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185)武闘大会-15(リゲル戦③)

 「わ、分った……! こ、降参する! おおお俺の負けだ!」


 槍を落とされた上に、首元に剣を据えられたリゲルは、声を上ずらせてあっさりと降参する。


 彼の降参宣言を聞いて、審判が試合終了のサインを出した。



 「「「「「わああああぁ!!」」」」」



 ティアの勝利を受けてコロシアムの観客達は一斉に湧き、大きな歓声を上げるのだった。


 両手を上げて怯えるリゲルを、ティアは侮蔑した目で見下した後、剣を収めコロシアムの中央に戻る為に踵を返す。



 試合後の礼を行う為だ。対してリゲルは……。



 「こ、この俺に……良くもこんな真似を……許さん……」


 肩を震わしながら呟き……落とした槍を拾い上げる。利き手の右手指はティアに殴られ酷く痛む為、左手で槍を掴んだ。


 そして……コロシアム中央に向かっているティアを目指し駆け出す。


 そしてティアの背後で槍を大きく振り被り叫んだ。


 「ば、馬鹿め! 試合は最後に立って居た者が勝ちだ!」



 リゲルは試合が終了したにも関わらず、卑劣にも背後から攻撃する心算だ。


 卑怯なリゲルの行為を止めようと審判が叫ぶ中、リゲルはティアに迫り左手で掴んだ槍を振り降ろす。


 “ビュン!”



 背後からの不意打ちにティアは……。


 “ザッ!”


 絶妙なタイミングで横に避けた。


 

 「……武の名門、バンホルム家じゃ……試合終了後に不意打ちなんて、有りなの?」


 「せ、戦場では! 最後に立っていた者が勝ちだ!」


 不意打ちをあっさりと避けたティアは剣を構え、リゲルを皮肉りながら問う。


 対してリゲルは左手で槍を構え直し、抜け抜けと世迷言を言い放った。



 降参して負けた筈のリゲルが、ティアに背後から攻撃したのを見て、観客から激しい罵詈雑言が発せられる。


 

 そんな中、ティアはウンザリした様子で小さく呟く。



 「……もう良い……。これ以上、私の戦いを汚さないで」


 「フハハ! 女が何をほざく! お、女など! 男に使われて生きれば良いのだ! 女の癖に、戦おうなど……烏滸がましいわ!」


 「…………」


 リゲルの傲慢な言葉に、ティアは怒りを通り越し、呆れ果てた。


 そして……その言葉や態度で絶対思い出したくない、在る男の存在が脳裏に浮かんだ。



 ……そう、フェルディだ。



 あの男も世の女性を見下し、騙して道具の様に扱った。目の前の男、リゲルも……あの最低なフェルディと同じ人種なのだと理解し軽蔑した。


 そしてフェルディが脳裏に浮かぶと同時に、レナンの姿が鮮明に思い出された。


 レナンは何時だって……我が儘だったティアに寄り添い、明るく優しく接してくれた。


 ティアは自らが失った者の大きさと……自分が彼を取り戻す為に、何をすべきか再認識した。



 だから……。



 「……有難う、リゲルさん……。貴方のお蔭で、自分が何をするべきか……もう一度はっきりと理解出来たわ」


 「そ、そうか!? 今からでも遅くない、金は2倍やるから負けを宣言し……」


 ティアの言葉で気を良くしたリゲルが話している途中の事だった。ティアはリゲルの槍を右手の剣で思い切り薙ぎ払う。


 “ガイン!”


 「!? や、槍が!」


 甲高い金属音の後……斬撃を受けた槍はリゲルの左手を離れ……。


 “ヒュン……ザシュ!”


 槍はコロシアムの端まで飛び地面に突き刺さる。



 「き、貴様、何を!?」


 「……私のやるべき事はね……アンタみたいな馬鹿を薙ぎ飛ばして! レナンの為に戦う事よ!!」


 ティアはリゲルに剣を向け叫ぶ。


 「……今度こそ、負けを認めて引き下がりなさい!」


 「う、ううるさい! お、女などに従うか!」



 ティアの最後通告にリゲルは何処までもみっとも無く叫び、殴り掛かってきた。


 豪勢なガントレットには鋭い鋲が付いており、これで殴られれば危険だ。



 しかし……迫るリゲルにティアは冷静そのものだ。



 口元で何かを呟きながら、何と剣を収めた。そして左手を前にして腰を落とし構える。


 修行中、自分がクマリに散々やられた技をリゲルに仕掛ける心算だった。



 殴り掛かって来るリゲルが間合いに入った時、彼の拳を……体をずらして躱しながら両手でリゲルの腕を掴み肩越しに背負い投げた。


 “ズドン!”


 綺麗に決まった投げ技でリゲルは地面に転がったが……ティアの攻撃は止まらない。



 「……我が敵を打ち砕け! 火砕!」


 彼女は、投げ技を決める前から詠唱していた魔法を発動する。


 ティアの伸ばした右手から撃ち出された火炎は、投げられ転がっているリゲルに命中して炸裂した。


 “ガガン!”


 「ギャア!!」


 投げられた所に、ティアの火炎魔法が炸裂した事でリゲルは短い叫び声を上げながら、吹き飛ばされた。


 10m程、ゴロゴロと転がったリゲルは、地面に仰向けとなって白目を向いて動かなくなった。



 完全に気を失っている様だ。



 再度審判が試合終了を叫ぶと……コロシアムの観客達はさっきより遥かに大きな歓声を上げるのだった。


 こうして恥知らずな貴族の男、リゲルとの戦いは……秘石の力を封印し、本気を抑えたティアが圧勝したのであった。

いつも読んで頂き有難う御座います! 


この回でリゲル戦終わりました! チート能力無くてもティアが強い事を示したかった事より、今回の戦いとなりました。


次話は7/8(水)投稿予定です、宜しくお願いします!


 

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