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171)武闘大会-2(暗雲)

 木漏れ日亭に突然訪れた白騎士オリビア……。彼女はティア達に黒騎士マリアベルの元へ急ぎ来る様依頼した。


 クールなオリビアが慌てる様子から只事では無いと感じた、ティア達は彼女が促す通りマリアベルの元へ向かった。


 但し学生のジョゼとリナは寮長への説明も有ったので戻って貰った次第だ。……そしてマリアベルの元で聞かされた内容にティア達は驚愕した。


 「な、何だって!? 武術大会の参加者に刺客が居る!?」


 「……ああ、我々騎士団が掴んだ確かな情報だ。武術大会の最中、何事かを起こす気らしい。何をやるかは分っていないが……ろくでも無い事は間違いない様だ」


 聞かされた内容にバルドが驚愕して叫び、説明したマリアベル自身が受け答えた。


 ティア達が案内されたのは王城の小さな客間で、その場にはティア達以外に、マリアベルとソーニャ達白騎士全員……そしてレナンが居た。



 8か月前のダイオウヤイト討伐後、実力と名声を手にしたティア達は、こうしてマリアベルの元に呼ばれる事が増えた。


 そんな訳でレナンとティア達が顔を合わす事も増えた。その事がティアは勿論、ライラやバルド達も大変嬉しい事だったので、厄介な事案を持ちかけてくるマリアベルの依頼も、ティア達は断らず受けていた。


 

 ただ、今度の依頼は重みが違うと感じたクマリがマリアベルに問う。



 「……マリちゃん、私達を頼ってくれんのは有り難いんだけどさー。……何で私達に? この件、どう考えてもヤバいよね?」


 マリアベルのストーカーだったクマリは、ティアと言う面白いオモチャを見つけてからは、ストーカー行為は激減した。


 そればかりかティア達を守る為か、こうしてマリアベルからの依頼を牽制する様になった。クマリの問いにマリアベルは静かに答える。


 「……お前が懸念する通り……我々もこの件は危険度が高いと考えている。武術大会の参加者は全員、其処に居るティア同様……周囲が認める実績や推薦を得た者しか居ない筈だ。その中に刺客を紛れ込ますなど……相当大きな組織しか対応は出来ない……。また、経緯は偽ったとしても参加者は皆、実力は有る者ばかりだ。強大な組織の支援を受けた、手強い刺客。そして武術大会に集まる大勢の観客達……。考えただけでゾッとするな」


 「「「「…………」」」」


 マリアベルの答えにティア達は事の深刻さが伝わり、絶句する。


 「……マリちゃん……武術大会は中止すべきじゃ無いのかな? 余りにリスクが大きすぎる」


 「し、師匠!?」


 深刻な状況にクマリは真っ当な意見を冷静に話す。師匠の言葉にティアは驚いて聞き返す。



 「……事はそう簡単では有りません……。武術大会はロデリア王国建国祭の最重要イベントであり、友好国からの来賓客も見られます。それに各国から息が掛かった参加者も居ます。このタイミングで中止を宣言すれば、ロデリア王国の威信にも関わります。国王陛下に対する不満も噴き出すでしょう……。はっきり言って中止は不可能です」


 「ふん……虚栄がそんな大事かい? 流石、“人間”の王国だ……」


 「ク、クマリ! 口の利き方に気を付けろ!」


 ソーニャが武術大会の現状について説明すると、クマリは小馬鹿にした口で吐き捨てる。


 彼女はいつもの通り仮面を被っているが、その仮面の下はヒト族に対する侮蔑の笑みが浮かんでいるだろう。そんなクマリに気の強い白騎士レニータが声を荒げる。



 「……抑えろ、レニータ……。クマリ、お前の言葉は理解出来る。だが……もはや、止める事は出来ぬ。ならば……我々は万全を配し挑むまで。だからこそ……お前達に頼みたいのだ……。どうか頼まれてくれんか?」


 「「「「マリアベル様!?」」」」


 怒れるレニータをマリアベルが制した。そして姫殿下でも有る彼女は真摯にティア達に頭を下げて頼む。その様子に白騎士達は驚いて声を上げる。



 そんなマリアベルにティアが答える。



 「……仕方ないわねー! 大変だけどやってやるわよ。いい事? 此れは貸しだからね!」


 両手を腰に当て、ふんぞり返って上から目線で答えた。


 「き、貴様! 不遜だぞ!?」

 「あわわわ……」


 姫殿下のマリアベルに対し偉そうに答えたティアに、オリビアが怒り気の弱い白騎士リースが慌てている。


 ソーニャは額を抑えて深い溜息を付いている。そんな中マリアベルは……。


 「ハハハ! 随分と頼もしいな、紅き豪炎のティア! その口上に似合う働きを期待するぞ?」


 「ふん! 要はコソコソしてる悪い奴をぶっ飛ばせば良いだけでしょ? そんなの簡単……」


 “スパン!!”


 マリアベルに対し自信たっぷりで宣言していたティアの後頭部が思い切り叩かれる。


 「……何を勝手に決めてんだい、この馬鹿弟子は!」


 「えー、でも師匠! アレだけ修行したのに武術大会中止とかイヤですよ!」


 「だから、折角私らが有利になる様に今から、マリちゃんに交渉する心算だったのに!」


 頭をクマリに叩かれたティアは恨めしそうな顔で師匠に抗議する。クマリは考え無しの弟子に呆れながら盛大に文句を言う。


 そんなクマリとティアのやり取りを見たレナンは思わず笑ってしまう。


 「ハハハ! 本当に相変わらずだ、ティアは! 分った、僕が武術大会に参加して刺客を探す。それで良いかな、マリアベル?」


 「いや……、お前は陛下の横でお守りしろ。お前が陛下の御身を守れば……どんな不測の事態にも対応出来よう……」


 「それじゃ、武術大会の刺客への対応はどうする? まさか、ティア一人に押し付ける気?」


 マリアベルの答えにレナンが問い掛ける。すると彼女は言い切った。


 「……ティア一人に甘える心算は無い。この私も可能な限り対応する。前回優勝した私だが……今回の武術大会は、予選に参加し刺客を見定める」


 

 連続優勝しているマリアベルは、決勝戦以外は参戦しないのが通例だったが……今回は予選に参加し、潜む刺客を探すと言う。


 最強最大のライバルであるマリアベルの思わぬ予選参戦に、ティアは興奮と共に、闘争心が掻き立てられるのであった。


いつも読んで頂き有難う御座います! 次話は5/24(日)投稿予定です! よろしくお願いします!


追)矛盾が有ったので修正します。

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