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178)武闘大会-8(ダリル戦②)

 鞭で拘束されたティア。彼女は仕掛けたダリルに向かい駆け出す。


 「うお!? 突然何を!?」


 これにはダリルも慌て叫んだ。何せ、ティアを引き寄せようと鞭を手繰り寄せている最中だ。体のバランスを崩し倒れそうになったのだ。


 

 ティアは身を低くしてダリルに向かい突進する。



 「ちぃ! やらせない!」


 ダリルは駆けて来るティアに対し、肘鉄を食らわそうとする。しかし、ティアは腰を落としダリルの足に突進し、押し倒した。


 “ドオウ!”


 「クッ! こ、この!」


 ダリルはティアに押し倒された事に激高し鞭の柄の部位で彼女の背中を打とうとした。ティアはその攻撃も読んで、身を転がせ躱す。


 ティアを縛り付けた鞭はティアが向かって来た事、そして身を転がした事で緩んだ。


 ティアはすかさず距離を取ってダリルから離れる。対してダリルは鞭を頭上に振り回し、彼女に近付く。



 ダリルの中では様子見は完全に終わった。今は、目の前のティアを一刻も早く倒すと決めたのだ。



 鞭を使うダリルが元より得意としていたのは鞭でも、ナイフでも、ましてや魔法でもない。


 彼女が本当に得手としていたのは……格闘戦だった。


 鞭は相手を搦めて必殺の一撃を喰らわす為の手段で、遠距離ならばたった今ティアにしたように体に巻き付け身動きの取れない相手に、強力な蹴りや打撃を与えるのだ。


 鞭自体の一撃も音速を超え、まず目視では捕え切れ無い。


 接近戦なら鞭の柄の部分で打撃を与えたりと、鞭自体の攻撃手段も多彩だった。もっとも扱い自体が困難で、使い手を選ぶと言う問題が有ったが。


 だが格闘戦に長じたダリルは鞭の有用性を重んじ、使い熟すべく修行に明け暮れたのだった。


 結果、武器として扱いにくい鞭を手足の様に使えるまでになった。鍛え上げられたダリルの鞭に、ティアは屈する筈だったが……結果は、自滅覚悟で特攻され絡めた鞭を外して仕切り直す事となった。



 そんなティアにダリルは自分の得物である鞭が破られた事に苛立ちを隠せない。


 「……まさか自分から突っ込んで来るとはね……。しかも打撃戦を予想した様な動き……。私とアンタ、初顔合わせの筈だけど……何処かでやり合ったかな?」


 「いいえ……、貴女と出会ったのは此処が初めて。だけど……貴女の戦い方は師匠に教えて貰ったわ」


 苛立ちながら尋ねるダリルに、ティアは静かに答える。


 「……アンタの師匠って確か……特級のクマリか……成程、納得だね」


 「そう、私はこの場でも誰かに助けられている。だからこそ……一人で戦うあの人に負けられない。必ず勝って、レナンを取り戻す!」



 自分の戦い方を読まれている理由が分ったダリルは納得する。対してティアは目の前のダリルでは無く、最終戦で待ち構えるマリアベルに闘志を燃やす。



 「フフフ……私なんて眼中に無いって感じだね……馬鹿にされたモンさ」


 「……そんな事無いわ……。貴女は凄く強い。今だって“失敗”しちゃったもの」


 「失敗だって? 私の鞭を! 私の技を! 躱しておいて何をほざく!」



 ダリルの言葉にティアは彼女を称賛しながら“失敗”した、と言った。恐らくはさっき、ダリルの鞭を外した行動を言っているのだろう。


 対してダリルは自分の技を回避した事を“失敗”と言われた事に激高した。彼女はティアに向かい鞭を振るう。


 “ビュン!”


 ティアはこれをバックステップで躱しながら、魔法の詠唱を始める。



 「……次は成功させる…… “原初の炎よ 集いて 我が敵を打ち砕け! 火砕!!」


 ティアはいつも下級火炎魔法を放つ。秘石の力を発動したティアなら下級とは言え、恐るべき破壊力を持つ魔法だが……クマリとの特訓により威力を調整出来る様になっていた。


 それでもティアの魔法は中級魔法程の破壊力は有った。しかしティアの放った魔法は対戦者のダリルでは無く彼女の手前地面に炸裂し、盛大な土煙が舞う。


 “ドドン!”


 「大した威力だが! 外すとはお粗末だね!」


 立ち上った土煙の中、ダリルは鞭を振るう、ティアの位置は魔法を放った際に把握済だ。


 “バシィン!”



 鋭い鞭の音が響き……舞っていた土煙が消えると、其処には……又も鞭で拘束されたティアの姿が……。



 ダリルは鞭の柄を力強く握り締め、油断なくティアを手繰り寄せながら彼女に侮蔑を込め問う。


 「……今回も失敗か?」


 嘲りを込めた筈のダリルの言葉に対し、ティアの答えは予想外だった。


 「うん……失敗した。本当、貴女の鞭は鋭いわ……。だけど0点じゃ無い」


 

 そう呟くと同時にティアは右手の秘石を発動させた。


 “キイイン!”


 甲高い音を立てる、その右手には……短剣が握られていた。ティアが強化された右手に力を込めると……。


 “バツン!!”


 ティアを拘束していた鞭は短剣により、切り落とされバラバラになる。


 

 「馬鹿な!? 鋼線を織り込んでる鞭を切るなんて!」


 「……だから刃が欠けちゃったのか……。でもね、“力”を使えば簡単だったよ?」


 ダリルはワイヤを芯に使って補強している筈の鞭が切り落とされた事に驚くが、秘石の力で強化されたティアの右手にはワイヤなど大した意味が無かった様だった……。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話投稿予定では6/14(日)です。宜しくお願いします!

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