表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
19/370

18)そして婚約へ

 ミミリ達に父トルスティンから持ち掛けられた見合い話について説明するティア。


 「……と言う訳で、私は騎士か冒険者になりたいの。でも伯爵家の子女である私は、お見合いは避けられない。私の夢とこの国の未来の為に二度とお見合い話が出ない様に何とか対策を取る……それが私とレナンが求められている最優先課題よ! もっとも有力な案が代わりにお見合いして貰う、野良の伯爵令嬢落っこちてないか探す事ね」

 

 馬車の中で胸を張って説明するティアに、バルドが本気で呆れながらレナンに問う。


 「おいレナン……コイツ……何処まで本気なんだ?」

 「……残念ながら……全部本気だよ、バルド……勿論、野良の伯爵令嬢については止めたけど」


 レナンが困りながらバルドに説明すると、バルドは小さな声で愚痴りながらティアに溜息混じりで(たず)ねる。


 「ハァァ……こんなアホが俺らの上に立つとか勘弁……まぁ、其処はレナンが居るから大丈夫か。所でティア御嬢さんよ? 一杯突っ込み所満載だけど、“この国の未来の為”ってどういう意味だよ?」


 「そんなの簡単よ! この私は騎士に為れば輝かしい功績を! 冒険者になればすぐにでも特級冒険者に! そんな私が貴族の奥様に収まるなんて間違いなくこの国の多大な損失だわ!」


 バルドの問いにティアは自信たっぷりに答える。対して彼は脱力しながら呻く。


 「……この女、今回の討伐で邪魔しかして無いの……まさか気付いてないのか……!?」


 驚愕するバルドにミミリが制止してティアに問う。


 「其れは違うよ、バル君……ティアちゃん魔法で私達助けてくれたじゃない……まぁ、ここは私に任せて? ……ねぇティアちゃん……誰か好きな人とかいないの? 居たら領主様もきっと分ってくれるわ」


 ミミリのもっともな意見にティア(しば)し考えて答える。


 「……好きな人……うーん、私の目に叶う男なんてこの領地には居ないわ。私より断然強くて頭が良くて……容姿も大事……それに包容力がある人じゃないとね! 何より私が騎士や冒険者になってもその点を応援してくれるかどうかも大事な事だわ。“家に居ろ”とか絶対に勘弁よ! それに私は気にしないけど、子女には相手の身分とか面倒臭いしがらみが……」


 ティアの婚約条件を聞いてバルドが呆れ、とんでもない事を呟く。


 「……何だよ、その条件……そんな条件に当て()まる奴なんていない……うん? そういや一人だけ居るな……そう、レナンだ……」


 ボソッと呟いたバルドの言葉にレナンが慌てて叫ぶ。


 「ちょ、ちょっと! バルド何言いだすんだよ!」


 そう言うレナンの顔は珍しく真っ赤になっていた。バルドの言葉を聞いたティアは……。


 「冗談は止めなさい、バルド! 私とレナンは姉弟なのよ! ……まぁ義理だけど……待てよ、義理!?」


 バルドの言葉に何か気付いたティアは壊れた機械の様にブツブツと一人呟く。


 「……そうか……義理なら結婚はOK……レナンが婚約者になったら……お見合いは根絶出来る……レナンは”見た目だけ”はいい……ちょっとは強いし……条件的にはOK……基本的にコイツは私の言いなり……私とミミリ達とで冒険している間……レナンには雑用やらせ……ヤバい時は噛ませ犬として召喚……将来的にはお父様とエミル兄様とレナンに面倒事は丸投げし……そして私は輝かしい騎士か冒険者の道を歩む! ……うん! 採用!!」


 「「「え、何が!?」」」


 ティアの“採用”発言に彼女以外の3人は同じ事を見事にハモって問うた。対してティアは満面の笑みを浮かべ、言い切った。


 「全て問題解決したわ!! 私はレナンと婚約する!!」

 「「「えええー!?」」」


 ティアの爆弾発言に、又もレナン達3人はハモって叫ぶ。対してティアはバルドに向かって満面の笑みで話す。

 

