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17)腐肉の龍-13(その後の事)

 余りに突然に生じた終焉と、眼前に繰り広げられた大破壊……ライラ達は絶句して言葉を失っていた。


 「「「「「…………」」」」」


 それもそうだろう。先程の大破壊は想像する事すら出来ない、有り得ない状況だからだ。


 そんな中、唯一人だけ動く者が在った。ティアだ。彼女はレナンに抱き着き叫ぶ。


 「レナン!! 引っ込んでろって言ったのに! この馬鹿!! うう……ぐすッ……」

 「……ごめんね……ティア……心配掛けた……もう大丈夫だから」


 泣きながらレナンに抱き着いて文句を言うティアに対し、レナンは右手でティアの背をさする。


 ちなみにレナンの龍の様な腕はいつの間にか元に戻っていた。


 そんなティアとレナンの様子を見たライラが我を取り戻し、そこに居た全員に向け突如叫んだ。


 「各々方! 今、目にした龍討伐に関してはアルテリアの御領主トルスティン閣下の御判断に寄るものとする! 閣下の沙汰(さた)が出るまで如何か内密に願いたい!」



 護衛騎士のライラがこの様に懇願(こんがん)した事には理由が有った。



 ライラは、レナンが異界の民である事は祖父や領主のトルスティンから聞いていた。聞いてはいたが、まさか此処までの力を持っているとは想像も付かなかった。


 片腕で大地を抉る程の力を持つ存在……そんな者が辺境の伯爵領に居る。


 それが知られたとすればその力を求め争奪戦になるか、王国に謀反の疑いを掛けられるかも知れない。


 それどころかこの事実を他国が知る事になれば侵略戦争の材料になるだろう。


 ライラはそうした懸念より“絶対(ろく)な事には為らない”と判断し、ここに居た全員に懇願したのであった。


 ライラの叫びに対し、副隊長ダリルを始めとする近衛騎士達や冒険者のバルド達も快く同意し、レナンの力について公言しない事を誓うのだった。



 しかし……ライラの思惑とは裏腹にレナンと腐肉の龍との戦いを“空”から見つめる存在が居た事は誰も知る由も無かった。



 その後、近衛騎士のベルンとアーラが馬を飛ばしてレテ市に向かっていた一行の元に向かい、腐肉の龍を倒した事を説明した。


 喜び安堵する村人達は知らせを聞いて歓声を上げていたが、セネ村に戻りたがった為に全員で村に戻る事になった。



 一方レナンは龍から受けた傷を自身の回復魔法で治療していた。レナンの傍にはティアやバルド達冒険者組が付き添う。


 その間、ライラとダリルはランプを持って抉られた大地の端に転がっていた腐肉の龍の後ろ足を討伐の証明として回収しようとしていた。




 「……全く……凄まじいな……此れは」


 近衛騎士副隊長のダリルは何処までも続く破壊の痕跡を見て思わず呟く。


 それもそうだろう、幅数十mにわたり扇状に抉られた大地。その抉れた大地は二つの月が照らす中、地平の彼方まで延々と続いており、どこまでこの破壊の痕跡が続いているか分らない程だ。


 それを強いとは言え幼さが残る少年が一人で行なった。


 その事に強い戦慄を覚えると共に、ライラが懸念する理由が良く分った。ダリルの横に居たライラが口を開く。


 「確かに……夢でも見ている様だ……所でダリル殿……この事はくれぐれも……」


 「案ずるな、ライラ殿。このダリル、レナン様の秘めたる御力について、決して公言しない。この事は共にいたアーラやベルンにも徹底しよう。我等はレナン様に救って頂いた身だ。その恩義に反する事は生涯において無いと誓う」


 ライラの念押しに対し、ダリルは力強く宣言する。

 

