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177)武闘大会-7(ダリル戦①)

 遂に始まった、武闘大会本選……。



 ティア初戦の対戦者は女性冒険者だった。彼女の得物は鞭と使うと言う。



 試合前、選手控室でティアは師匠クマリから問われる。



 「……初戦は、鞭使いか……、ティアよ、どう攻める心算だ?」


 「えーっと……、取敢えず、先手必勝です! 鞭でぶたれる前にやっつけます!」


 「はぁ……ちょっとは成長としたと思った私が馬鹿だったよ……。このアホ弟子! ちょっとは考えろっていつも言ってるだろう!」


 「す、すいません!」


 残念な発言にクマリはティアを叱る。この控室にはクマリとティア以外にライラとバルドにミミリが居た。


 リナとジョゼは観客席で観戦していた。ちなみに公爵令嬢のパミラは貴賓席で観戦している。


 

 「いいか、お前はマリちゃんと戦う事しか念頭にないから、どんな相手でもアホみたいに突進するんだ。お前の方が実力有る場合なら、それも良いだろう。しかし、この大会では腕が立つ相手ばかりだ。戦う前からもっと慎重に行動しろ!」


 「は、はい……」


 クマリにいつもの様に叱られたティアは試合前だと言うのに小さくなった。


 「……まぁ、取敢えずは目の前の相手だ……。相手の名はダリル……二級冒険者で、其れなりに顔は売れてる。この大会に出場出来る位だからね。奴の得物は鞭だが……懸念すべきは、その多彩さだよ。お前に奴の戦い方を教えるから、頑張ってモノにしな。だから、初戦でコケるんじゃないよ!」


 「はい師匠!」


 クマリは呆れながらもティアにアドバイスを施す。こうしてティアは武闘大会初戦を迎えた。



 ◇   ◇   ◇



 コロシアム中央に立つ、ティアと鞭を使うと言う二級冒険者のダリル。


 彼女は長い髪を束ねた精悍な顔つきの美人で、皮鎧を纏っている点は冒険者らしいが、右手には長く垂らした鞭を持っている。


 腰にはナイフを備え、両手には頑強な鋲が付いた革手を装備している。クマリの言う通り鞭一辺倒という訳では無さそうだ。


 ティアが緊張しながらダリルを観察していると、その彼女から声が掛かる。



 「……アンタが最近有名な紅き豪炎って奴か……黒騎士マリアベルと並ぶって実力の……。私はダリル、いい勝負を期待してるよ」


 「は、はい! こちらこそよろしくお願いします!」


 互いの挨拶が終わった所で、丁度審判が試合開始を宣言する。試合開始と共に、ダリルの右手が素早く動いた。


 「シッ!」


 彼女が掛け声と共に繰り出された鞭の一撃は、ティアの想像以上に伸びてくる。


 ティアはクマリの指示通り、後ろに飛んで鞭の一撃を躱す。クマリのアドバイスを受けていなければ、ティアは真っ直ぐ突っ込む予定だった。


 クマリが言うには、ダリルの鞭は打つ為だけが目的じゃないと言う。彼女の射程に入れば危険なのだ。


 「……へぇ、聞いてたアンタの性格じゃ……飛び出して来るって思ったけどな……。でも……私から、距離を取るだけじゃ勝てないよ。……天の光降立ち 閃光となりて……」


 ダリルは距離を取ったティアに対し、中級雷撃魔法の詠唱を始める。


 中級雷撃魔法は初級の雷刃とは威力は断違いだ。発動した途端、音より速く高電圧の太い雷光がその身を焼き砕く。


 武闘大会参加者全員には模擬戦の時と同じように衝撃を緩和する護符が配布されていた。


 それによりある程度のダメージは緩和されるが、それでも中級魔法は意識を失う程のダメージをティアに与える。ダリルが魔法の詠唱を終えた途端、一秒も待たず雷光に撃たれるだろう。



 以前のティアなら其処で終わっていた。だが、今の彼女には秘石がある。ティアはダリルが魔法を唱え始めた時、既に秘石を起動していた。


 

 ダリルが詠唱を終わらせようと叫ぶ。



 「……敵を打ち砕け 雷衝!!」


 対してティアは真新しい包帯が巻かれた右手を高く上げて叫ぶ。


 「アクラスの秘石よ! 我が身を守れ!」


 “キイイイイン!”


 ダリルが中級雷撃魔法を唱えると同時にティアが叫んだ。ダリルの詠唱後、ティアの頭上に強力な雷光が迸る。


 “ガガガガ!!”


 だがその雷光は、秘石を発動して白く輝いたティアの右手に防がれる。


 雷光は秘石の光の為かティアの体を貫かず、右手に弾かれた様に分散し地に落ちた。


 強力な電光を防いで見せたティアに、観客達も歓声を上げる。しかし……。


 “バシイィン!”


 歓声の中、鞭の鋭い音が響く。音がした方を見ると魔法を躱した筈のティアを締め上げる様に鞭が巻かれている。



 「……魔法が躱される事なんて……織り込み済みさ……。派手な方が引っ掛り易いんでね。倒れてくれれば儲けものだったけど」


 鞭をティアに巻き付けたダリルが不敵に笑いながら呟く。彼女にとって中級魔法は、油断を誘う為の罠に過ぎなかった。


 ティアが魔法を防いだ間に、鞭をしならせ彼女の体を拘束したのだ。ダリルは鞭を手繰り寄せ、ティアを引き寄せようとする。


 絶体絶命のティア。しかし、彼女は何を思ったのかダリルに向け突如駆け出したのだった。


 いつも読んで頂き有難う御座います! 今回から武闘大会本戦が始まりました。事件と並行して事が進みますのでちょっと長くなるかと思います。


 次話は6/10(水)投稿予定です。宜しくお願いします!

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