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175)武闘大会-6(深窓の令嬢③)

 ティア同様……フェルディに裏切られたパメラ。彼女は同じ境遇のティアの背中を追う中で、彼女が手放した元婚約者を諦めていない事も知る。



 当時、学園の者達がみっともなくも足掻くティアを冷やかな目で見る中……、パメラは違った。



 彼女もフェルディに騙され、裏切られており、その辛さと悔しさを噛みしめていたからだ。



 もっともティアの場合はフェルディだけで無く、親友と思っていたソーニャにも騙されていた訳だが……。


 ともかく、密かにティアを応援するパメラだったが……、そんなパメラを良い意味でティアは裏切る。




 ダイオウヤイトによる王都襲撃事件だ。




 「……その時の様子を、家の者が見ておりました。彼女は我が家に仕える侍女で……私に取っては何でも話せる姉の様な存在です。その彼女が所用で市場に行っておりました。

 そんな中……襲い掛かった巨大な黒い怪物……! 身の毛もよだつ恐ろしい姿だったと、家の者は震えながら言っておりました。しかも、その数は6体も居たと聞きます。

 ですが……ティア様、貴女はそんな恐ろしい怪物相手に、真向から立ち向かったと……! 家の者は貴女が果敢に怪物を次々に倒す姿を余す事無く私に伝えたのです……」



 パメラは思い出しながら話す内に目を赤くしている。余程、あの時のティアの活躍が嬉しい様だ。



 ダイオウヤイトの討伐でティアは“紅き豪炎”と呼ばれる英雄になった。


 この事を、その場に居合わせた侍女から聞いて、パメラは大興奮して涙を流して喜んだ。どん底まで落ちたティアが大逆転した事に、パメラは子供の様に興奮し歓喜したのだ。


 しかも……王都襲撃の際、居合わせた侍女から聞いた黒騎士マリアベルとティアが元婚約者の白き英雄を巡って競い合っている、という事実もパメラのツボにハマった。


 黒騎士マリアベルと言う英雄に対し一歩も引かないティアを尊敬した。


 また、自分と同じ立場だったティアが、一度は手放してしまった白き勇者を得る為に足掻きながらも、雄々しく復活する様にパメラに取って誇らしく、また憧れたと言う訳だった。



 パメラの熱弁は続く。



 「……そんな訳で私は……ティア様の活躍を日ごと追う様になり……気が付けば夢中になっておりました。裏切られ……私以上に辛い思いをされた筈のティア様が……“紅き豪炎”と二つ名で呼ばれるまでに……! 

 落ち込み、閉塞した私自身の心を開放して下さったのは、間違いなくティア様です。普段はその御姿を背後から見守るだけでしたが……偶然にも此処で御見かけして……我慢ならず声を掛けさせて頂いた次第です……」


 「そうなんです! 私達もパメラさんと同じく、ティア様を追い掛けさせて頂いています!」


 「この前の予選、凄く素敵でした!」



 パメラが話し終わった後、彼女の背後に座っていた友人達が我慢ならないと言った様子で声を上げた。彼女達もパメラ同様ティアの熱烈なファンの様だ。



 そんな彼女達を前にティアは……。



 「……いやー……何て言うか……リナ、ジョゼ……助けて!」


 「馬鹿、お前の事だろうが!」「アハハ……」


 ティアは横に居たリナやジョゼに助けを求めたが、無駄だった。仕方無くティアはパメラ達に向き合い本心を伝える。



 「はぁ……あのね……私の場合……そんな格好良い話じゃ無いよ? 色んな人に騙されたのは確かだけど……レナンを手放したのは……間違いなく私。騙される前の私は……本当、馬鹿だった。……今も馬鹿だけど。

 でも……あの頃は本当に大切な人も分らない程、酷かったの……。だから、今は……取り戻そうと必死に足掻いてるだけ……。だからパメラが想ってる様な立派な事じゃないよ」



 ティアは悲しそうな顔をして呟いた。その言葉は自分に言い聞かせている様だ。



 「そ、そんな事は有りません! わ、私は……ずっとティア様の背中を見ておりました! 貴女は諦めなかった……。学園で影口を叩かれても! 馬鹿にされても! 毎朝、修行の為に師匠を背負って走ってる事も知ってます! 私だって同じなのに……、騙されたのは同じなのに……。だけど、貴女は……一歩も引かず、諦めなかった! そんな貴女を見て……私は、私は……!」



 ティアの言葉にパメラは感極まって涙を浮かべながら答える。



 「……パメラ、私を褒めてくれて有難う。だけど、私はやっぱり、そんな大した事無いわ……。私がパメラの言う様に、何か出来たとしたら……皆のお蔭だよ。

 だって……何時だって、私は一人じゃ無かったんだ。取り返しのつかない失敗をしたあの時も……、自己嫌悪で閉じ籠ってた時も……、学園で馬鹿にされてた時もね……。 何時だって私は支えて貰ってたんだ。大切な人達に……」



 ティアは友人や家族、師匠に支えられて此処まで来た事を話した後に隣に座る、リナやジョゼを見る。見られた彼女達は顔を赤くしてそっぽを向いたり、苦笑いを浮かべた。



 「だけど……アイツは、いえ……あの人は違う。黒騎士マリアベルは……ずっと孤独の中で戦ってきた。だからこそ彼女は本当に強いの。そんな彼女にレナンが惹かれるのは当然かも……」


 「ティア……お前……」「ティアちゃん……」


 ティアは自分の事を話した後、ライバルであるマリアベルについて語る。ティアにはどんな時でも支えてくれる存在が居た。


 しかし、マリアベルは亜人の母を持つが故に、王族で当あってもずっと孤独だった。


 逆に王族だからこそマリアベルは妬みや中傷は酷かった筈だ。にも拘わらず、彼女は負けず英雄となった。



 “一体どれ位の苦労と努力を重ねて来たのだろう……”


 

 ティアはそう思いながら、そんな事を感じさせないマリアベルのサッパリとした笑顔を浮かべる。


 そして心配そうな顏をするパメラ達に向かって力強く断言する。


 「だけどね、だからと言って私は諦めないわ! マリアベルが凄いのは最初から分ってる。だからこそ、彼女に挑んで……、派手に勝って見せる! そしてレナンを取り戻して見せるから……!」


 「ティ、ティア様……!」


 満面の笑顔で言い切ったティアにパメラやその友人達は涙目で感極まって答える。リナやジョゼもティアの言葉に笑顔で頷いたのだった。


 ――その後、ティア達はカフェのオープンテラスにてガールズトークで盛り上がった。


 リナやジョゼ、そしてパメラ達のお蔭で肩の力が抜けたティアは、万全の状態で本戦に向け挑む事が出来たのだった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話から本選が始まります。次話は6/7(日)投稿予定です。宜しくお願いします!

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