 「何よ、バルド! アンタ筋肉しか脳に詰まって無いと思ったけど、ちょっとは良い事言うじゃない! レナンが私の婚約者なら、万事解決よ! 初めからそうすれば良かったわ!」


 そう喜喜として話すティアにレナンが恐る恐る確認する。


 「……えーっと……ティアさん? 婚約の意味分ってる? 僕と結婚するって事になるんだよ?」


 「何言ってんのよ、意味分ってるに決まってんじゃない! どうせ今までずっと一緒だったんだから、此れからも一緒って事でしょ? それじゃ今とこれからも何も変わんないわ! どうせアンタとは腐れ縁なんだから一生、ずっと一緒でも何も問題無いでしょ? それとも何!? まさかアンタ、嫌だって言う心算なの!?」

 

 ティアはそう言ってレナンに強く迫る。対してレナンはティアが“此れからも一緒”と言った事がとても嬉しかった。だから……。


 「……嫌な訳無いよ……ティアが望むなら僕は君の横にずっと居たい……」


 レナンは顔を赤くしながら呟いた。ティアはレナンの真意も分らず、嬉しそうに言った。


 「よし! なら決まりね! お父様に報告して、お見合いなんて金輪際止めて貰うわ! そして私は輝かしい未来を手にする! 自由への明日を!!」


 ティアはそう言って拳を握り、声高く宣言する。その様子を見たミミリは苦笑し、バルドは呆れ顔でレナンに問う。


 「……レナン……良いのかアレ? あの箱入りお嬢様、結婚の意味とか絶対分って無いぞ?」


 「多分……そうだろうね……でも、僕は……ティアが言う通り、彼女の傍に居る事は此れからも変わらない……だから……これで良いんだ……」


 バルドの問いに対し、レナンはそう答えて(うつむ)いた。


 「……お前も苦労しそうだな……」


 その様子を見たバルドはレナンの頭を乱暴に撫でて呟くのであった……。





 こうして、ティアは降り掛かる見合いの根絶と、彼女の夢である騎士か冒険者の道を歩む為、打算的にレナンと婚約した。


 ティアは未だ心身共に成熟していない為、結婚の意味を良く分っていなかった。彼女にとって結婚は家族として一緒に暮らす、という側面しか見ていなかったのだ。


 だが、対するレナンは違っていた。彼は幼い時より抱いていたティアに対する密やかな想いが叶うかも知れない、という期待を抱いていた。


 だから、彼女との婚約話はレナンにとっては、諦めていただけにとても嬉しい事だった。


 ただ、彼は分っていた。この婚約話自体が、ティアの良く有る思い付きにしか過ぎない事も。そして彼女の思い付きはいつだって唐突に終わる事を。


 それでもレナンはこの出来事に期待してしまうのであった……。




 レナンの予想通り、ティアの思い付きの婚約はそう遠くない先に唐突に終わりを告げてしまう。


 その時のティアは愚かで幼かった為に、(そそのか)され熱に浮かれて最も大事な者を手放すのだ。


 だが、その事で誰よりも傷つき苦しむ事になったのは、終わらせてしまったティアの方だった。


 慟哭(どうこく)し嘆き苦しんだ彼女は自らの愚かさを悔やみながら、ある事を切っ掛けに大切な者を奪った者に対する復讐者になる。


 楽しい未来が永遠に続くと信じてやまない今のティアにはよもやそんな事になるとは、分る筈も無かった……


いつも読んで頂き有難う御座います! 

次話投稿は明日予定です。宜しくお願いします!


読者の皆様から頂く感想やブクマと評価が更新と継続のモチベーションに繋がりますのでもし読んで面白いと思って頂いたのなら、何卒宜しくお願い申し上げます! 精一杯頑張りますので今後とも宜しくお願いします!


PS:あらすじ長すぎたので見直しました! また見直しするかも、ですが宜しくお願いします!

追)一部見直しました!

追)冒険者のクラス見直しました!

追)一部見直しました!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