だからこそ、本気出さないと!」


 そう嬉しそうに叫んだユラは魔法の詠唱を始める。


 「“静かなる大地よ 我が意に従い 矢を放て……地破弾!”」


 ユラが唱えたのは初級の土魔法だ。それは大地から小さな土の刃を生み出す魔法だった。


 “ドヒュン!”


 詠唱完了と同時に放たれた複数の土の刃。しかし魔法は初級である為、威力や放たれる土の刃も大した事は無い。


 クマリに鍛えられたティアはこの魔法を横に逃げて躱そうとうするが……。


 そんな中、ユラからボソボソと呟く詠唱が聞こえる。


 「“……我が敵を切り刻め 風牙!”」


 ユラは土魔法を放った途端に初級風魔法の詠唱を始めていた。


 ティアが始めの魔法を躱したと同時に放たれる風魔法。この魔法は初級だが大気を操り刃と化して放つ技だ。


 ユラはティアが土魔法を躱した方向に向け、次弾の風魔法を放った。


 「や、やばい!」


 ティアは避けたと同時に放たれた風魔法を見て叫ぶ。上に飛んで逃げるしかないと判断したティアは迷わず秘石を発動した。


 「アクラスの秘石よ! 私に力を!」


 “キイイイン!”


 ティアが右手に意識を集め叫ぶと、アクラスの秘石は甲高い音を立ててティアに凶暴な力を与える。


 秘石の力を発動したティアは一気に飛び上がった。


 “ビュン!”


 彼女は上に飛び上がる事で迫る風魔法を回避したのだ。同時にティアはユラへの攻撃を行う心算だった。


 飛び上がった彼女の右手には剣が握られている。


 ティアのジャンプは人外の動きを見せ、一気にユラの元へと飛ぶ。


 クマリからユラは純粋な魔法使いであり、近接戦闘は苦手と聞いていた、だからティアは一気に勝負に出る考えだった。


 凡そ普通の人間では有り得ない跳躍を見せたティアはあっと言う間にユラの頭上に迫った。


 「ユラさん、覚悟!」


 ティアは右手の剣を握り締め叫ぶ。このまま剣でユラを薙ぎ払えばティアの勝利だ。



 “勝った!”と確信したティアだったが……。



 「“……我が敵を打ち倒せ 水撃衝”」


 近付くユラがボソボソと詠唱を行っている事にギョッとする。



 そして――。


 “ドパン!”


 飛び上がって迫るティアに向けユラは初級の水魔法を放った。


 彼女が放った水魔法は、以前ソーニャが使った魔法で、大気中の水を集め礫を作り放つ魔法だ。


 空中で飛び上がっていたティアに、至近距離から放たれた水魔法を避ける術は無く。


 “ズダン!”


 水の礫に撃たれたティアは吹き飛ばされ……音を立てて地面に転がるのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! ティアの先輩弟子ユラとの戦いが始まりました。彼女は強敵で、ティアも苦労すると思います。


 次話は7/19(日)投稿予定です、宜しくお願いします!

 追)一部見直しました!

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