 「……感謝する……所で……此れが龍の残骸か……?」


 唯一残った腐肉の龍の体は右足首のみ。それでも丸太程の太さを持っている。


 残った右足首には揺らめく光を放つ不思議な銀色のリングが巻いてある。それを見たダリルが呟く。


 「一体何だ……このリングは? 見た事無い材質だな……」

 「そうだな……状況的に、このリングのお蔭で右足首が残った様にも……見えなくは無いな……とにかく、この足首は回収し、トルスティン閣下にお渡しする」


 「ああ、頼む。俺の方はエミル閣下に状況を説明しよう」


 こうしてライラとダリルは月明かりの元、腐肉の龍の残骸を回収した。


 そうしている内にアーラ達が呼びに行った村人達と合流し、治療を終えたレナン達も一緒に全員で村に戻ったのだった。

 

 その後の事だが、腐肉の龍討伐はレナンとレナンを支援する為に戻ったティア達の全員で龍を討伐したと説明した。


 そして街道脇の森に刻まれた恐るべき破壊の痕跡は、“死に至った龍が爆発した事で生じた”という事でライラは村人達に説明した。


 まさかレナン一人で龍を圧倒し、しかも大地を抉ったとは口が裂けても言えない為の方便だったが、村人達は口々に龍の恐ろしさを再認識し、ライラの説明に疑問を持つ者は誰も居なかった。



 なお、村に置かれたキンググリズリーの死体は人の味を覚えた龍が殆ど口を付けなかった事より、素材として活用出来る事が分った。


 死体はバルドに返される事になったが、彼は受け取りを拒否し代わりに村の復興資金として寄付される事になった。


 だが、キンググリズリーの頭部は“婚約のお祝い”としてレナン達から強く勧められ、バルドが無理やり受け取る事になった。



 レナン達救助隊と、ライラ達討伐隊一行は村の復興を手伝った後、レテ市に戻る事になった。もっともセネ村の本格的な復興はレテ市領主のエミルが対応する事になるだろう。


 ともかくこの村は多くの犠牲を出す事になったが救われた。一行が村を出る前に、村長のグーセフが彼らに深く礼を言うのであった。




 レテ市に向かう場所の中。セネ村に向かった時の様に御者をレナンとバルドが行い、ティアとミミリが客席に座る。


 本来ならば一番の功労者で尚且つ領主の息子であるレナンが御者を務めるのは不自然だが、本人が進んでやっている為誰も止めようとしない。


 馬車の中、ティアが叫び声を上げる。


 「凄く怖かったけど……無茶苦茶面白かった! あーこのままミミリ、一緒に冒険に連れてって!」

 「そんな事したら、私が領主様に怒られちゃうよ」


 ティアがミミリに抱き着いて我儘を言うと、ミミリは苦笑しながら返答する。


 「お嬢様暮らしなんて、最高じゃねェか! 美味いもん食えるし、働かなくていいし」


 ティアとミミリのやり取りを聞いていたバルドが口を挟む。


 「馬鹿ね、伯爵家令嬢なんて自由無いのよ! 望まない事だって……うん? あー!?」


  バルドに反論していたティアが何かを思い出した様でいきなり叫びだす。


 「な、何だよ!? いきなり!」


 対してバルドは何事かと驚いて尋ねる。

 

 「色々合って忘れてた! 対策よ! お見合い対策!」

 「あー、レテ市に来る時、初めはそんな事言ってたね……」


 ティアの叫びにレナンは理由を思い出し、呟く。対してミミリがティアに尋ねた。


 「……ティアちゃん……お見合いってどういう事……?」


 ミミリの問い掛けにティアは父トルスティンとのやり取りをミミリとバルドに説明するのであった……



いつも読んで頂き有難う御座います!

次話投稿は明日予定です! よろしくお願いします!


読者の皆様から頂く感想やブクマと評価が更新と継続のモチベーションに繋がりますのでもし読んで面白いと思って頂いたのなら、何卒宜しくお願い申し上げます! 精一杯頑張りますので今後とも宜しくお願いします!


追)サブタイトル見直しました!

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